昔ながらのご当地グルメに、一風変わった調味料!? 海の幸を生かした名物料理も。愛媛県・宇和島のグルメ旅へ!

LEARN 2019.07.10

愛媛県の南予地域にある宇和島市は、真珠や真鯛、ハマチといった海産物の養殖が盛んに行われている都市。また、愛媛県のなかでも、みかんの生産量が特に多いことでも知られています。ここでは、自慢の海産物や柑橘を使ったグルメを切り口に、宇和島市の魅力をご紹介。また、昨年7月の豪雨災害に負けず、日々頑張る人たちの姿にもスポットを当てます。

新鮮な海の幸をつかった、ユニークなグルメ。

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宇和島市は宇和海に面しているため、海側のルートを走れば、穏やかな景観を楽しめます。海面に鯛やハマチの養殖いかだが浮いている場所も多く、養殖業が島の暮らしや経済を支えているのを、見て取ることができるでしょう。

「ハランボ」の内臓を取り除く作業も手作業で。
「ハランボ」の内臓を取り除く作業も手作業で。

この日まず向かったのは、宇和島市吉田町にある〈はるちゃん天ぷら〉。ここでは、宇和島市の郷土料理であり、県内でもポピュラーな「じゃこ天」が作られています。「じゃこ天」は練り物の一種で、おもな材料は、宇和海で水揚げされた「ハランボ」。これを皮や骨ごとすりつぶした後、油で揚げるというのが、一般的な作り方です。〈はるちゃん天ぷら〉の代表を務める山本はるみさんによると、こちらでは、プリプリとした食感に近づけるため、イカを“つなぎ”として使っているそう。

すりつぶした身を、専用の型で小判形に整えます。
すりつぶした身を、専用の型で小判形に整えます。
着色料などは使用していないため、自然な色合いの「じゃこ天」に。
着色料などは使用していないため、自然な色合いの「じゃこ天」に。

「オーブントースターやフライパンなどで温めると、よりおいしく食べられますよ。ビールとの相性も抜群です」と、山本さん。その言葉どおり、熱々の「じゃこ天」はクセになるおいしさ。プリプリとした歯ごたえや旨みたっぷりの味わいに病みつきになる人は多くいるようで、400〜500枚作る日も多々あるそう。

※売り切れてしまっていることがあるため、店舗を訪問する場合、事前連絡をするのがオススメ。

「じゃこ天」は、webサイトで購入可能。1つ5枚入り1,170円(税込)。現在は、木・金・土曜日のみ発送が行われています。
「じゃこ天」は、webサイトで購入可能。1つ5枚入り1,170円(税込)。現在は、木・金・土曜日のみ発送が行われています。

〈はるちゃん天ぷら〉
■愛媛県宇和島市吉田町奥浦296−1
■0895-54-0263
■9:00〜16:00
■日月休 ※5月と8月後半、および漁に出られない日も休業

また、宇和島市に来たからには、名物の「鯛めし」は食べ逃したくありません。〈はるちゃん天ぷら〉がある吉田町から車で15分ほどの高串には、「鯛めし」をはじめとする郷土料理を取りそろえる〈ハイウェイレストラン宇和島〉があります。

店内には、宇和海で獲れた魚が泳ぐいけすも。新鮮な海の幸を味わえるのも、〈ハイウェイレストラン宇和島〉の特徴です。
店内には、宇和海で獲れた魚が泳ぐいけすも。新鮮な海の幸を味わえるのも、〈ハイウェイレストラン宇和島〉の特徴です。

おすすめメニューは、郷土料理をまんべんなくいただける「鯛めしセット」(1,700円〜)。運ばれてきた料理を前にして、専務取締役の森田雄太さんが「鯛めし」にまつわる歴史や雑学を教えてくれました。「愛媛県の『鯛めし』には、鯛をご飯と一緒に炊き込んだ『松山鯛めし』とタレに漬け込んだ鯛の刺身をご飯にかけた『宇和島鯛めし』の2種類があります」

〈ハイウェイレストラン宇和島〉で提供しているのは、「宇和島鯛めし」なのだそう。「何百年も前、宇和海に浮かぶ日振島を根拠地としていた伊予水軍が、酒を飲んでいたお椀にご飯を盛り、鯛の身をのせて食べたのが『宇和島鯛めし』のはじまりとされています。その後途絶えましたが、およそ50年前に〈ハイウェイレストラン宇和島〉をオープンさせるにあたり、文献をもとに『宇和島鯛めし』を復活させました」

