猫を飼っている人は注意!お腹の赤ちゃんにうつる感染症「トキソプラズマ」って何?
前回、母体を通して食べ物から赤ちゃんにうつる感染症として「リステリア菌」について解説しました。
「食べ物からお腹の赤ちゃんにうつる感染症「リステリア菌」って何?」
生ハムやナチュラルチーズにはリステリア食中毒のリスクがあり、お腹の赤ちゃんにまで影響を及ぼす可能性があることを、意外と知らなかったという人も多かったのではないでしょうか。 今回は、赤ちゃんにうつる感染症としてもう1つ気を付けてほしい「トキソプラズマ」について解説します。
トキソプラズマ症とは?
トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ原虫という寄生虫に寄生されることによってかかる感染症です。健康な人が感染した場合、通常はほとんど症状を引き起こしませんが、一部の患者では発熱やのどの痛み、かすみ目等の症状が現れることもあります。一度感染すると生涯にわたり保虫者となります。世界的で見ると全人類の1/3以上(数十億人)が感染していると言われている感染症です。
妊娠中の女性はすでにトキソプラズマ抗体を持っているか否かで、注意が必要な人とそうでない人に分かれるので、まずは抗体検査(血液検査)を受けることをお勧めします。トキソプラズマが陰性の場合は注意が必要で、母親がトキソプラズマに感染し赤ちゃんにうつらないように、しっかりと感染予防をしましょう。
私も妊娠を考え始めた段階で、医療機関で検査を受けました。自費診療になりますが、1,000円~3,000円程度で受けられます。
赤ちゃんに及ぼす影響
妊娠中の女性で、今までにトキソプラズマに感染したことがない人が初めてトキソプラズマに感染すると、流産や死産を引き起こす場合があります。また、母体を通して赤ちゃんに感染すると、生まれてくる赤ちゃんが水頭症、目の障害、精神運動機能障害や脳性麻痺などの重篤な症状を生じる場合があります。さらに、出生時に無症状でも、その後成人になるまでの間に症状を発症するリスクがあるとも言われています。
大切な赤ちゃんのことを考えると、やはりとても注意が必要な感染症です。
トキソプラズマ4つの感染経路
感染経路は大きく分けて4つあります。
1.生肉(生焼けの肉)を食べること
感染している動物の肉を生又は調理不十分なまま食べることによりうつります。ユッケ、馬刺し、生ハム、レアステーキや、生乳も感染源になります。
2.猫の糞に触れること
寄生虫に汚染された猫の糞を処理した手で口や目等を触ることで感染します。
3.ガーデニングや畑仕事
ガーデニングや公園での砂遊びの時に、舞い上がった土埃が目や口に入った場合や、寄生虫の卵が含まれている土壌をいじった手で口や目等を触ることで感染します。
4.土が付着した生野菜を食べること
寄生虫に汚染された土が付着した果物や生野菜を良く洗わずに食べることで感染します。
感染しないための7つの予防法
毎日の食事の準備や生活習慣で感染を予防することができます。
1.妊娠を考えている人は、事前に抗体検査を受けましょう。
2.生肉を調理する場合は、清潔な手袋をしましょう。
3.肉類は中心部まで十分に加熱してから食べましょう。
4.生肉を調理した調理道具から二次感染しないように、しっかり殺菌洗浄をしましょう。
5.果物や生野菜はしっかり洗いましょう。
6.猫を飼っている場合は、外に出さないようにしましょう。
7.猫の糞の処理や土いじりをするときには、手袋やマスクをつけて経口感染しないように気を付けましょう。また、作業後はしっかりと手洗いをしましょう。
既に妊娠中の方で、生焼けの肉を食べてしまったり、猫を飼っているから心配という人もいるかもしれませんね。ただし、肉や猫の糞がトキソプラズマに汚染されていない限りは感染しませんので、直ちに心配する必要はありません。もし発熱やのどの痛みなどの症状が出た場合は、かかりつけの産婦人科医にご相談ください。
これから生まれる赤ちゃんのために、妊婦さんだけでなく周りの人の協力も必要です。妊娠中は飼い猫の糞便の処理やガーデニングは旦那さんにお願しても良いかもしれませんね。
NIID国立感染症研究所「トキソプラズマ症とは」