信じるものは救われる! 建築史家・五十嵐太郎が選ぶ未来の聖地【前編】
TRAVEL 2023.01.03
数多くの建物や場所を訪れてきた建築史家の五十嵐太郎さんが考える〝気のいい場所〟とは?〝聖地〟となる可能性を秘めた現代のパワースポットを挙げてもらいました。
モエレ沼公園[北海道]/イサム・ノグチ
彫刻家イサム・ノグチにより、全体が一つの彫刻作品として設計されたアートパーク。広大な敷地には幾何学形態を用いた山や建物、噴水、遊具などの施設が配されている。「日本人の感覚からすると大きく、スケールアウトしたような造形物が多い。古代につくられたピラミッドのように、“でかい”と感じるものは人種や民族、言語を超えて人間に訴えてきます。古代の人が抱いたような感覚が呼び起こされるはず」
東京カテドラル聖マリア大聖堂[東京]/丹下健三
「岩場の水面に舞い降りてきた銀色の白鳥のよう」と形容される優美な建築は、日本を代表する建築家・丹下健三の設計によるもの。「近代宗教建築の傑作で、一つの到達点。直線を回転させながら曲面をつくる特殊な構造で、聖堂の上部には十字の形でトップライトが設けられています。一般的な教会建築のような装飾はほとんど施されていませんが、スリットから降りてくる光が大空間に満ちて、神聖な空気感を味わえます」
奈義町現代美術館[岡山]/磯崎新
世界的な建築家・磯崎新によって設計された美術館。荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の4人のアーティストに「太陽」「月」「大地」のテーマで巨大作品を依頼した展示が、それぞれ建築に。「建築家とのコラボレーションが見どころで、背後の山並みが風景となって作品が引き立っています。この場所でしか得られない特殊な体験ができるという時代を先取りした美術館は、30年近く経って若い世代を中心に“再発見”されています」