BARをもっと、カジュアルに。 銀座〈STARBAR〉の吉田達也さん〜児島麻理子の「TOKYO、会いに行きたいバーテンダー」〜
お酒業界での広報歴12年!児島麻理子が、実力派のバーテンダーをご紹介します。第51回目の登場は、銀座〈STARBAR(スタア・バー)〉の吉田達也さん。銀座でキャリアをスタートし、銀座で育ったサラブレッドです。
本日のバーテンダーは…吉田達也さん
吉田達也
■バーテンダー歴:11年
■生年月日:1989年2月20日
■星座:魚座
■血液型:B型
■趣味:特にないです。
「趣味ってないんですよね。岸からは「バーテンダーは生活が仕事になるよ」と聞いていたのですが、まさにそうなっているなと思います」。
さらりと出たのは銀座のレジェンドバーテンダーであり、世界的なバーテンダーの大会「IBA 世界カクテルコンクール」で優勝した経歴を持つ岸久さんのお名前。吉田さんが勤める〈STARBAR〉のオーナーです。
〈STARBAR〉からキャリアをスタートした吉田さんは、日本のオーセンティックバーの中心を生きてきたバーテンダー。勤務初月から印象的な出来事は起こります。
「実はこちらに入ったのが、2011年3月1日だったんです。10日後に震災が起きてしまって。世の中は混乱しているし、人々の気持ちも暗くなってしまっている。でも“バーは暗い時こそ、灯りをつけたほうがいい”という会話をバーテンダー同士でしたと岸から聞いたんです。それはバーの心構えとして鮮烈に覚えている経験ですね」。
側からみると銀座のサラブレットとして華々しく活躍している吉田さんですが、若くして銀座の名店で働く重責もまた感じてきました。そこを乗り越えられたのは、人との縁だと語ります。
「〈PENTHOUSE GARDEN〉の髙橋バーテンダーも同期ですし、銀座の若手たちで切磋琢磨できたのがすごくよかったですね。バーテンダーって人との縁に支えられているところがあって。不思議なんですが、すごく辛い時とかに常連のお客さんが「最近がんばってるね」とぽんと言ってくれたりするんです。そんなことが積み重なって今までやってこれてるんですよね」。
吉田さんには縁から生まれたカクテルも。某ジンメーカーの大会で優秀な成績を収め、副賞として行ったロンドンで飲んだカクテルにインスピレーションをもらって生み出したカクテルがありました。気に入っていたけれど名前がないままでいたところ、ロンドンで一緒にそのバーを訪れたバーテンダーがある日突然〈STARBAR〉に現れます。
「あの時の体験から生まれたカクテルがあるんだよ、と出したんです。ただ名前はまだ無くてと話したら、じゃあ今つけようと。彼は自分と歩いたハイドパークの景色をカクテルから思い浮かべてくれて「ハイドパークカクテルにしよう」となったんです。オリジナルカクテルは普段はひとりで作ることが多いですが、これは人との縁から作られたカクテルということで印象的ですね」。
そうしたオリジナルカクテルがある一方で、吉田さんが大切にしているのは、銀座のオーセンティックバーで働くからこそのクラシックカクテルです。どんなバーでも頼めるけれど、それぞれに味わいが違うこともあるクラシックカクテル。その差を楽しむことこそがバーに通うひとつの楽しみであると語ります。
「カクテルって自分で作っても、日によって少しだけ味の違いを感じることもあるんです。なんで違うんだろう、気温かな、自分の体調かなとか、そういうことを考えながら、自分のカクテルを作っています。野球選手のイチローさんが以前、自分に才能があるとすれば、毎日同じことを飽きずに続けられる才能だと思うと語っていたんです。比べるのはおこがましいですが、自分も続けていくことで、カクテルを追求していきたいですね」。
続けることこそ才能。バー訪問をこれからもぜひみなさんに続けて楽しんでもらえますように。