ハナコラボSDGsレポート ”あるがまま”に価値を与え、産地の想いに輝きを添える。〈SEVEN THREE.〉尾崎ななみさん
ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第45回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、伊勢志摩産真珠のブランド〈SEVEN THREE.〉ディレクターの尾崎ななみさんに話を伺いました。
“できることからはじめよう”。SDGsについて語るとき、そうやって小さな行動を積み重ねていくことが、理想の未来へとつながっていく。家族である祖父の真珠養殖のお仕事を手伝い始めたことがきっかけで、“知っているようで知らない真珠のお話や産地のこと”に気づいたななみさん。彼女が伝えたい、ジュエリーに込められた想いとは。
伊勢志摩と東京。2拠点での活動を自身で掴みとったことがきっかけ。
ーーご自身の会社設立に真珠ブランドのディレクター、伊勢志摩アンバサダーもされている尾崎さん。まずは、現在に至るまでの活動の流れを教えてください。
「生まれ育った三重を離れ東京に上京したキッカケは、芸能事務所に所属してモデル・タレントとしての活動。様々な仕事を経験し、表に出ることの集大成として、地元のPR活動ができる「ミス伊勢志摩」に応募しました。グランプリをいただき、その年から三重と東京を行き来するようになりました」。
ーー2拠点生活の始まりですね。憧れます。
「『第58代目ミス伊勢志摩』としての任期は1年。その間、三重へ帰ったときに祖父の真珠の養殖の仕事を少しずつですが手伝っていました」。
ーー元々、真珠に興味があったからでしょうか。
「孫としては、幼少期から“おじいちゃんの仕事”という認識で、養殖については気楽に手伝えるようなものとは思っていませんでした。高齢になるにつれ、大変そうだから私にもできることをしたいなという気持ちからです。その中で真珠がどうやって出来るのかもすべては知らなかったため、『おじいちゃん、真珠についてもっと詳しく教えて』という話をしたんです」。
ーーおじいさんはうれしかったでしょうね。
「おじいちゃんの話を聞くにつれ、生産者としての悩みとか、これからの課題とかが見えてきた反面、養殖作業は非常に重労働。私が継ぐことは難しいなと実感しました」。
ーー海という壮大な自然を相手にする仕事ですもんね...過酷そうです。
「いままさに自然環境が変わってきてて、真珠の生産量がとても減ってきているんです。自然に左右されるリスクがあり、今後この仕事だけをしていくというのは、やはり大変だなと。おじいちゃんがまだ現役で頑張ると言うので、私はジュエリー販売の部分を担当することに。それが〈SEVEN THREE.〉を始めたきっかけだったんです」。
ーーそうだったんですね。
「今後も拠点は東京がいいけど、地元の好きなところを色々な人に紹介したいな…と自分のSNSを使って発信し続けました。市役所の観光課の方々とお話しする機会もあり、最初は伊勢志摩の真珠をPRする大使を作りたいと提案し、私は裏方に回ってサポートしますとお話しましたが、地元の人たちも想いを持ってやってくれる尾崎がやったほうが早いと言ってくださったので、引き受けました」。
ーーぴったりだと思います。
「『真珠だけではなく、伊勢志摩地域全体に特化した観光PRをしてほしい』という自治体の方たちの後押しもあり、現在4年目の『伊勢志摩アンバサダー』を務めています。実はこの肩書き、自ら名付けました」。
ジュエリーデザイナーではなく真珠屋。「金魚真珠」の誕生。
ーーななみさんはネーミングセンスに長けていますね。〈SEVEN THREE.〉の「金魚真珠」も素敵だなって思いました。ブランド立ち上げまでは大変ではなかったですか?
