ハナコラボSDGsレポート 最小限を極め、可能性を最大限に。執筆家・四角大輔『超ミニマル主義』インタビュー

SUSTAINABLE 2023.04.14

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。今回は、編集者として活躍する藤田華子さんが、昨年9月に発売され、たちまち6刷になった書籍『超ミニマル主義』の作者・四角大輔さんに話を伺いました。

働き方を考えることは、自分を取り戻しにいくベース

四角大輔(よすみ・だいすけ)/執筆家、森の生活者 、Greenpeace Japan & 環境省アンバサダー。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録した後、ニュージーランドに移住。湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない働き方を構築。第一子誕生を受けてミニマル仕事術をさらに極め、週3日は午前中だけ働く、育児のための超時短ワークスタイルを実践中。
四角大輔(よすみ・だいすけ)/執筆家、森の生活者 、Greenpeace Japan & 環境省アンバサダー。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録した後、ニュージーランドに移住。湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない働き方を構築。第一子誕生を受けてミニマル仕事術をさらに極め、週3日は午前中だけ働く、育児のための超時短ワークスタイルを実践中。

ーー四角さんが大切にしていることのひとつに“手放す”というキーワードがあると思います。旅、登山などを通してそれを発信されてきましたが、今回はその上で、ビジネスやライフスタイルをテーマにされています。

「日本においてその人らしさを阻害しているのは何かと考えたときに、仕事だと思ったんですよ。日本人は世界で一番労働時間が長い。家族や大切な人との時間、自分だけの時間、お金につながらないけど大好きなことがあっても、この国では仕事が優先されるシーンが多すぎるなと」

約3年間、他の仕事を手放してこの本の執筆だけに専念したそう。『超ミニマル主義』を実現するための、具体的な7つのステップと72のメソッドが書かれている。
約3年間、他の仕事を手放してこの本の執筆だけに専念したそう。『超ミニマル主義』を実現するための、具体的な7つのステップと72のメソッドが書かれている。

ーー世の中は変わってきていますが、たしかにまだそういう風潮がありますね。

「どれだけ労働時間を短くできるかーそこに踏み込まないと、10年かけて発信してきた『自分を取り戻して欲しい』『自分の人生を自分でデザインして欲しい』というメッセージは完結しないと思ったんです」

▼超ミニマル主義を考えるにあたって、大切な8カ条。
四角さん自身が日頃から心がけているアクション(本からの抜粋)
1.最も⼤切なことに集中するために、他のすべてを⼿放す
2.⾝軽さ、⾃由度の⾼さ、遊び⼼が、潜在能⼒を最⼤化する
3.最短時間で最⼤効果、最⼩労⼒で最⼤パフォーマンスを
4.仕事を愛し、楽しんで働くことで最⾼のアウトプットを
5.心を軽くするために、体の負担と環境負荷を最⼩化する
6.上質な成果を出し続け、持続的に働くために暮らしを整える
7.時間に極端なメリハリをつけて初めて、⼈⽣は豊かになる
8.仕事は究極の遊びであり、働き⽅は⽣き⽅である

ーー本書はビジネス書でもあり、本当に大切なものを見つけるための具体的な方法(たとえば「カバンを軽くする」など)が書かれているので、暮らしの本でもありますよね。私は72のメソッドを1日1つずつ実践してみようと思いますが、おすすめの読み方はありますか?

「1日1つ実践したら2カ月半ほどで完了しますね。そうすると、わずか2カ月半で人生を変えられると言い切れます。働き方と仕事への向き合い方、そして今までどう頑張っても成果を出せなかったという方も、間違いなく人生が変わるはずです」

ーーまだ実践の途中段階なのですが、ひとつずつのアクションの背景を細胞レベルで理解し、実践することで、いつの間にか自分と深く向き合っているような感覚があります。

「これは別名『彫刻本』と呼ばれているんです。72のメソッドを実践することで、自分というオンリーワンの作品を削り出せます。それはつまり、本来の自分に立ち返り、本当に自分がやりたかったことや大好きだったことを実現したり、仕事にすること。そうやって自分の内なる声を聞けるようになると、自分を大切にできるようになる。すると、誰もが自然に、自分にとって大切な人を本気で大事にしようとするんです。人は一人で生きていけないですから」