「宇和島鯛めし」に使うのは、鯛の活き造り。
「宇和島鯛めし」に使うのは、鯛の活き造り。
特製のだし汁に活き造りと大根、わかめ、青じそを入れ、ご飯にかけます。
特製のだし汁に活き造りと大根、わかめ、青じそを入れ、ご飯にかけます。
味つけした糸こんにゃくに錦糸卵、そぼろなどをのせた「ふくめん」。宇和島ではお祝いの席では、欠かせない料理なのだとか。
味つけした糸こんにゃくに錦糸卵、そぼろなどをのせた「ふくめん」。宇和島ではお祝いの席では、欠かせない料理なのだとか。
甘辛く味付けされた「鯛のかぶと煮」。
甘辛く味付けされた「鯛のかぶと煮」。

「鯛めしセット」には、これらの料理に加え、湯通ししたサメを辛子酢味噌でいただく「ふかのゆざらし」もついてきます。

撮影用として、特別に用意された貝柱のバター焼き。一般的な貝柱と違い、コリコリとした歯ざわり。
撮影用として、特別に用意された貝柱のバター焼き。一般的な貝柱と違い、コリコリとした歯ざわり。

また、こちらではとても珍しい真珠貝の貝柱を味わうことができます。実は〈ハイウェイレストラン宇和島〉は、真珠の加工・販売を行う「真珠会館」のなかにあるレストラン。養殖業を営むメーカーと独自のつながりがあることから、毎年、真珠貝の貝柱を確保できているそう。「貝柱が流通しはじめるのは、真珠を取り出す作業が行われる12月から1月にかけて。冷凍保存していますが、数量に限りがあるため、夏には提供が終了する可能性があります」と、森田さん。

貝柱を使った料理として、「パールパスタ」や「真珠丼」がありますが、こちらを食べるために遠方から足を運ぶ人も多くいるのだとか。〈ハイウェイレストラン宇和島〉を訪れた際は、ぜひ貝柱の有無を訪ねてみてくださいね。

レストランのすぐ隣には、高品質なパールを使ったアクセサリーの販売スペースに加え、オリジナルのアクセサリーを作れるコーナーも。
レストランのすぐ隣には、高品質なパールを使ったアクセサリーの販売スペースに加え、オリジナルのアクセサリーを作れるコーナーも。
でこぼことした真珠は、「バロックパール」と呼ばれます。ふたつとして同じ形のものがないのが、「バロックパール」の魅力のひとつ。
でこぼことした真珠は、「バロックパール」と呼ばれます。ふたつとして同じ形のものがないのが、「バロックパール」の魅力のひとつ。

真珠貝に人工的に「核」を入れ込むと、貝のなかで徐々に丸い真珠が形成されます。しかし、貝の個性などにより、まん丸ではなくユニークな形状の真珠ができあがることも。こうした真珠は、まん丸のものよりも市場価値が低くなりますが、若い女性を中心に人気を集めているようです。

〈ハイウェイレストラン宇和島 真珠会館〉
■愛媛県宇和島市高串3-58
■0895-23-0818
■8:00〜20:00
■無休

「パクチー醤油」に「ふりかけポン酢」!? これまでになかった調味料。

創業当時とほぼ変わらぬ姿のまま、残されている醸造場。
創業当時とほぼ変わらぬ姿のまま、残されている醸造場。

ランチの後にぜひ立ち寄りたいのが、レストランから車で5分ほどの場所にある、〈旭醤油醸造場〉。こちらの醸造場の歴史は古く、創業はなんと明治15年なのだそう。また、醸造場の建物は昔ながらの建築様式である土蔵造りで、その希少性の高さから有形文化財にも指定されています。

価値ある建造物や歴史を守りつつも、積極的に新しい試みにチャレンジするのが、4代目である中川賢治さんと美保さんの姿勢。例えば、ポン酢を固めて“ふりかけ”のようにした「ふりかけポン酢」や餃子との相性が抜群な「パクチー醤油」など、これまでにない商品も手がけています。

豊かにパクチーが香る「パクチー醤油」743円(税込)。
豊かにパクチーが香る「パクチー醤油」743円(税込)。
モザイクタイル貼りの古い流し台が、そのまま残されています。かつて、醤油を量り売りする際に使われていたそう。
モザイクタイル貼りの古い流し台が、そのまま残されています。かつて、醤油を量り売りする際に使われていたそう。
扉には、浸水の跡がはっきりと残されています。
扉には、浸水の跡がはっきりと残されています。

実は〈旭醤油醸造場〉も、昨年7月の豪雨により、大きな浸水被害を受けた施設のひとつ。「醸造場の内部はもちろん、機械や商品も泥に埋もれてしまい、災害があった直後は『どうやって営業を再開しようか』と途方にくれました。幸い、復旧を支援する機関からの援助もあり、今年1月から徐々に営業を再開することができました」と、美保さん。

