話題の作品がふたたび。
黒田育世振付の『波と暮らして』 稽古場トーク。 LEARN 2023.03.20

日本を代表するコンテンポラリーダンサー・黒田育世さん。美しく躍動的なだけでなく、切なさや熱情、ときに痛々しいほどの激しさを交えた身体表現は、観客の心を直接揺さぶるようなエネルギーに満ちている。その黒田さんの過去の名作が、新たな才能を得て再演に。波と画家の男の出会いと別れを描いた短編小説に着想を得た『波と暮らして』は、元宝塚歌劇団の柚希礼音さんが〝ある男〟を、〝波〟を黒田作品経験者であるダンサーの加賀谷香さんが踊る。

「ひとつひとつの動きすべてにストーリーや想いがある」

黒田育世(以下、黒田) 昨日、作品のヤマ場のシーンを稽古したんですが…すごく幸せでした。美しいフォルムで踊れる方はたくさんいらっしゃいますが、ちえさん(柚希さんの愛称)の踊りにすごく奥行きを感じたんです。作品の背景と、それ以上に、数々の舞台で責任を背負ってきた方の精神力とか筋力というのかな。それはなかなか巡り合えない美しさなので、本当に感動しました。

柚希礼音(以下、柚希) 私自身も、自分の人生の中でも、なかなかないすごいことに挑戦している気がしているんですよ。コンテンポラリーダンスは過去に少しだけやったことがあったんですが、まだまだ体の使い方と心の流れとがフィットしていかないことも多いんですよね。黒田さんは、それがなぜうまくいかないのかまで追求して、丁寧に教えてくださる。毎日発見や学びがあるし、やればやるほど、これはすごい作品だなって感じることも多いです。

加賀谷香(以下、加賀谷) 育世さんは純粋にダンスを踊ることを大事にしてくださる方なんですよね。そういう環境で一緒にやれて嬉しいです。

黒田 私もカオさん(加賀谷さんの愛称)とやらせていただくと、自分の作品ながら教わることが多いんですよ。準備魔の私が去年の夏から何度も何度も作品を反芻しながら考えてきたことの、その先の回答を、いつも見せてくださるんですよ。

加賀谷 全然無自覚(笑)。

黒田 そう。ふたりとも無自覚にできているからすごいんですよね。

柚希 今回の私の役は、これまで男性のダンサーが踊ってきたじゃないですか。そこはどうしたって男役の踊りとは違うから、カオさんがやりづらいんじゃないかと心配で…。

加賀谷 全然。1ミリも感じてないですよ。それより私、ちえさんと踊って驚いたのが、あまりの壁のなさ。ダンサー同士でも、とくにデュオ作品の場合、最初は相手と互いを探り合うところから始まるんだけど、それが全然なくて、最初から開いてきてくれる。みんながちえさんを慕う理由はこれかって思ったな。

柚希 振り付けで何度もお世話になったカオさんが相手だからだと思います。あと、黒田さんの振り付けって、ひとつひとつの動きすべてにストーリーや想いがあるじゃないですか。普段、歌や芝居や映像や字幕とかに頼っているものを、体の動きひとつで表現するってすごいです。

黒田 (笑)。あんなしっちゃかめっちゃかに見える振り付けだけど、じつはメッセージまみれなんですよね。

柚希 だからなんとなくで踊っていると、すぐに気づかれちゃう。

加賀谷 でもそこがちゃんと入れば、あとは向かえばいいだけだから。

黒田 『波と暮らして』はすごく物語性豊かで、見ると愛し合うことを思い出したり憧れたりできる作品なので、映画を見るような気分で楽しんでいただけたらと思います。

加賀谷 香(左)かがや・かおり/コンテンポラリーダンサー。加賀谷香Dance-SHAN主宰。振付家としても活躍しており、近作に、ミュージカル『FACTORY GIRLS』など。
柚希礼音(中)ゆずき・れおん/ダンスの実力で宝塚歌劇団入団当初から注目され、2009年より6年にわたり星組トップスターとして活躍。近作に舞台『COLOR』などがある。
黒田育世(右)くろだ・いくよ/振付家、ダンサー。自ら主宰するBATIKの公演のほか、国内外で活躍。振付家としてNODA・MAPなどの演劇作品にも参加している。
加賀谷 香(左)かがや・かおり/コンテンポラリーダンサー。加賀谷香Dance-SHAN主宰。振付家としても活躍しており、近作に、ミュージカル『FACTORY GIRLS』など。
柚希礼音(中)ゆずき・れおん/ダンスの実力で宝塚歌劇団入団当初から注目され、2009年より6年にわたり星組トップスターとして活躍。近作に舞台『COLOR』などがある。
黒田育世(右)くろだ・いくよ/振付家、ダンサー。自ら主宰するBATIKの公演のほか、国内外で活躍。振付家としてNODA・MAPなどの演劇作品にも参加している。

黒田育世 再演譚 vol.2 『波と暮らして』/『ラストパイ』
2本同時上演

波と暮らして

3月22日(水)~26日(日)、Bunkamuraシアターコクーンにて。
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
TEL:03-3477-9999(Bunkamuraチケットセンター、10:00~19:00) 
料金:S席9,500円、A席7,000円、コクーンシート5,500円 
出演:『波と暮らして』柚希礼音、加賀谷香 『ラストパイ』織山尚大(少年忍者/ジャニーズJr.) 
大阪公演あり。

柚希さん衣装:Tシャツ10,670円、オールインワン46,200円(共にADIDAS BY STELLA McCARTNEY|アディダスお客様窓口 0570-033-033)photo : Mariko Tosa styling : Noriko Goto (no.23) hair & make : Makiko Hayashi text : Lisa Mochizuki

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