蛙亭イワクラ「家族のようで、家族じゃない」 | 連載【即断すぎて周りがとめる】 vol.7

LEARN 2024.05.13

蛙亭イワクラさんは一見おっとりしているようだが、実は意志が強く、即断即決の人(早すぎて周りが「ちょっと待って、一回考えよう」と止めることもあるそう)。でも「イワクラを見ると周りが何かしてあげたくなる」ようなほっとけなさもある。「お笑いが人生を楽にしてくれた、自由にしてくれた」という彼女が見てきた景色、最近思うことについて少しずつ話してもらう連載です。
イラストはコンビの相方、中野周平さんが担当。

ルームシェアにもオーディションがありまして。

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イワクラ
2020年4月に東京に来ました。最初に住んだ家はすごくいい家だったんです。築古の昭和のアパートだったんですが、日当たりが良く、部屋から桜も見えて、大家さんもめっちゃ優しくて。でも、そこには、わたしとわたしの真下の人と2人だけしか住んでなくて、下の人は、最初挨拶に行ったときは好青年な感じだったのに、その後、コロナ禍による緊急事態宣言が出てずっと家にいるようになると、家が揺れるぐらい激しい物音を立てるし、たまに大声を出して叫んだりもするようになって。だんだん恐怖を感じるようになり、尼神インターの渚さんに連絡して渚さんの家に避難させてもらったんです。
  でも、ずっと渚さんにお世話になり続けるわけにはいかない。とはいえ、コロナ禍で仕事もなく、引っ越すお金がない。そんなとき、ちょうどオズワルドがYouTubeチャンネルで「ルームシェアメンバーを探す」という企画をやってたんです。オズワルドの畠中(悠)の家のシェアメンバーを探す、というもので、もともと畠中の家には「素敵じゃないか」の柏木(成彦)も住んでいて、「3人目のメンバーを募集します」ということだったんです。
  オズワルドがNSCの同期ということは知ってたんですが、わたしは大阪で、彼らは東京。会ったこともなければ、しゃべったこともなく。どうしようかと思ったんですが、大阪時代はずっと芸人仲間とルームシェアをしていて楽しかったし、もし東京でもそれができれば淋しくないし、いいかなって。それで連絡してみたんです。「オーディションに参加したいです」って。
  応募したのは、わたしと、ピン芸人の森本サイダーと、「大鵬」の太朗の3人。シェアメンバーの1枠をかけ、競うことになり、コロナ禍だったのでオンラインでのオーディションになりました。
  3人それぞれ自分がシェアメンバーになったらどんな特典があるのかをアピールするんですが、わたしは宮崎の実家からおいしいマンゴーや地鶏が送られてきますと熱心に言いました。が、畠中が歌をうたうことが好きということで、ギターを弾ける太朗が合格となりました。
  わたしもサイダーもどこにも行き場がなく困ってしましました。すると、オズワルドの伊藤(俊介)くんから連絡がきたんです。「いままでずっと妹と一緒に住んでたんだけど、家を出ることになって。畠中のルームシェアを見てたらすごく楽しそうだし、自分もやってみたいと思うんだけど、よかったら一緒にどう?」。あぶれてしまったわたしたちがかわいそうだと思ったみたいなんです。
  そして、3人で住むことを決め、せっかくだからもう1人、オーディションで決めて、4人で住もうと。で、オズワルドのYouTubeチャンネルで2回目のルームシェアメンバーオーディションを開催しました。そこで合格したのが「ママタルト」の大鶴肥満でした。
  肥満に決定したのは、「ピザ窯を持ってるのでピザを焼けます」って言われたからでした。「え、ピ〜ザ〜!?」って(笑)。
  あの頃はコロナ禍だったので、基本、みんないつも家にいて、毎日、肥満が焼いたピザを食べて。ホントおいしくて、幸せな毎日でした。しらすとバジルのピザとか、サーモンのピザとか、マシュマロピザとか。肥満だけじゃなく、伊藤くんもハンバーグをよく作ってくれました。これもめちゃくちゃおいしい。みんなも伊藤くんが作るハンバーグが大好きで、1人3個ぐらい食べるので、ご飯も3杯はいっちゃうんです。もちろん、わたしも作りました。宮崎地鶏のチキン南蛮が得意なので、それをよく作るとみんな喜んでくれました。ただ、サイダーだけは料理が上手くなくて。一度、頑張って焼きそばを作ってくれたんだけど、ビッシャビシャの焼きそばができあがって、みんな「ごめん、お腹いっぱいで入らないわ」って(笑)。
  このメンバーでの暮らしは、1年半続きました。わたしがシェアを卒業したのは、お金がないというのがシェアを始めた理由だったので、それなりに仕事も増えてきたので、ということです。わたしが抜けた後は、大阪からやってきた佐川ピン芸人が入り、その後、肥満と伊藤くんも抜け、NSCの同期だったムラムラタムラが入りました。なので現在は、サイダーも含め、ピン芸人3人の家になってます。
  一つ屋根の下、家族のようで家族じゃない人たちと寝起きをともにし、ご飯を一緒に食べたことは、一生忘れられない「おいしい経験」になりました。
大鶴肥満のピザは絶品! 甘いものを乗せたスイーツピザもめっちゃおいしいんです。
大鶴肥満のピザは絶品! 甘いものを乗せたスイーツピザもめっちゃおいしいんです。
illustration_Shuhei Nakano(kaerutei) edit_Izumi Karashima

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