「私はブランドの立ち上げからスタートすることが初めてだったので、経営者のビジネス本や、ものづくり、マーケティング戦略の本など、最初はとにかく書籍をたくさん読んで勉強するところから始めました。いまの時代、物があふれているじゃないですか。真珠のジュエリーも正直いっぱいあります。その中で、他のブランドがやっていない魅せ方は何だろうっていうところから探し始めました」。
ーー確かに「金魚真珠」のような形やカラフルな真珠は、他で見たことがありませんでした。
「『真珠って白くて丸い』というのがみなさんの認識だと思います。しかし、何も加工をせず白くて丸い姿で誕生する真珠は多くありません。少し黄色味がかっていたり、他にもグレーやブルーなど、白色以外の天然カラーもたくさん存在します。金魚のような形は貝の中で真珠の中心、基となる核(二枚貝を削ったもの)が動き、偶然出来るのです」。
ーーそれは知りませんでした!確かに貝も生き物ですもんね。
「一個の真珠ができるまでには3〜4年かかります。開けてみるまで何色か分からないですし、形も様々あり、それを手作業で仕分けているときに“しっぽのところ、金魚に見えるんだけど”って私が勝手に金魚ちゃんって呼んでたんです。歪な形でもクオリティは良い。ただ一点物になってしまうので、多店舗での販売ができなかったり、販売に手間がかかる理由から流通が極端に少ないのです。このままがかわいいから、手を加えない姿でジュエリーにしたいと思い、ちゃんとした名前を与える意味で商標登録に至りました」。
ーー金魚ちゃんが「金魚真珠」に。
「この形自体は変形真珠またはバロックパールと呼ばれていて、業界ではひとまとめにされていたんです。元々あるものの視点を変えることで付加価値が生まれるのであれば、面白いなと感じました」。
生産地もきちんと伝えていく。
ーー生産者ならではの目線ですね。真珠に関して知ってるようで、知らないことばかりです。
「真珠を知らない人はいないと思いますが、じゃあ真珠がどこでどうやって出来ているかはほとんどの方が知らない。私自身もブランドを作ることになり気づいたのですが、真珠の産地を明記したジュエリーがほとんどなくて。ジュエリーを購入する際に、生産方法を教えてもらうこともないですし、真珠の背景を知らなくても不思議ではないと思います」。
ーーなるほど。丸い真珠は冠婚葬祭、最近流行っていてよく見かけるのはバロックパールというくらいのイメージで、産地までは気にしたことはなかったかもしれません。
「大きさ・形・輝きなどの種類によって仕分けをします。バイヤーさんが買いつけたあとは、色々な産地の真珠を混ぜてジュエリーになるんです。だから、1粒ずつの産地は不明。“国産です”までしか言えないことも多々あります。産地よりも出来栄えが優先されてきましたが、逆に、産地を明記しないことがみんなが真珠はどこでとれるかを知らない原因でもあるかなと思い、私のブランドでは『伊勢志摩産のあこや真珠』と謳い、養殖業者の誇りも伝えています」。
ーー消費者も産地を知ることでより思いを馳せやすくなりますしね。
「実情としては原因不明のあこや貝の大量死や、養殖業者の高齢化に後継者不足で真珠の生産量は減る一方。一人で解決できるような問題じゃないけれど、私にできることは、いま頑張っている人たちの応援です。大変なことが多いなか、苦労して作った真珠であることには変わりはないので、少しでも販売のプラスになればと、他の方が購入されなかった真珠を生産者さんの希望価格で買い取らせていただいています」。
ーーそういった問題も目の当たりにされて、身近で見てきたからこそですね。
「最近はエシカルとかエコなものづくりが増えていますが、新しく作られるものだけではなく、いままであったけど使っていなかったものを活かすことも、私としてはエシカルだと思っていて。この金魚ちゃんがそうだったんですよね」。
ーーまさにそうですね。最後に〈SEVEN THREE.〉のジュエリーのデザインのポイントと、どのように身につけていただきたいか教えてください。
「デザインでこだわったことは、真珠を主役にすること。細身のパーツを選んでいるのも、それが理由です。真珠を長く愛用していただきたいという思いで、金具はK18を使用しました。真珠の個性をかわいがっていただき、冠婚葬祭だけではなく、カジュアルに普段使いしていただけるとうれしいです」。