カフェと喫茶店には物語がある。「渋カフェ」その24 地元愛あふれる、主婦が始めた週2回のオーガニック喫茶店、四谷三丁目〈ガレージコーヒー〉。
Hanakoスイーツ担当が、普段訪れるカフェ&喫茶店の物語をご紹介しています。レトロなテーブル、懐かしくてかわいいメニュー。不思議と落ち着く「渋カフェ」。お茶をいただきながら、マスターやその店それぞれのストーリーに耳を傾けて。24回目は、四谷三丁目で育った店主が、地元の由緒あるスペースで、週に2日だけ開く喫茶店〈ガレージコーヒー〉へ。
今回の渋カフェは四谷三丁目にある〈ガレージコーヒー〉。このお店には、他とは違う特別な居心地の良さがあります。
一つの理由は、水・木曜の昼だけ営業している曜日限定の喫茶店であること。店主のマキコさんは地元四谷出身。今も近所に住み、主婦をしながらお店をしています。「コーヒーはプロとして淹れていますが、あとはがんばらずに『なんか、楽しかったなーと思ってもらえた』くらいで」と、気負いが全くないのです。
もう一つの理由はこの空間。南向きで光が差し込み、とても気持ちがいいこと。「ここは43年前も喫茶店をやっていたスペースでもあるので、内装やイスも当時のまま。だからたまに、ここ、まだ喫茶店だったの? なんて人が入って来たりもする。四谷の人々にとっては、いつもそこにあった古き良き場所なんです」
マキコさんが子供のころ、近所にはたくさんの喫茶店がありました。幼なじみの家も喫茶店で、よく遊びに行っていたそう。「その後、名古屋の喫茶文化に影響を受けて。20代に数年間、夫と一緒に名古屋に住んでいたんですが、仕事の合間や休日にティータイムを楽しんでるうちに、喫茶店がさらに好きになりました。どの店も、街の人の日常に溶け込んでいて。おいしいコーヒーの店に出会えたのも大きかったかもしれません」
「四谷に戻ってきてからは、子育ても落ち着いてきたので、駒込の〈百塔珈琲〉でアルバイトを始めたんですが。〈百塔珈琲〉は禁煙で自家焙煎も手掛ける理想の店で。そこでコーヒーを一から勉強して」
そんなある日、お世話になった人の結婚式でコーヒーを淹れることに。
「考えてみたら、それが〈ガレージコーヒー〉としての活動の初日でしたね。その後、母校の同窓会でもコーヒーを出すことになり。で、近所でそんな話をしていたら、週に数日でいいからウチでやってみないかって。それがお店を始めたきっかけ。私、今まで特に何かを成し遂げたこともなく。いろんな人の良心に導かれて、ここまで来ただけなんですけどね」
ただ、四谷の町に喫茶文化を残していきたいという気持ちは明快にあるのだそう。
トーストは「バルミューダ」で焼く。なんとパンの持ち込みもOKだとか。「コーヒーはちゃんと味わって欲しいのでウチで。他は自由でも良いかなと」。そんなところも、この店の居心地の良さ。
「体にいい食材にもこだわっています。自分も子供がいるので、コーヒーはオーガニックだし、ミルクやトーストもそう」
撮影の合間も、「お、取材?(笑)」なんて言いながら地元の常連さんが入ってくる。お客さんともにこやかに話しながら、お気に入りのカップを見せてくれたマキコさん。
カップはヴィンテージ。自分に合うサイズや雰囲気を大事にしている。「特に『ミノチヤ』のシンプルなカップは、ぜひ復刻してほしいくらい、どなたかお願い出来ないですかね?」
コーヒーの道具は〈百塔珈琲〉時代に揃えた。豆の焙煎は〈百塔珈琲〉だが、豆そのものは世田谷の〈堀口珈琲〉が中心になって輸入しているもの。「そこでも縁があって。名古屋のときに好きで通ってたお店って、これと同じコーヒー豆を使ってたんです。後で気づいて、好きなものって結局繋がってるのだと自分でも妙に納得しました」
人気のある店とは、人が集まる場所とイコールなのかも。ちなみに〈ガレージコーヒー〉のお客さんには、マキコさんの保育園時代の先生もいて、取材の日もお茶をしに訪れていた。自分の幼稚園や保育園の先生をちゃんと覚えている人は、どれくらいいるだろうか?
週に2日の喫茶店。
偶然が重なってというより、生まれるべくして生まれた店なのかもしれない。