コロナ禍で考えた、ICTで学校とつながるということ|モデル asacoの4回目の育児 – fourth time around

MAMA 2020.06.09

この連載は……
モデルとして雑誌やCMに出演するいっぽう、夫婦で手がけるケータリング業「マフィオ」として、最近はママキャンパーとしても活躍中の asacoさんの連載。2018年5月に4人目のお子さんを出産して、ますますにぎやかになった家族との毎日。4児の母ってどう?家事やお仕事は?などなど、なにげない日常から感じたことをつづります。

vol.45 「コロナ禍で考えた、ICTで学校とつながるということ」

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6月。長かった休校期間を経て、ついにわたしの住む世田谷では小中学校ともに分散登校が始まりました。まだ週に1~2回だし、1日数時間だし、通常運転とはほど遠いけれど、それでもひさしぶりの学校に目を輝かせる子どもたちの姿は、純粋にうれしいものです。
そして、帰宅したわが子たちが各々に「楽しかった!」と口にするのだから、やっぱり学校の力ってすごい。そしてきっと、子どもたち自身もみんなに会えるよろこびを噛みしめたに違いありません。

新1年生のスイちゃんが初登校日に持ち帰った冊子を、読み聞かせてあげていた姉りねん。この自粛期間に、一段とアネキ度が増しました。
新1年生のスイちゃんが初登校日に持ち帰った冊子を、読み聞かせてあげていた姉りねん。この自粛期間に、一段とアネキ度が増しました。

さて、それにしてもただただ戸惑いが多かった休校期間。みなさん、それぞれに思うところも多かったはずです。私はなにより、学校とつながれなかったことへの切なさばかりが募る日々でした。正直、徒歩5分の学校を、これほど遠くに感じたことはなかった…。
厳密に言うと、学校からはプリントやメールでお知らせが来るのに、それに対しての”こちら側の声”を学校に届けられなかったという歯痒さ。とはいえ、こんなことになる前だって、基本的な親と先生方とのやりとりは連絡帳で、それは常々不便だなぁと感じていたことでした。
でも、これが学校の当たり前で、変えようとも、変えられるとも思わなかった。結局なにもかも、学校とのつながりに受け身だった自分に気付かされたのです。

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そんな折、世田谷の公立小中学校にわが子を通わせるパパママたちと「ICT利活用を考える会」を立ちあげることになりました。「Information and Communication Technology」略して「ICT」。聞いたことあるけれど、さっぱりピンとこない…って方も多そうなこのワード(笑)、かいつまんで言うと、PCやタブレットを使ってオンライン学習をしたり情報共有したりすることで、たとえば先述した連絡帳問題をICTに落とし込むと、おたがいがメールでやりとりすることが方法として生まれます。

実際、この活動の中で実施した『ICT利活用に関する保護者向けアンケート』で、

・休校中、学校と連絡が取れなかった

・情報発信が一方的だった

・先生方は電話だってもっとかけられたのではないか

という声も多々ありました。ただ、学校の現状として、まずインターネット環境が整っていないこと、学校で使える端末が限られていること、極めつけに電話に限っては各学校にたったの2回線しか引かれていないという事実(!)も判明し、思わずめまいが…。まさに、自分たちが小学校に通った昭和の時代と何ら変わらない実態に気づいてしまったのです。

そのひとつひとつを見直して、変えていこう、というのが私たちが今している活動です。

右から、教育長の渡部さん、区長の保坂さん、活動リーダー卓さん、みきさん、私、ゆみこさん
右から、教育長の渡部さん、区長の保坂さん、活動リーダー卓さん、みきさん、私、ゆみこさん

先日、保護者アンケートの結果を、世田谷区長の保坂さんと、昨年度まで小学校の現役校長先生だった教育長の渡部(わたべ)さんにお渡しする機会に恵まれました。
長女が中1、すなわちわが子たちが世田谷の公立学校にお世話になって7年目を迎えるのに、恥ずかしながら今まで教育委員会にはこれっぽっちも興味がなく、教育長は永遠に会うことがない人というイメージしかなかった…。
そんな私が、教育長とご対面?! ちょっと信じられないことが起こりました。

そして、教育長の渡部さんが”ひとりのステキな女性”だったことへの衝撃。いつの間にか、堅苦しく思えるその肩書きだけで、私は勝手に教育長のイメージをどこかかけ離れたところに作り上げていたのだと思います。
でもやっぱり、なにか議論をするとき、その相手は顔の見えない誰かより、顔の見える○○さんがいい。渡部さんとの対談は顔が見える安心感もあって、おたがいにとってすごく有意義な時間になりました。

教育長というお堅いイメージが一切ない、とっても気さくな渡部さん。対談後の雑談風景。
教育長というお堅いイメージが一切ない、とっても気さくな渡部さん。対談後の雑談風景。

この日は、保護者アンケートの集計をもとに、これからの世田谷公教育について話し合いました。リアルな声の中でもネガティブさを含むものの多くは、現状が分からない不安が生み出しているという印象で

・双方向でつながれるオンライン授業は始まるのか

・学校とのメールでのやりとりは可能になるのか

・先生方の環境は整備されるのか

などなど。

それに対しての区の回答は、諸々前向きに検討中とのことでした。ただ、個人情報保護条例だったり、ICTを進めるにあたってクリアにすべき問題も多々あるのだそうで。その流れで「保護者の方はやっぱり、お子さんの学習面がとても不安ですよね」とおっしゃる渡部さんに、私が思わず伝えたことがありました。

私はなにより、学校とつながれなかったことがただただ悲しかった。学校と家庭は、今までもどこか距離があるのが当たり前になっていた。世代を超えて地域の方とつながる大切さは叫ばれるのに、なぜ学校とつながることは見過ごされがちなのか。

中1の長女の学校はいち早くオンライン学習(ロイロノート)が始まった。ある日娘が、分散登校ですこし顔を合わせた程度の担任の先生のことを「すごく気が合いそう!」と、うれしそうに話すことがあった。それは、ロイロノートを通じて先生と自己紹介をし合ったとき「チョコレートが好きです」という娘の言葉に、先生が「私も!」と返してくれたことが理由だった。
再開もはっきりしない学校のことを、楽しみだと目を輝かせるわが子の姿は、親の私にとってどれほど心強かったことか。

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休校中に感じたいろんな想いが巡って、思わず熱く語ってしまった私ですが、渡部さんはその話に大きくうなづき「ICTはこれからの学校と子どもたちのつながりにおいて絶対に必要なものです」と、言ってくださいました。まさにココが活動における第一章の幕切れとなり、私たちは今、第二章に向けて歩みを進めているところです。

具体的には「ウェビナー」を企画しています。…また出てきた聞き慣れない単語ですが(笑)、こちらは要するに「オンライン講座」のこと。教育長と保護者が一緒になってICTを考える時間を作りたいと思っています。

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思えば、突然のコロナ禍で、プツっと途絶えてしまった学校とのつながりには絶望感しかなかったけれど、今となってはその環境を変えていく希望しかない。それもこれも、世田谷をより良くしようとする仲間たちに出会えたおかげだと実感します。
今回、私自身の言葉に落とし込んだために、これが私主体の活動に感じられたかも知れませんが決してそんなことはなく、頭のキレるリーダーと万全なサポートを誇るメンバーのみんなに、私はただ変わり種としてくっついている感じです(笑)。

これから、世田谷の公教育はどう変化していくのでしょうか。まわりの保護者たちもどんどん巻き込んで、このムーブメントをより一層盛り上げていけたらと思います。

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