【料理が好きになるキッチン。】#2 建築家・吉田あいさん
キッチンに立つのが楽しければ、毎日の料理はもっと楽しい。 必要なのは収納の工夫?道具の選びかた?暮らし上手の3人の自宅キッチン訪問から、料理時間を支える目からウロコの習慣まで。 理想のキッチンを手に入れるための、「学び」をたくさん集めました。
狭小住宅でも実現できる、 人が集うウェルカムキッチン。
建坪9坪弱、幅約4mの狭い敷地に建築家夫妻が建てた自邸は、細長い空間の内側に剥き出しの鉄骨柱でもう一つ空間を囲ったような構造だ。その2階部分がキッチンとダイニングになっている。
「ここは家族やゲストを受け入れる〝ウェルカムキッチン〞。階段を上がるとまず目に入るのがシンクをはめ込んだ変形のテーブルです。作る人も食べる人も、調理中から集まってきてテーブルの周りを動き回ったり、会話を楽しんだりできる空間を心がけました」
廊下は天井が高く、上階と窓から自然光が入るので、平米数以上の開放感がある。その分、キッチンの天井は下げて、ちょっとおこもり感のある落ち着いた空間に。上にロフトを設け、そこから吊った天井の裏の隙間スペースを収納にしてしまうというアイデアは画期的だ。また頑丈な工業用シェルフが変形のテーブル天板を支えており、その下には収納スペースが生まれる。食洗機や食器、鍋の大きさに合わせて発注した棚板がはめ込まれ、ものがあるべき場所にピタリと収まっている。廉価な材料でも、工夫次第でデッドスペースを隅々まで生かしたキッチンを自分で作り上げられることを教えてくれる。
そんな機能優先の空間に彩りを添えているのが床のタイルだ。
「汚れたらすぐに拭けるモルタル仕上げの床に、ラグを敷くようなイメージでカラフルなモザイク風タイルを一部分に貼りました」
狭いからと諦めるのではなく、空間に緩急をつけ、ものが密集した部分と余白の場を分けると良さそう。食器棚を置かずに機能と収納が一体化したコンパクトなキッチンは、わいわいと人が集まり回遊する楽しさにあふれている。
LEARNING.1 ゲストが回遊できるキッチン。
シンク付きの変形テーブルを中心に人が集まり、動き回れるキッチン。調理台を兼ねた高さ85㎝の天板に合わせて、脚の長いチェアを軽井沢の木工家具工房にオーダーした。
LEARNING.2 コンロと水回りをふり分ける。
コンロ台とシンクを並べず二の字形に別置きするのは狭小キッチンでのコツ。コンロ奥の防火コンクリートパネル壁にはあえて調理器具などを下げずに余白を残してすっきりと。
LEARNING.3 廉価な工業用品を活用する。
1本単位で買える工業用シェルフの脚は耐荷重に優れており、重量のある人工大理石の天板を支える。別注の棚板を使えば食洗機や食器類を収めるよう自由にレイアウトできる。
LEARNING.4 卓上のものの定位置を決める。
カトラリーを入れた瓶や果物を入れた竹ざるを毎回持ち上げてテーブルを拭くより、いっそのこと天板の穴にはめてしまえばテーブル上がすっきり。倒したり落としたりも防げる。