ハナコラボSDGsレポート 自分ができることでベストを尽くすこと。日本発のサステナブルブランド〈MiYO-organic-〉
ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第31回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、〈MiYO-organic(ミヨオーガニック)〉代表の山本美代さんに話を伺いました。
SDGsレポートを進めていくうちに関心が湧いて、海でゴミ拾いをしたときに直に感じたのはプラスチックゴミの量の多さ!日本ではゴミは焼却されるから問題ない…?いえいえ、実は世界規模で見ると埋め立てが主流の国が多いようです。そんなことに驚きつつ、以前より注目していた“竹歯ブラシ”を販売するブランド〈MiYO-organic〉の取材をしてきました。
〈MiYO-organic-〉ができるまで
ーー〈MiYO-organic-〉のブランド誕生までの背景、始めたきっかけを教えてください。
「母はホテルや結婚式場、レストランに割り箸などの消耗品を販売する店舗プロデュースの仕事をしていまして、私はそこの2代目。最初は全く継ぐ気はなかったんですけど、食器好きが高じて『食器ソムリエ』の協会を立ち上げて。母の仕事と同じく、ホテルなどに食器を選ぶ仕事をするなかで、数年ほど前にビジネスコンテストに出たことがきっかけで、応援してくれる人がいることがわかったんです。せっかく食器に関わることをするなら母のところで一緒にやろうと思い、ジョインしました。そのとき、うちのビジネスは消耗品を販売するという点で、結構プラスチックが多くて…」。
ーーそうですよね、ストローとかスプーンとか。
「正直、プラスチックは売りたくないなって。元々、私の代に変わるタイミングで、そういうものも全部切り替えたいなと思っていたんです」。
ーー継ぐ前から、環境に対する意識や関心が強かった?
「そうなんです。それは海外の友人が多かったのもあり、海外の事情と日本の差は感じていました。友人がエコフレンドリーな活動をずっとしていて地球の危機を語るなか、日本で生活しているとまず“選択肢がない”なと思っていました」。
ーーなるほど。
「あるとき出張先の札幌のホテルで、アメニティの歯ブラシを使っていたときにふと気がついちゃったんですよ!” 私、これ夜1回、朝1回使って捨てるんだな”って。そのとき、私の頭の中で一気に地球全体から歯ブラシゴミが積み上がっていくビジュアルが駆け巡ったんです。このホテル300室ってことは、ゴミが出るのは1日に300本。となると、日本中で1日何本のゴミが出ているんだろう…。世界中でどれだけゴミになっているんだろう!?考えたときに、とてももったいないと思いました」。
ーーそこまで具体的に!
「これは何とかしなきゃと思いましたが、まさか自分が作るとは考えていなくて。そのあと、日本語でも英語でもGoogleで『エコフレンドリー・アメニティ』みたいな、環境に配慮したアメニティを調べてみましたがなかったんです。それで勝手な使命感で“これは私が作るしかない!”って感じて作ることを決めました」。
ーー直感的に感じたんですね。探すではなく、作ると。確かに以前は輸入された竹歯ブラシはありましたが、国産のものはなかなか見かけることがなかったです。
「日本には様々な種類の歯ブラシがあるのにも関わらず、“環境に配慮していて・心地よくて・価格もデイリーに選択できる”というものがなくて。まず選択肢がないから買えない。それは個人でもそうだし、ホテルさんにとっても要は選ぶなかにそれがなければ選べないわけで。まずは選択肢を作るところから始めました」。
ーー作る素材として竹を選んだ理由は何ですか?
「最初から竹にしようと決めていたわけではなくて、他に選択肢として、生分解性のプラスチックと竹でどちらにしようかと悩んでいました。竹に決めた理由は、生分解性のプラスチック、いわゆるPLAと言われている植物由来のデンプンを主原料にしたプラスチックの生分解には条件が必要で、温度、湿度とバクテリアがなければいけないですし時間もかかる。それに見た目がプラスチックなので、お客様としてはプラスチックと同じように処理してしまうかもしれません」。
ーー燃えないゴミに捨てられてしまう?
