俳優・志田未来さんにインタビュー。
HANAKO PEOPLE story#16

LEARN 2023.08.10

日々の記憶や感情、自らを取り巻く物事の中から、気になる3つのキーワードについてインタビュー。パーソナルなストーリーが紡がれます。第16回は、俳優・志田未来さんが登場。

Theme #1 演じること

DMA-_54A8398_0713_1 志田未来 HANAKO PEOPLE

子役として仕事をしはじめたのが6歳。物心がついたときにはすでにお芝居は私の生活の中に当たり前にあるものでしたし、私にとってなくてはならないものでもあります。子役から仕事をしていると、途中でやめていく人もいれば、学業のため一旦お休みしてから復帰する人もいて、ずっと続けている人って実はあんまりいません。ずっとお仕事をしているので、ふと「もし私の人生から仕事がなくなったら、どうなるんだろう?」と想像することもあります。でも同時に「絶対に仕事を続けていくだろうな」みたいな変な自信もあって(笑)。

それはきっと、

演じることが衣食住と同じ感覚で日常の一部として存在するものだから。

とはいえ、人と人がいて成立するお仕事であって、自分一人の力でできるものではないので、不安な部分を抱えたまま。どんなにキャリアを重ねても、心は自信と不安を行ったり来たりで揺れ動いています。
「テレビに出たら記念に残るよね」。そんな軽い気持ちではじまったので、まさか自分がこんなに続けるとは想像もしなかったし、おそらくこの世界に入れてくれた母が一番ビックリしているはず。もともと飽き性で、何事もハマったかと思えばすぐに飽きてしまうことが多いのに、この仕事だけは小さい頃からやめたいと思ったことがなくて、自分が心からやりたくて、楽しみながらのめり込んできました。

ひとつのことを長く続けていると、似たようなことが訪れはするけれど、この仕事は何かしら新しい作品、新しい役柄と出会えて飽きることがない。8月からスタートするドラマ『ブラックポストマン』でも、初めて郵便配達員を演じます。郵便局と聞くと街に親しんだ平和な雰囲気を想像される方も多いと思いますが、配達で街を回っているといろんな人間模様があり、思いが交錯している。私が演じる草薙桃(くさなぎもも)も一見チャキチャキした明るい性格ではあるのですが、大きな悩みを抱えていて、物語にどう関わっていくかが見どころのひとつです。演じる役柄にしても、年齢を重ねることによって広がりを見せてくれます。

性格なのか、壁を壁だと思ってない節があって、もちろん辛かったり、苦労もしてきたつもりですが、「はじまれば、絶対終わりがある」。じゃあその間に自分がどれだけがんばれるのか?成長できるのか?と視点を切り替えてやってきました。何より撮影現場が楽しいのが一番の支えで、長い期間、同じキャストとスタッフで一つのものを作り上げる感覚が好きですし、撮影中は時間がない中でバタバタしてることが多いのですが、「みんなが集中してやらないと終わらないよ!」みたいな切羽詰まっている感じも大好きです。

Theme #2 サウナ

サウナブームが到来したとき、おじさまたちの場所というイメージが強かったこともあり「え、サウナ?」と懐疑的。ところがあるとき友人と一緒にキャンプ場にあるサウナに行く機会があって、水風呂と外気浴を体験したらめちゃくちゃ気持ちよくて、あっという間にハマりました。それが去年の11月のこと。以来、隙さえあればサウナに行っています。今までは睡眠不足が続いていると、早く家に帰って寝たいと思っていたけど、今はとりあえず一旦サウナでスッキリしたいという思考に。出先で近辺のサウナを検索するのが習慣になっています。最近では、地方のサウナを目指して旅に出て、そのまま隣の県のサウナ、また隣の県……と移動して聖地巡礼のようなサウナ旅行をしてきました。まだ仲間がいないので、サウナにまったく入らない母についてきてもらって、九州や静岡のサウナを満喫。まさか自分が飛行機や新幹線に乗ってまでサウナに行くなんて。