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周囲からの助けがあったとはいえ、営業再開に至るまでには、さまざまな苦労があったのは容易に想像できます。大きな困難にも屈することなく、立ち向かう強さを垣間見たような気がしました。

〈旭醤油醸造場〉
■愛媛県宇和島市吉田町東小路甲112
■0895-52-0242
■8:30~17:00
■日祝休
公式サイト

ワイルドな見た目に反し、絶品!ユニークな「太刀魚巻」。

〈河合太刀魚巻店〉の店主・河合京子さん。
〈河合太刀魚巻店〉の店主・河合京子さん。

宇和島市には、おいしいものがまだまだたくさんあります。創業150年の老舗鮮魚店〈河合太刀魚巻店〉の「太刀魚巻」も、そのひとつです。「太刀魚巻」は、1匹半〜2匹分の太刀魚を竹の棒にぐるぐると巻き、焼き上げたもの。甘辛く、絶妙な味わいの秘伝のタレで仕上げられた「太刀魚巻」は大人気で、午前中に売り切れてしまうこともあるのだとか。

太刀魚巻は、1本650円(税込)。毎日、新鮮な太刀魚を市場から仕入れ、1本1本手作りしているそう。
太刀魚巻は、1本650円(税込)。毎日、新鮮な太刀魚を市場から仕入れ、1本1本手作りしているそう。
アジのすり身に刻み野菜を加えて揚げた「アジスリミコロッケ」150円(税込)。ピリリとスパイスが効いており、程よい弾力があります。
アジのすり身に刻み野菜を加えて揚げた「アジスリミコロッケ」150円(税込)。ピリリとスパイスが効いており、程よい弾力があります。
店舗となっている建物は、200年近い歴史をもつそう。ノスタルジックな雰囲気に、心惹かれる人も多いのでは。
店舗となっている建物は、200年近い歴史をもつそう。ノスタルジックな雰囲気に、心惹かれる人も多いのでは。

〈河合太刀魚巻〉
■愛媛県宇和島市吉田町魚棚28
■0895-52-0122
■9:00~17:00 ※売り切れ次第閉店
■魚がない日は休み
公式サイト

取材時は、「和製グレープフルーツ」といわれる「宇和ゴールド」が、収穫時期を迎えていました。
取材時は、「和製グレープフルーツ」といわれる「宇和ゴールド」が、収穫時期を迎えていました。

前述したように宇和島市は、柑橘の名産地です。なかでも吉田町にある玉津地区は、県内の一大産地。地区の代表品種である「南柑20号」に加え、ポンカンや「せとか」など、さまざまな品種の柑橘が生産されています。

吉田町を車で走っていると、大きく崖が崩れた場所を目にすることも。地元の人は「崖崩れが起きた瞬間、雷が落ちたような轟音がした」と当時を振り返ります。
吉田町を車で走っていると、大きく崖が崩れた場所を目にすることも。地元の人は「崖崩れが起きた瞬間、雷が落ちたような轟音がした」と当時を振り返ります。

しかし、昨年7月の豪雨により、玉津地区にあるみかん畑の約2割において、土砂が流れ込んだり、畑そのものが崩れたり、といった被害がありました。玉津地区でみかん農家を営む山本計夫共選長によると、モノレールやスプリンクラーといったみかんの生産には欠かせない機械が破壊された農家も、多くあるそう。「新たに木を植えてから、おいしいみかんが実るまでに、だいたい10年はかかります。つまり、10年以上、収入が発生しない農家もあるということ。一次産業における被害は長年続くということを、ぜひ知っていただきたいです」

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災害をきっかけに、玉津地区の若手柑橘農家により〈玉津柑橘クラブ〉が結成されました。クラブが運営するオンラインショップでは、果汁100%のみかんジュースなどが販売されています。とてもジューシーなのに、後味すっきり!

〈玉津柑橘クラブ〉
■愛媛県宇和島市吉田町法華津6-82-2
■0895-52-7130
公式サイト

おいしいものが大好きな人にとって、まさに“天国”ともいうべき宇和島市。風光明媚な景観や歴史ある建造物など、見どころも盛りだくさんな街です。また、7月22日〜24日にかけては、巨大な「牛鬼(うしおに)」が街を練り歩く「和霊大祭・うわじま牛鬼まつり」というダイナミックなイベントも開催されます。夏の旅先をリサーチ中の人は、ぜひ宇和島市をチェックしてくださいね。

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