「そうなんです。ちゃんと処理されなければ生分解されないというハードルが一つあったこと、またプラスチックを成形する上で必要な金型も問い合わせを重ねる中で、工場の方から詰まりやすいなどのデメリットを教えていただきました。一方、竹は自然素材ですし、見た目から優しさを感じる。おしゃれに見えたので惹かれましたね」。
ーーちなみに生えてる竹は曲がっているイメージなのですが、どのようにまっすぐ成形していますか?
「曲がってるイメージでしたか?実はこれって竹の繊維なんですけど、竹ってとてもまっすぐなんですよ」。
ーーきれいな繊維ですね!とはいえ、天然のものって不揃いになりやすかったり、水はけが悪いと黒ずんだりするのかなって。ちょっとカビが生えたりとか。
「おっしゃる通り、自然の素材の物なのでカビが生えるなどリスクはあります。そこがプラスチックの便利なところなんですよ。大量に生産できるし、安いし、カビは生えない。でも、それは自然素材なので仕方がないんです。なので、カビないために防カビ剤や防腐剤を漬け込むという方法があります。だけど〈MiYO-organic-〉はそれをせずに紫外線照射で殺菌し、炭化加工で含水率(中に入っている水の率)を低くしてこういう形にしているんです」。
ーーそんな加工まで施されてるんですね。口に含むものだから安心安全でうれしい!
「これ、触っていただくとつるつるしているので何か塗ってると思われるのですが、塗っているのではなく、ブラシの毛を植毛する前の竹の棒を大きなドラム缶に入れて8時間ぐらい竹同士をガラガラガラと回転させます。そうすることで、竹の中に微量の油が含まれ、竹同士が擦れることで滑らかにしてくれるんですよ。竹自身の滑らかさなんです」。
ーー試行錯誤されたんですね。すごい熱意!竹って口の中に含むと落ち着きますし、プラスチックの方が不自然だったんだと気づくぐらい気持ちいいですよね。
「確かにそうだと思います。日本人って『竹取物語』のように、本当に昔から竹に親しんできて、割り箸にも竹の素材のものがあるなど、文化的に竹を口の中に含むことをしてきています。竹歯ブラシも慣れていただくと割と自然に感じると思います」。
ーーおじいちゃんやおばあちゃんが使っていた耳掻きも竹素材のものが多いですもんね。それにしても、そこまで手がかかっているのに綿棒や竹ヘアコームも驚きの価格ですよね。
「竹のヘアコームはプラスチックと違って静電気が起きづらく、髪に優しい。綿棒も竹がしなるのでとても使いやすいです。お財布にも優しいのは〈MiYO-oraganic-〉の目標がホテルも買える価格だから。みなさんも日常で買える価格という点で、やはり一つの大きなポイントになるのかなと思い、結構頑張っています」。
ーーありがたいです。いまでは環境意識の高いホテルのアメニティとして扱われていたり、銀座の〈ロフト〉でも購入することができますよね。アメニティにしたのは家業の流れでしょうか?
「それもありますし 、大企業にアプローチしたのは大量に消費するから。そこはすごく大きいと思っていて、例えばひとつの大きなホテルチェーンが竹の歯ブラシに変わるだけで大きなインパクトがあるなと思ったんです」。
ーーなるほど。ゴミを減らしたいという想いも強かった?プラスチックを減らして亀(海洋生物)を救いたい、地球を救いたい!みたいな。
「私はそんな器用ではありません。ただ、自分ができることをやり続けることが大切だと思っています。それぞれ得意なことは違うじゃないですか。個性もあって、それがいいなと。私の場合、たまたま使命感が降りてきたのがプラスチック製の消耗品の他に選択肢をつくることだった。自分ができることをベストでやる、それしかできないと思っていて。そのなかで自分と関わる人、使ってくれる人が幸せになったらうれしいですし、そのためにもベストを尽くします!」
ーーSDGsのような大きな問題や目標を目の前にすると自分の出来ることって限られているなと自分でも感じることが多いので、それは1番シンプルに共感できます。日々できることで、ベストを尽くせるよう心がけます。ありがとうございました!