メソッドの一つ「仕事もプライベートもデジタルに統一」
メソッドの一つ「仕事もプライベートもデジタルに統一」

ーー自分と向き合うこと=対自分のように思えますが、まわりに目を向ける第一歩なんですね。

「あからさまには言っていませんが、読み進めるうちに大切な人の存在をジュワッと感じていただけたらと思っています。自分を大切にすること、そして本当に大切にしたいと思う人を大切にすることは地続きです。これができたら、自動的に所属しているコミュニティを大切にしようとも思うし、広げると自分が暮らす日本をもっといい国にしたいという気持ちが湧いてくるはずです」

ーーたしかに極端な話ですが、突然戦争が始まったら、家族や仲間と笑顔で食卓を囲めなくなります。

「国が戦争を始めたり、政治が悪い方向に進んだら、守りきれない。だから投票に行こう、国のために何かしようと。そして、暮らす国が健全になったらOKかというとそうではありません。このまま気候変動が続いてしまうと、暮らしも、我が子の将来も危ぶまれます。『じゃあ平和や環境のために行動しなくては』とハッとするわけです。そういう感情に気付くためにも、まずは本来の自分を削り出してもらいたいんです」

ーー自分を見つめ直すのは、胆力を必要とすることです。ひとりだと辛いですが、この本は、四角さんが伴走してくれるような本ですよね。

「自分を彫刻する作業って、孤独なんですよ。僕の『自分彫刻』のルーツは小学校の低学年くらいの時。その頃から、今生きていて一番気持ちいいこと、楽しいことはなんだろうと常に自問自答する癖があって。当時は、釣りで魚がかかった瞬間や、野球で、バットの芯でボールを捉えた瞬間が何よりも気持ちいい。流行とか同調圧力、社会重圧はどうでもよくて、自分にとってこれ以上に感動できることはないと考えたんです。自分を削りだすという作業の原点です」

ーーお話を伺っていて思ったのですが、人が醸し出すオーラというものは、自分を削り出した先に浮かび上がってくるものなのかもしれませんね。

「僕がレコード会社にいたときにこだわっていたのは、削っていくプロデュースです。アーティストになるための道のりは決して平坦ではなく、傷ついたり、自問自答したりする連続です。そのなかで自分を信じ、諦めずに続けることって、まさしく自分と向き合う削り出し作業なんですよね。そして僕が削り出しの仕上げを手伝うことで、いっそうオーラを放つんです。プロデュースって足すイメージがあるけれど、実際は逆なんです」

「人は全員、役割を持ったパズルのピース」と語る四角さん
「人は全員、役割を持ったパズルのピース」と語る四角さん

ーーこの本を通して、どんな社会が実現したらいいなと思いますか?

「夢物語かもしれませんが、理想は地球上の全員が『自分彫刻』を完了させることです。それが叶えば、いま僕らが抱えている社会問題は一気に解消されると思います。背景を話すと、僕は人はそれぞれ、役割を持ったパズルのピースだと考えています。全員の削り出しが成功していくと、人類という壮大な一つのパズルが完成するんですよ。一人でも本来の姿でなくなると、パズルは完成しない。自分を取り戻すとか、削り出すとか、自分を大事にすることこそが、社会貢献の第一歩です。それをしないまま社会活動をしたり、ボランティアをやっても決して長続きしません。『私はこんなに頑張っているのに!』とか思ってしまったり…」

ーーなるほど。私はこの本を読んで、“子ども心”に立ち返る感覚に気付きました。裸足で公園を歩いたり、絵本を読むなどして、こういうものが好きだった!という感動を取り戻しています。

「実は今年、続編を発売するんですが、子ども心、遊び心は、引き続きキーワードになります。遊び心は内側から湧いてくるんですよ。僕は、人から誘われていろんな遊びをしたけれど、山を歩き続けるとか、美しい野生魚を追いかけるほうが断然楽しかった。そういった「これさえあれば自分は大丈夫」という足るを知る手応えこそが、何かを手放す恐怖感をなくしていくための鍵なんです」

ーーキーワードは「彫刻」ということで、引き続きせっせと削っていきたいと思います。

「ひとりでも多くの方に、余計なモノ・コトを削って削って、本来の自分を取り戻していただきたいです。削った後に残るあなたこそ、もっとも素敵な自分ですからね」

■四角大輔
https://daisukeyosumi.com/

取材場所提供:〈SPBS TOYOSU〉

photo:Kaori Ouchi

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