苦手な冬を乗り越える、超機能的な防寒具や最強の冬のアイテム3つ|前田エマの、日々のモノ選び。#23
寒さに、とことん弱い。去年の12月に韓国留学から帰ってきたのだが、どうしてその時期を選んだかというと「極寒のソウルで生きていける自信がない…」からだった。
「肌が切れそうなほど痛くなる」ソウルの冬はそんな風な言葉でよく語られる。
私が韓国に留学したのは去年の2月の終わりで、極寒とまではいかなくとも、東京よりははるかに寒い。寒さにビビった私は留学の直前、友人に付き合ってもらい、新宿のあらゆる店を回ってダウンコートを探した。
最初から〈ノースフェイス〉のダウンジャケットは候補に上がっていた。しかし「ちょっと大袈裟すぎるかな? 東京では出番がないかな?」と、最後の最後まで購入を渋っていた。
しかし、これは大正解の買い物だった。安くはないが、後悔は少しもしていない。
(正直に言えば、ソウルの本当の冬はこのコートでも耐えられないらしい。足首まで隠れるベンチコートのような“ロングペディン”を着る人が多いのはそのため)
このダウンジャケット、フードをつければ首も耳も頭も防寒でき、とにかく本当に暖かい。もこもこしているが、思っていたよりも動きやすく、何しろふわふわした布団に包まれているような気持ちになれ、寒さからやってくる“外出する億劫さ”が激減する。防風性と耐水性を兼ね備えていて、真冬の北海道・知床でも大活躍した。雪も風も、へっちゃらなのだ。
東京の穏やかな冬だったらフードを外して、ダウンの下には薄手のロンTなどを着れば十分。外側には大きなポケットがついていて、小さな水筒や文庫本も余裕で入る。
しかもポケットの中にはファスナー付きの小さなポケットがついているから、鍵やリップなども失くさないで済む。そして内側のポケットも充実しているので、カバン要らずのコートなのだ。
去年買ったアイテムで正解だったなあと思うものがもうひとつある。〈ビームス〉で購入したミトン型の手袋だ。アルバイト先の素敵な人が使っていて、思わず真似してしまった。なにしろ私が長年探し求めていた手袋そのもの、ドンピシャだったのだ。
私は黒い服ばかり着るので、服の邪魔をしないよう、黒色の手袋を探していた。でも、黒い手袋って実は難しい。モノによってはスパイのようにも、作業用の軍手のようにもなってしまう。この手袋はボリューミーなファーが個性的で存在感があるので、地味にならない。手のひらの部分は革素材なので使いやすいし、カジュアルになりすぎず、様々なスタイルに合う。
これまた去年、韓国で購入した毛糸のショートパンツは〈sinoon〉のもの。〈sinoon〉はバレエコアな雰囲気のブランドで、ソウルにある店舗は、懐かしいかわいさを詰め込んだような一軒家。私は幼い頃から、毛糸のショートパンツのぼてっとしたフォルムやぬくぬくした質感が大好きで、数年に一枚、買ってしまう。
しかし毛糸のパンツって、使える季節が短いアイテムなのでケチな私にとってはコスパが悪い。秋はニーハイやタイツを合わせて履くのだが、冬はどんなに防寒したって、ショートパンツじゃ寒い。冬は毛糸で編まれていると言っても、ショートパンツはショートパンツなのだ。寒いものは寒い!なので、ボリュームのあるワンピースの下に履いて、防寒グッズとして活躍させている。
私にとっての防寒とは、首と耳を冷やさないこと。(足首ももちろん!)なので、耳当て付きの帽子やボンネットは必需品。フード付きのマフラーも、大活躍だ。
こうやって冬のアイテムを並べてみると、やはり黒やグレーばかり揃ってしまっている。今年の冬はもう少し色で遊んでみようかな…。苦手な寒さを、ファッションのパワーをもらいながら、どうにか乗り越えたい。
1992年神奈川県生まれ。東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。アート、映画、本にまつわるエッセイを雑誌やWEBで寄稿している。2022年、初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓。6月20日に韓国カルチャーガイドブック『アニョハセヨ韓国』(三栄)を刊行。
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