【番外編】〈MiYO-organic〉美代さんをつくる2つのこと
最後に、美代さんのパーソナルなご趣味のお話も伺いました。器と茶道にとても夢中なんだとか!今回は「サーキュラー(循環型)」というテーマで、器をセレクトしてくれました。
ーー器は元々、好きだったんですか?
「私、器オタクなんですよ(笑)。食器ソムリエの仕事をしていまして、商標もとって協会では代表理事をやらせていただいています」。
ーーどのような資格ですか?この料理はこの器に合うとか ?
「ワインのソムリエのように食器も専門知識を活かしてホテルや結婚式場、レストランに食器を選ぶなど提案しています」。
ーーそうなんですね。今回ご用意いただいた器について教えてください。
「循環型っていうのは〈MiYO-organic-〉でも目指しているところで、同じ志を持ったいろんなステークホルダーが集らないと正直循環は難しいので、その環を作るための仲間を増やしたいですし 、それらをどう実現できるか模索している段階です。器も同じように、それぞれに個性を持ちつつ、一つのテーマに繋がるものを集めました。上から時計まわりに小鹿田焼、有田焼、リモージュのカップアンドソーサー、コーヒーかすからできたコーヒーカップです。小鹿田焼は窯元さんの在り方自体から本当にサーキュラーなんですよ。骨董品の器も誰かの手をわたって何百、何十年にも渡って使われています」。
ーー大切にすれば本来、器って長く使えるものですよね。
「食器を知ることは歴史を知ること、食器を知ることは文化を知ることなので、スタイリングとかは皆さん素敵だと思いますが、そこに知識が加わるとさらに楽しくなる。食器好きだと人生が3倍楽しいと言ってます」。
ーー楽しそう(笑)。
「食事は1日に3回するので、3回は食器に触れますよね。私は食器を愛でるので、人より幸福度が上がる回数が多いんです!カフェにお出かけしても器を見るだけでとても楽しいです」。
ーー表情から伝わってきます!趣味で茶道にもはまっていると伺いましたが、どういうところが魅力なのか教えてください。
「先生曰く“茶室は宇宙”というのがありまして 、一つ一つの所作には全部意味がある。出された器を見るのを含め、すべてに意味があって、知識欲に好奇心が止まらなくなります。精神統一にもなりますし、同時に奥深い日本の世界を体感できます。四季を意識するので、茶の湯の確立した安土桃山時代からの四季のズレも感じとれる。長い歴史のなかで共通点を見出しつつ、サステナビリティや気候が変動したこと、また日本の四季の美しさを守り続ける大切さを体感する瞬間があります」。
ーー日本の四季をより大事に思うようになりますか?
「なると思います。他には問答みたいなのがあって“この茶杓はどこの茶杓ですか?”と聞かれます。答えをクリエイティブに作るんです。その場の季節感とかインスピレーションで」。
ーーどちらかといえば苦手かもしれません...。
「ルールとクリエイティブが共存する世界なんです。その人の気質にもよるかもしれませんが、オタク気質の私には絶対に全てを把握しきれない“沼”みたいな感じ」。
ーー“沼にハマる”とは、すべてを知るには程遠いレベルで奥深いということなんですかね。
「結局、全部知ろうなると歴史と科学、文化になりますよね。学者みたいになるということですし、それって無理じゃないですか。 追い求めていく、その姿勢が楽しいんです!」
ーー知るって楽しいですね!(このあと茶の湯に関する本を数冊読み、日本の伝統文化って素晴らしい!と気付かせていただきました。)