学芸員ラジオDJ・DJAIKO62さんがおすすめする、今見ておくべきアートとは? 「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」京都〈細見美術館〉で開催。〜今度はどの美術館へ?アートのいろは〜
ラジオ番組で美術展を紹介するうちに美術館巡りの面白さに目覚めたというDJAIKO62さん。コラム連載第16回は京都の細見美術館で開催中の「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」をご紹介します。2017年末に〈板橋区立美術館〉で開催された特別展が京都でも開催の運びとなりました。タラブックスの本づくりを日本で感じられる貴重な機会です。
京都・細見美術館でインドの本の世界に触れる。
「タラブックス」は1994年、ギータ・ウォルフとV.ギータという2人の女性により南インド・チェンナイに設立された出版社。シルクスクリーンで刷られ、手作りの工程を経て仕上げられる本は工芸品のような仕上がり。「本をめくる」から「指でスワイプする」と読み進めるスタイルも急激な変化のある近年において、あえて今もチームでの本づくりを守っておられます。
ゴンド族の芸術家たちと取り組んだ作品で、夜の間に精神が宿るとされるゴンドの木の物語です。タラブックスのデザイナーが色を付け、何度もイメージをすり合わせるという作業を重ねたそう。
木と言ってもその発想の広さ、木に宿る精神までも表現していてとても面白いです。
チラシやポスターにもなっている「蚕のすむ木」
日本で広くタラブックスが知られるきっかけとなった夜の木の中でも印象的な「蚕のすむ木」、一見カブトムシのようにも見えますね。〈細見美術館〉は日本美術の所蔵・展示が中心ですが、この「蚕」が京都の伝統産業でもある西陣織と連想され、美術館とインドの本をつなぐ橋渡しをしてくれたように思える、とギータさんはお話しされていました。
物語を伝える方法は決して一つではありません。紙芝居のようだったり、絵巻物のようだったりと、造本やレイアウトにも工夫が凝らされています。「本ってこういうものだ。」という概念にいかに縛られてしまっているか、唸ってしまいました。伝統的なお話をいかに本として形にし伝えていくか、タラブックスの作品にはいつも挑戦があります。
今回個人的に興味を惹かれた話が「森の競争 The Great Race」でした。森の中で一番足が速いと豪語するカンチルが競争をけしかけますが誰も相手にしません。そんな中カタツムリだけが競争に参加、さぁ果たして勝つのは!?というのがあらすじ。じっくりと読んでみたくなりました。
展覧会関連グッズも充実していますよ。
※写真は内覧会時に申請・許可を受けて撮影したものです。転用・転載はできません。
「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」開催概要
■会期:2019年6月25日(火)~8月18日(日)
■休館日:毎週月曜日(祝日の場合は、翌火曜日)
■開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
■会場:細見美術館
■展覧会公式サイト:http://www.emuseum.or.jp
チケット情報やアクセス他、詳細は公式サイトをご確認ください。