カルチャー発ソーシャル行 Meet #4/
東京2020オリンピック SIDE:A+シン・ウルトラマン CULTURE 2023.03.02

映画、小説、音楽、ドキュメンタリー…あらゆるカルチャーにはその時代の空気や変化が反映されています。そんな「社会の写し鏡」ともいえる、秀逸な作品を編集部Sが紹介。

本人が手を動かして作ったものに宿る、圧倒的説得力と強度。

「この映画、私が観なくちゃ誰が観るんだ」という妙な使命感にとらわれて、映画館に足を運ぶことがある。『東京2020オリンピック SIDE:A』もそうだった。で、結論。素晴らしい作品だった。関係者は試写を見てあ然としたのではないか、「東京五輪のハイライトー!」的PV要素がゼロに等しいのだ。代わりに描かれるのはアスリートとその家族、いわば「個人」の物語。例えば、開催延期で自身の出産が重なり出場をあきらめた日本選手と、子供と親は短期間でも引き離されるべきではない、と家族連れで参加したカナダの選手。五輪はさまざまな価値観や文化が混じり合う場でもある。藤井風の主題歌も超名曲だが、後編の『SIDE:B』主題歌は河瀨直美監督自身の作詞・作曲によるもの。急遽の対応だったのかもしれないが、本人が手を動かして作ったものに宿る圧倒的な説得力がズシンと響いた。

『東京2020オリンピック SIDE:A』 総監督・河瀨直美。750日5,000時間の記録が描く「事実」と「真実」。アスリートを描いたSIDE:Aと運営や組織を描いたSIDE:Bの2部構成。公式サイト

本人のDIYこそ最強、という意味では映画『シン・ウルトラマン』の庵野秀明も。監督を樋口真嗣にまかせ、自身は企画・脚本・編集を担当しているのだが、エンドクレジットを見ると「モーションアクションアクター」から「ティザーポスター・チラシ表面デザイン」「総宣伝監修」まで、いたるところに庵野氏の名が(メジャー作を自主映画のように作るのは痛快だ)。ベテランになっても自分の手を動かしてものを創る人には、敬意を抱かずにはいられない。

『シン・ウルトラマン』 日本を代表するキャラクター、ウルトラマンを『シン・ゴジラ』の製作陣が描く。斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊などが出演。主題歌は米津玄師の「M八七」。公式サイト

[今月の担当]編集部S/ドキュメンタリー好き。メキシコの無認可救急車を描いた『ミッドナイト・ファミリー』を観て、自分のいる世界が当たり前ではないことを痛感。Twitter:@bakatono72

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