土の味わい深さが器好きをとりこに。 沖縄で想い出の品を。クラフト市でも人気殺到な〈陶房 土火人〉の魅力とは?
「土の良さを引き出しながらもモダンな空気を纏わせている」と器好きを夢中にさせているのが、うるま市に〈陶房 土火人〉を構える山田義力さん。クラフト市に出店すれば長蛇の列ができ、県外からの工房見学者もあとを絶たない、沖縄を代表する陶芸作家だ。その人気の秘密と器の魅力に迫る。
土そのものを生かした器に力強い自然美が宿る。
陶芸家からの信頼も厚い那覇のセレクトショップ〈GARB DOMINGO〉オーナーの藤田俊次さんをはじめ、器好きを夢中にさせているのが、うるま市に〈陶房 土火人〉を構える山田義力さん。陶房名は「土と火、人となりの重なり」を意味する。
その作風は、たびたび素朴で力強いという言葉で表現されるが、山田さんの器には厳かな生命力に似たものさえも感じられる。山田さんに陶芸の道を決意させたのは、かつて八重山諸島で焼成されていたパナリ焼きという土器。「たかが焚火程度の火で焼いた器が人をこんなにも感動させるものか」と、強い衝撃を受けたと話す。
器に宿る自然美のルーツがそこにあるのは間違いないが、器が纏う力強いオーラの秘密は、土を生かしきるための手法にもある。まず、山田さんが器の形成に使うのは、電動式ではなく、自分の足で土台をまわす〝蹴りろくろ〞。手も足も心も、全身を使って土と向き合う。「昔はこうでなくてはいけないという考えにとらわれていた時期もあったけど、いまは少し自由になれた」。沖縄以外でも使いたい土があれば取り入れ、民藝陶器の大家、濱田庄司が用いた蝋抜きという技法を用いることもある。蝋が釉薬を弾くことで模様ができるのだ。
ギャラリーでは自身の器を用いて急須でお茶を淹れ、出迎えてくれる。器を手に取ると、土の感触が柔らかく伝わるよう。口当たりがやさしくお茶の風味もまろやかに感じられる。沖縄のチャンプルー文化のように、自由にたくましく。そうして生み出される器のエネルギーに、人は強く惹きつけられる。
山田義力/やまだ・よしりき
沖縄県うるま市出身。沖縄県立芸術大学の陶芸コースでパナリ焼きの第一人者・大嶺實清氏に師事。2003年に独立し、自身の陶房〈土火人〉を構える。
〈陶房 土火人〉
■沖縄県うるま市川崎151
■098-972-6990
■陶房を訪れる際は事前に電話を。http://tsuchibito.ti-da.net/でイベント告知も。
(Hanako1160号掲載:photo : Yoichi Nagano text : Keiko Kodera)