まちをつなげるパン屋さん by Hanako1173 町を再び活気付かせた2人のパン職人。栃木県・宇都宮市にあるベーカリー〈THE STANDARD BAKERS〉へ。
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、栃木県・宇都宮市にあるベーカリー〈THE STANDARD BAKERS〉をご紹介します。
栃木県宇都宮市大おお谷や町。大谷石の採石場として栄えた面影は、そこかしこに残った古めかしい石造りの建物や石畳に見ることができる。さびれている?いや、見ようによっては、ドラクエに出てくる町みたいで、すごくかっこいい。
一軒のパン屋が大谷町を変えてからは特にそう見えてきた。町のランドマークでありながら長く閉じたままだったトロなドライブインに〈THESTANDARDBAKERS〉が誕生、いま大谷町が一躍人気のエリアとなっている。
ムーブメントの立役者になった2人。パンの監修を務める、宇都宮の人気ベーカリー〈パニフィカシオンユー〉の氏家由二さん。現場でシェフを担う、〈ラトリエドゥジョエル・ロブション〉時代の後輩・白石和也さん。
最先端のパンに、付近の生産者から直接仕入れる新鮮な野菜や果物がのる。こんなところでこんなパン?とシチュエーションもあいまってさらにおいしく感じる。ミニ食パンみたいなバンズに山盛りの具材がそそるサンドイッチ。那須御養卵の卵サラダにケッパー、ツナにはわさびを合わせたりと、おいしいアイデアもいっしょにはさむ。パンは、ぱふぱふと弾んでしゅーっと斬新な溶け味。
氏家さんから渡されたこのパンのレシピを仕込むと生地がどろどろに。「もうどうしようかなと思いました」と白石さん。できあがってみると狙いがわかった。やわらかくて、バターの風味も活きた常識破りのバンズが完成したのだ。生産者から持ち込まれる朝採れの野菜を、アドリブでパンにする。
「その日いちばんいいものを、いちばんいい状態で使う。やりがいがあります」。撮影は4月。フォカッチャにのっていたのは、やわらかくて甘い春キャベツ。これからブルーベリーや夏イチゴ、トウモロコシやトマトがおいしい季節。パンで栃木のよさを満喫できる。
この春、日光の市街地とキャンプ場に計2店舗を出店する。大谷を復活させた勢いを栃木全体へ波及させる目論見。週末のお出かけ候補に、栃木が急上昇だ。
〈THE STANDARD BAKERS(ザ スタンダード ベーカーズ)〉
2フロアの大空間にベーカリーとレストランが。朝市やライブなど楽しいイベントも。
■栃木県宇都宮市大谷町1159
■028-652-5588 宇都宮
■10:00~17:00、土日祝8:30~18:00(モーニングは土日祝8:30~10:00LO、グランドメニュー11:00~)不定休
■90席/禁煙
池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog
(Hanako1173号掲載/photo:Kenya Abe)
☆前回のパン屋さん〈一本松農園〉はこちらから。