言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第14回~
ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。第14回は今年の夏休みを振り返ります。
「私の夏休み2019」
今年の夏休みはどこに行こうか、と考えた時に、とりあえずどこでもいいから海外に行こうと決めた。年に一度の休みに求めることは、「非日常感」。東京やら日本やらから、心理的にも物理的にも離れられればそれでいい。何もしない、何も考えない時間が今のあたいには必要なんだ!と、国外エスケープをキメることにした。けれども、ほかのこだわりは特にない。旅先は一緒に行ってくれる友達と話し合って決めることにした。
社会人同士の旅行は、まず日程を決めるだけでも大変だ。ああ、この日はプレゼンが…ああ、この日は収録が…で、決まらない。お互いの仕事が落ち着く、夏も終盤に差し掛かった日程に決まり、そこからの旅先決め。彼女もかなりの旅好きで、私が候補に挙げたカンボジアやらベトナム、タイは学生時代に行ったことがあるという。しかもロンドンとベルリンへの出張が旅行の前の週にあるそうで、そこも避けようとなり、結果、二人とも行ったことのないクロアチアのドゥブロブニクに白羽の矢が立った。以前行ったことのある友達が「一度は行った方がいい!」と激推ししていたのと、「クロアチアに行く私たちツウっぽい」というのが決め手になった。
ただ調べてみると、ドゥブロブニクは本当に小さな街だから1日で見て回れる、と書いてあったので、ツウかつ洒落ている私たちはパリにも寄ることにした。すると、結婚式でパリに行かなくちゃいけないからついでに便乗しようかなとかいう(ふざけた)友達と、なぜかシンガポール在住の友達まで集まることになり、私たちのヨーロッパ珍道中が幕を開けた。
ドゥブロブニクというのはクロアチアの南に位置するアドリア海に面した都市で、今もなお中世ヨーロッパの雰囲気を色濃く残す、本当に小さな街だ。その時代に作られた旧市街は世界遺産にも登録されている。ジブリ映画『魔女の宅急便』の舞台のイメージになった街と言えば、イメージが付きやすいだろうか。その街をぐるりと囲っているのが、石造りの城壁。昔、海から襲ってくる敵の攻撃を防ぐために作られたものだ。お金を払えば観光客も回れるようになっていて、朝早くから多くの人がひいひい言いながら登っていた。高台から見下ろすとコバルトブルーの海とオレンジ色の屋根のコントラストが本当に綺麗で、こんな街にならキキもいるだろうと錯覚してしまうほど。カラッとした気候で、抜けるように青く、遮る建物もない、大きな空が気持ちよかった。夏も終わりだったが、ビーチで遊んでいる人もたくさんいた。ちなみにだが、日本からはハネムーン先として人気らしい…。確かに新婚さんらしい日本人をよく見かけた。
一日目は街を探索して、ごはんを食べて、ゴロゴロして、高台から街を見下ろした。海に面した素敵なホテルを予約したので、海を見ながらゴロゴロするだけで「ああ、東京と時間の流れ方が違う」と思った。地中海に面しているからか海産物が有名で、ムール貝の蒸したものやブイヤベースなど、おいしいごはんにもまったく困らなかった。
二日目は、船で15分程度の島に行って散歩したり、お茶をした。このころになると、いかんせんすることがなくなってきた。街に出かけても『ゲーム・オブ・スローンズ』(この街をロケ地にしている超人気海外ドラマ)のグッズばかりで食指が動かない。海に行ってみても肌が焼けるのが嫌なので、そんなに長くいられない。夜も早く寝ているから、昼寝しようと思ってもできない。青い空に青い海、それだけで良い!文字通り、これがヴァカンスなんだ!と思いこませるのだが、どうもうまくいかない。せっかく休みに来たのに時間を持て余し、何かこの時間でできるんじゃないか、やれることはないか、無駄をしているんじゃないか、と胸がざわめく。忙しさに慣れてしまっているのか「何もしない」が怖くなっている自分がいた。
完全にヴァカンス慣れしてない。知らず知らずのうちに悲しい現代っ子になっている私。聞いてみると、友達もみな同じ感想を持っていた。ただダベるだけという東京でもできることで時間をつぶし、ドゥブロを後にした。
そして待望のパリ。見える景色がガラリと変わった。キラキラ輝く街の明かり、行き交う着飾った人々、通りをひしめき合う店たち。目に映るもの全てに刺激される。胸が高鳴ってくる。あれ買いたい、これ食べたい、あそこに行きたい、次々に湧いてくる。ああ、これです求めていたのは、こういうことなんです!
やっぱり、何もしないなんて無理。都会で忙しなく過ごしていくのが性に合っているんだな、と改めて気づかされた夏休みでした。