センシュアルにまとう夏の黒。 スタイリスト木村真紀による「ソロソロ、イイモノ。」Theme #14/サマーブラックパンツ
似合うものは決まってきたし、あふれるほど欲しいわけじゃない。心地がいい、具合がいい、気分がいい、品がいい。いろんな意味でバランスの「イイモノ」に、少しの特別を添えて。
モード界の革命的デザイナー、ココ・シャネルには到底及びませんが、私も大の黒好き。クローゼットのカラーパレットについては以前にも何度か触れましたが、色ものが着たい気分とされる春夏シーズンにおいても健在で、黒い服が大部を占めています。
言わずと知れたシャネルのリトルブラックドレスは、喪服の色でしかなかったを街中にあふれさせ、シックな色へと昇華させたキーアイテム。「私の前は誰も黒を着る勇気がなかった」というシャネルの言葉をお借りして提案したいのが、あえて夏に着る黒です。重くならないよう、またありきたりにならないように掲げたいキーワードが、今季のトレンドである〝センシュアル〞。官能的、肉感的と訳され、知性のある色っぽさとされるその言葉は、シースルーやランジェリータッチなデザインに投影された、今季を象徴するムードです。今回は胸元が透ける色っぽさではなく、足元が透ける知的さにこだわってボトムスをセレクト。パンツ自体が切り替えデザインでシースルーになっているアイテムはもちろん、パンツにシースルーのスカートをレイヤードした変化球アイテムもスタイリングの幅が広がってオススメ。
また、夏の黒を極めるべく挑戦してほしいのがオールインブラックのスタイリングです。ここで重要なのが質感で演出するアンバランスなメリハリ。軽さや透け感のあるエレガントなボトムスには、重さと光沢感のあるベロアのTシャツや温かみのあるボヘムな刺繍ブラウスなど、異なるテイストをミックスすると抜け感が生まれます。また、とろみのあるブラウスや光沢感のあるタンクトップと合わせて思いっきりシックにまとめれば、レストラン仕様のドレスアップとしても楽しめます。マルチプレイヤーな夏のブラックパンツで、新しい黒の魅力を体感してほしい。
抜け感のあるチュールスカートをレイヤード。
バレエに造詣が深く、繊細なチュール使いが光るドラマチックな服作りで人気を集める〈チカ キサダ〉。チュールスカートをレイヤードしたパンツは、クロップドの丈や繋ぎ目があえて外にデザインされたサイドシームで、シアーな質感を肩肘はらず着こなせる抜け感が魅力。取り外し可能なので別のボトムスと合わせても。
膝下の大胆なシアー切り替えがセンシュアル。
“男性も憧れる女性服”をコンセプトに掲げる〈サトル ササキ〉。マスキュリンなシルエットを透け感のある薄手のシフォン素材で仕上げたパンツは、膝下から大胆に施したシアーな切り替えが極めてセンシュアル。シアー部分にラインデザインや濃淡をつけることで、よりモード顔に。
左・トップス44,000円※参考価格(ガニー customerservice@ganni.com/)/その他スタイリスト私物
※参考『ココ・シャネルの言葉』山口路子著(だいわ文庫)