体を通せばわかる絶妙バランス。 スタイリスト木村真紀による「ソロソロ、イイモノ。」Theme #8/シルエット優先の印象コート
似合うものは決まってきたし、あふれるほど欲しいわけじゃない。心地がいい、具合がいい、気分がいい、品がいい。いろんな意味でバランスの「イイモノ」に、少しの特別を添えて。
ヨーロッパをはじめ、これまで20カ国ほどを旅してきたのですが、意外とまだ訪れたことがないのがお隣の韓国。ファッション、ビューティ、グルメと、大好きなコンテンツがたくさんある国で、ソウルや釜山には友達が住んでいることもあり、常に気になっている目的地の一つです。大学時代も友達と一緒に韓国旅行をしようという話になりバイト代を貯めていたのですが、その前にやってきたのが冬のセール。当時大好きだった〈マーク ジェイコブス〉のコートが半額になるというハッピーニュースに欲望が抑えきれず、韓国旅行がコートに大変身。旅行を共にする予定だった友達にはいまだに「コートに負けた、韓国旅行」と言われ続けています(笑)。
ほかのアイテムであれば韓国旅行に軍配が上がっていたのですが、数あるファッションアイテムの中でもコートは特別な存在。大物アイテムゆえの存在感はもちろん、街中で歩く人を素敵だなと思うキーアイテムでもあります。では惹かれる好印象コートとは?と、ソロソロ、イイモノ視点で考えてみると、色や柄が目を引く主役コートもさることながら、ベーシックカラーなのにシルエットが印象的で記憶に残るコートが候補に浮上。トレンドであるオーバーサイズやパワーショルダーもインパクトはあるのですが、最適解はハンガーにかかっていると普通に見えるけれど、実際に着るとボディラインがキレイだったり、腕のデザインが構築的だったり、ベルトでシルエットが自在に楽しめたり、と細部が積み重なって印象的なシルエットを作っているコート。ここがポイントという絶対解がない上、袖を通すステップが必要ですが、時に懸命に着飾ったコートの中よりも長い時間人目に触れ、印象を左右する重要アイテム。今まで運命的なコートに出会えてこなかった人にこそ勧めたい、シルエットバランスが絶妙な印象コートです。
大きな一枚布をブラウズして楽しむ新感覚コート。
襟元をたくし上げて頭にかぶる着方からデザインされたという一枚仕立てのロングローブコートは、大きな布をベルトでブラウズしたような新感覚コート。ウエスト位置の調整が可能で、高さによって変化するシルエットの違いも魅力です。留める場所でシルエットが変わる腕部分とも呼応したデザインがニクい。イエローもあり。
個性の相乗バランスで魅せるさまざまな表情。
「フロントはフラットに、バックは女性らしい曲線シルエットを意識しました」とデザイナーが語るコートは角度によって違う表情を見せる。ウール紡毛の重厚さと肩からのしなやかなドレープの柔らかさとが打ち解け合っていたり、反するようにワークなパッチポケットが配されたりと、個性の違う細部がいい距離感で完成された絶妙バランスな一着。