第14回 写真家・田尾沙織の『Step and a Step』500gで生まれた赤ちゃん 【田尾沙織のStep and a Step・14】大切にしたい絵本を読む時間
写真家・田尾沙織さんに、500gで生まれて、軽度の知的障害とADHDだと言われている息子、奏ちゃんの子育てと日常について綴っていただくこの連載。
2人の日常を、田尾さんによる色鮮やかな写真と共にお届けします。
毎日が目まぐるしくて、子育てがこんなにも大変だとは、想像以上でした。
正直、仕事よりも大変。何よりも大変。
テレビやメディアで植え付けられた潜在意識なのか、子育てと言えば、穏やかな午後、子どもと一緒に本を読んでいて、子どもはにこにこ絵本を見て指さしたり微笑んだりしている…….。
そんな風景を想像していたのに。世間にあふれる穏やかな母子のイメージは、一体誰の幻想なんだろう。
私は本が好きなので、子供とゆっくり絵本を読んだりできる時間を楽しみにしていましたし、そうなると思っていました。
でも、長いNICU・GCUの退院後、奏ちゃんの首も座り、手先も器用になってきた頃、絵本を読み聞かせると、絵本を破る破る……もう止まらない。特に奏ちゃんが一番気に入っていた「しろくまちゃんのほっとけーき」のホットケーキを焼く描写のページはちぎって食べたように細かく切り刻まれてボロボロ ……。
こんな状態いつまで続くんだろう……やっぱりちょっとうちの子は変わってるのかな、本を大切にするとかいう気持ちは芽生えないのかな……とまで思いました。
同じようなお母さんがいるのでは? と思って書きますが、急に改善する日がやってきます。
2歳だったか3歳だったか忘れてしまいましたが、ある日突然気がついたら、本は全く破らなくなりました。
何か急に目覚めたんでしょうか。
5歳になった今となっては、赤ちゃんの時に破ったボロボロの絵本を見て、
「これなんでやぶれてるの?」
と聞いてきます。自分で破ったのに(笑)。
いつまで続くんだろうと思う大変な時期も、気がつけば過ぎているものなのかもしれません。
絵本は赤ちゃんの時から毎日寝る前に読み聞かせています。
夜、お風呂から出たらもう遊んだりテレビを見たりしない。
着替えて、お水を飲んで、髪の毛を乾かして、歯磨きを済ませたら、ベッドで絵本を読みます。
赤ちゃん向けの文章が短い絵本は2冊。今はお話が長くなったので1冊。奏ちゃんと一緒に相談して決めます。
どんなに疲れていて眠たい日でも、どうしても読みたいと言うので、話し合って短いお話を選びます。
絵本を読み終わったら電気を消しておやすみなさい。
この流れがもう習慣になったので、ベッドに入ってから遊んだりベッドを抜け出したりしたことがありません。
歯を磨き終わったら
「きょうは なんの ほんに しようかな~」
とか言って自分でスタンバイします。
旅行先にも絵本を1冊持っていれば、読み終わった後に安心するのかぐっすりです。
本を読んでいる最中に「これはなに? なんで? あ、みて! くるまがいた~」などなど話しかけてくるので、
そういう時は「開いているページをママが読み終わるまでは話しかけちゃいけない」ということを教えています。
そうすると理解して、そのページが終わるのを待ってから、いろいろ話しかけてくれます。
「順番を待つ練習」になるといいなと思っています。
あとは、読み終わった後に「ぐりとぐらが作ったものなんだったっけ?」などと質問をしてみて、理解力を確かめてみたりもしています。最近は題名くらいのひらがなが読める様になってきました。
絵本は成長のバロメーター。いつまでも本を読む習慣は大切にしたいと思います。