おいしいコーヒーは淹れ方にあり。ドリップとサイフォン、 どちらにしますか?
ゆっくりと時間をかけて落とすドリップと、コーヒー豆をお湯に浸して煮出すサイフォン。
味わいの違いを知れば、喫茶店選びのヒントになる。
喫茶ROSTRO(富ヶ谷)、理想の一杯を追求し、 淹れ方を自在に操る店。
食のプロ専門のコーヒー焙煎工房や機器の輸入販売、修理などを行ってきた〈ROSTRO〉の旗艦店は"メニューのないコーヒー専門店"。お客さんの理想に合わせてオーダーメイドし、認められた抽出技師がブレンドや抽出方法を駆使して一杯ずつ真剣勝負で提供する異色のスタイルだ。
「注文を聞くときは、理想の味わいを伺います。その中で酸味が好きか、苦いのが好きか、香りはナッツ系か柑橘系かフローラル系か……など詳細に。酸味が苦手な人にも、『イチゴやみかんは好きですか?』と訊ねてみると、本当は酸味が好きな場合も。その都度、使う豆や調合、抽出方法などを考えて、とにかく真剣勝負。お客さんにワクワクしてもらい、期待を超えたいから、一杯ごとに本気です。好きなことを夢中になって思い切りやる。それがいずれ、日本のコーヒー業界の道標になればいいなと思っています」と、代表で焙煎士の清水慶一さん。
もちろん、道具はドリッパーもサイフォンも使用。その違いとは?
「サイフォンはドリップよりも湯温が高く煮込むのに近いので、強めな口当たりと味わいになります。うちではドリップの場合ペーパーを使っていますが、こちらは柔らかい味に。フィルターを二重にすれば、より透き通った味わいになります。ときには、強いコクを残しつつソフトな口当たりにするためにサイフォンで淹れたものをドリップで濾過します。味への追求にルールなし。出したい味を想像していろんな方法で淹れています。方程式のような決まりはありません。当店のスタッフによっても全然違うアプローチですね」
注文するときに、「サイフォンで」「ハンドドリップで」とお願いすることも可能。自分が今どんな味を求めているのか、じっくりと考えながらオーダーしてみよう。
Drip{ ドリップ式コーヒー }
お湯を注ぐスピードや量が計算し尽くされた一滴入魂の一杯。
家庭でもなじみのあるドリップ式は、お湯をコーヒーの粉に注ぎ、フィルターを通して抽出する方法。透過法とも呼ばれている。特にハンドドリップの場合は、フィルターに入れたコーヒーの粉のどの部分にお湯をあて、どんなスピードでどんな量を注いでいくかは、すべてマスター次第。淹れる人の腕が如実に影響する。
また、フィルターの材質・厚さなどで落ちるスピードに違いが出るため、道具選びも肝になる。フランネルで作ったフィルターを使うネルドリップ、紙のフィルターを使うペーパードリップの二つが主流だ。ネルは紙よりも目が粗いものの、起毛した布に粒子が残るので舌触りがなめらかに。使い込むうちにコーヒーの油がなじみ、コクのある味になってくるという。一方ペーパーの場合は油を通さないから、すっきりとした味わいに。ネルドリップと違いドリッパーを使うため、その形によっても出来上がりが変わる。
{ ドリップでの淹れ方 }
Siphon{ サイフォン式コーヒー }
コーヒーの個性を抽出する過程を見るのも楽しい、日本ならではの淹れ方。
ガラス製の器具を使い、蒸気圧を利用して淹れるコーヒーのこと。浸漬式。19世紀にヨーロッパで発明された説が濃厚だが、現在使われているものは1925年に河野彬さんが完成させた「河野式茶琲サイフォン」がベース。
サイフォン式は作業全体が2~3分で終わり、スピーディーで見応えたっぷり。まずは風船型のフラスコでお湯を温め、沸騰し始めたところに漏斗を挿すと、蒸気圧によってお湯が押し上げられる。そこにコーヒーの粉を入れ、よく浸す。このとき竹べらなどを使って撹拌するが、よく混ぜたり、あまり手を加えなかったりと、この工程にお店の個性が出る。火から外していたフラスコの内部が冷えると、漏斗に装着したフィルターを通り、コーヒーが抽出される。清水さん曰く、煮出している状態に近いため、力強い印象の仕上がりに。また、豆それぞれのキャラクターも出やすいという。