汗をかくのが好きで、岩盤浴や酵素浴、よもぎ蒸しなどには頻繁に行っていましたが、サウナのデトックス感はすべてがどうでもよくなる独特の解放感があります。考えていたモヤモヤがなくなって、体がドクンドクンって波打って血が巡るのを実感する。激しい運動をした後と似ているけど、普通なら疲れが残るところ、サウナは疲れが残らず、疲労物質がすべて流れ出ていくようなすっきり感。
私、サウナの中でセリフを復習しがちで、ちゃんと覚えられているか最終確認をしています。

サウナは極限の状況。ここでセリフを言えたなら、現場でも大丈夫って。

シンプルに趣味が増えたこともあって、現場のスタッフさんと情報交換というコミュニケーションが増えたり、オフもさらに充実しています。普段は男性専用だけど、月イチでレディースデイがあるサウナもあって、その予約をするのに必死で電話をかけたり、サウナハットなど専用グッズを探したりするのも楽しい。朝サウナにもハマっていて、午前中に1セットだけ入って体を目覚めさせて一日をスタートさせることも。普段は、サウナと水風呂に3セット入るんですが、入りすぎるとリラックスモードになってしまうので、朝は1セット。そのあと仕事へ行く日もあります。体調は日々変わるので、絶対に何分は入るとルールは設けず、ただ自分の心拍に集中する。必然的に自分の体に向き合う時間が増えましたし、ストレス発散にもなり、いいことずくめです。

Theme #3 同級生の友人

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本当に感謝すべき存在です。あまり友人が多くないので、どうしても狭く深くなりがち。何かがあったときに頼りにして、相談事も包み隠さずしています。学生時代は、“明日テストなのにヤバい”と危機が何度もあったけど、その度に「ここがヤマだから、ここだけ覚えて」と教えてくれたり、大人になってからはゴハンを作りにきてくれたり……小さなことから大きなことまで何度も助けられてきて、なくてはならない。私は家族には心配をかけたくなくて言いたいことを言えないときもあるし、家族は絶対的に味方でいてくれるから何か言葉をかけてくれるとき、私のいいようにプラスになる言葉がほとんどで。そういった言葉が欲しいときもあるけれど、中立な視点が必要なこともあって、友人は他人だからこそときに厳しい言葉や気づきをくれる。「それは、未来が間違ってるよ」とまっすぐに。自分から友人に意見を求めておいて、言い方が気に食わなくて、

カチンときて、30歳になった今もがっつりケンカして距離を置くことも。

あるとき友人に車を運転してもらったときがあったんですが、何も言わずに降りたら、「そこはありがとうって言わなきゃいけないでしょ!」と叱られました。仕事でマネージャーさんに運転してもらうことがいつしか当たり前になっていた私に、「感謝をしなきゃいけないことだよ。自分が特別だと思ってるの?」と。やっぱり知らず知らずのうちに一般常識から離れてしまっている部分があると自覚しながらも、ふとした瞬間に改めて大人として常識的なあり方に引き戻してくれます。何か悩みがあったときも、自分の中で一度答えを出してから、友人に相談するんです。「私はこう思っているけど、どう思う?」と。自分の考え方に自信がないわけではなくて、どうしても自分一人で考えるだけだと思考のパターンが偏ってしまう。ほかの立場ならどう考えるのか?そのバリエーションを学んで自分の視野を広げる意味もあります。耳が痛いこともあるし、ときにムッとしつつも、心のままにぶつかり合える関係性はとても特別なものです。

Information

ドラマ『ブラックポストマン』

警察や司法の手が届かず、社会問題として取り上げられない事件の被害者を救うため、郵便局員がダークヒーローとなり加害者を制裁するサスペンスエンターテインメント。8月18日(金)より毎週金曜20時からテレビ東京系にて放送。

photo : Mariko Kobayashi styling : Yoshie Senbonmatsu hair & make : SHIZUE text : Hazuki Nagamine
ジレ58,300円、ノースリーブトップス18,700円、スカート26,400円(全てDiagram │ Diagram 表参道ヒルズ店 TEL:03-6804-3121)/その他スタイリスト私物

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