新K-POPグループ「NewJeans」はなぜ世界に受け入れられたのか?
米ビルボードメインシングルチャート「HOT 100」に最新シングルのタイトル曲「OMG」と収録曲「Ditto」が2曲ともチャートイン。デビューから約6カ月でのチャートインは過去のK-POPアーティストで最短記録だと、多くのニュースメディアが熱狂気味に伝えている。なぜ彼女たちが世界から愛されるのか、その理由を紐解いてみたい。
HISTORY
2022年7月22日、デビュー曲「Attention」のMVを先行公開し、彗星のごとく登場。メンバーはMINJI、HANNI、DANIELLE、HAERIN、HYEINの5名からなる。現在、全員10代。これまでに1st EP『New Jeans』とシングル「OMG」をリリース(すべてADOR)。ファンの愛称はBunnies(バニーズ)。
メンバー
ディスコグラフィ
1. 音先行でリスナーの心を掴んだR&Bポップ。
最初に「Attention」を聴いた瞬間、これまでのK-POPの流れと一線を画すR&Bポップ、それも70年代、80年代ソウルの感覚を落とし込んだ、今の時代の“ティーンソウル”を実現していることに驚きました。BTS「Dynamite」の大ヒットからもわかるように、欧米の音楽リスナーは無条件に70年代ソウルやディスコが好きなんですよね。NewJeansのサウンドはそれを巧みに入れ込む一方で、例えば英国のピンクパンサレスに代表されるドラムンベースのポップミュージック的解釈も取り入れるなど、最前線の流行も敏感かつ的確に押さえています。続く「Hype boy」がTikTokを中心にバイラルとなって「Ditto」「OMG」はさらなるヒットに。ショート動画でも活きる耳に残るフレーズやフックの作り方も天才的。メンバーの声の良さもあり、一緒に歌いたくなるんですよね。
2. PDミン・ヒジンによるイメージ作りの巧みさ。
総括プロデューサー(PD)を務めるのは、HYBE傘下レーベルADORの代表取締役ミン・ヒジン。彼女はこれまでも少女時代など多くのアーティストを手がけてきました。彼女が打ち出す鮮烈なイメージやビジュアルもNewJeansが一目置かれている理由です。ファッションの世界でもY2Kリバイバルが起きていますが、NewJeansのクリエイティブにもその感覚がある。よく90年代ストリートカルチャーとの親和性が指摘されますが、「Ditto」のMVで謎の6番目の女子学生を演じたパク・ジフ主演の、1994年の女子中学生の心情を描いた韓国映画『はちどり』の存在や、そのルーツ的作品でもある2001年の映画『子猫をお願い』の影響も色濃い。ミン・ヒジンが、思春期を過ごしていた当時へのノスタルジーをさまざまなリファレンスを通して昇華させているのです。
3. 10代のメンバーたちが持つポテンシャルの高さ。
前述したように、プロデューサー、ミン・ヒジンが過ごした“10代の語り直し”をNewJeansの中に見つけることができます。これはすべての10代の、そして繊細な10代を経験して大人になっていったすべての人たちをエンパワーするものであり、時代や世代を超えた普遍性のある作品として捉えることができると思います。その鍵となっているのは、今や各メンバーがハイファッションの世界やグローバル企業でもアイコンとなっているように手の届かない存在でありながらも、すぐ隣にいるようなリアルさを感じさせる彼女たちの見事な表現力でしょう。もちろん歌やダンスの純粋なスキルも高く、完成度も高いのですが、それに加えてパフォーマンス中にコロコロ変わる表情の豊かさ、そこで生まれる親密な空気感がNewJeans最大の魅力なのだと思います。