「 イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき 」 〈イッタラ〉、日本初の大規模巡回展が開催中 。知っておくべき名デザイナーとは?
創立140周年を記念し、昨年フィンランド・デザイン・ミュージアムで開催されたイッタラ展。それを再構築した「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」がBunkamura ザ・ミュージアムで開催中だ(11月10日まで)。
生活に溶け込むノルディックデザインを表象する〈イッタラ〉のプロダクトの数々は、日本でもたくさんのファンを持つ。
本展ではアルヴァ・アアルトをはじめ、〈イッタラ〉を代表する作品を手がけた名デザイナーたちの存在にも焦点を当てている。今回、知っておいてほしい、というデザイナーについて、〈イッタラ〉を愛する人たちに話を聞いた。〈イッタラ〉のガラスの魅力やフィンランドのライフスタイルについて知る参考になるはず。器をひとつ、アートピースをひとつ、持ってみたい。
〈 イッタラ 〉とは?
フィンランド南部にあるイッタラ村でガラス工場を1881年に創立。アルヴァ&アイノ・アアルト夫妻やカイ・フランクら優れたデザイナーの活躍によりシンプルでモダン、かつ機能的なガラス製品は国際的な評価を獲得していく。
〈イッタラ〉は1988年に〈ヌータヤルヴィ〉と、その後〈アラビア〉などと統合。現在は、フィスカースグループの一員となり、さらに幅広いプロダクト制作を進めている。
〈イッタラ〉を愛する人たち。
1人目...大谷優依(インテリアスタイリスト)
おおたに・ゆい/2012年に独立。フィンエアーの機内で出会ったウルティマツーレのグラスに一目惚れ。勢いで一式そろえたのもフィンランド旅行の大事な思い出。
Otani's Comment 「日本の民藝にも通じるデザイン」
誰がデザインしたものかと意識したことはなかったのですが、家で日常的に使っている「ティーマ」と「カルティオ」は、どちらもカイ・フランクのデザイン。とてもシンプルな形なのですが、その触り心地や色合いは〈イッタラ〉にしかないもの。
グラスは口当たりがよく、程よい重みがあります。そしてしっかりとしているので、とても丈夫。うちはグラスを散々割ってきましたが「カルティオ」は一個も割れてない。一方「ティーマ」はレンジも食洗機も使えるし、とても丈夫なのに可愛いなんて最高だなと思います。
ただオシャレなだけではなくて、北欧のデザインは日常の生活に基づいているなと思います。カイ・フランクは幼少期から日本に興味があり、日本を訪れた際には、北大路魯山人や河井寛次郎、濱田庄司などと交流があったそうです。
私は日本の民藝の器が好きなので、カイ・フランクに惹かれる理由として、ひとつ納得した気がしました。
2人目...斎藤志乃(インテリアデザイナー)
さいとう・しの/Studio101主宰。展示期間中、館内のミュージアムショップ〈NADiff modern〉にて「北欧かわいいものみつけた」展を開催。オリジナルグッズも。
Saito's Comment 「「i」のロゴも彼の手によるもの」
〈イッタラ〉のプロダクトは豊かな自然と共に生きようとするフィンランドの方々の暮らしぶりそのもの。光、植物、森、湖、氷……すべてが表現されているところに感嘆します。そして機能的で丈夫なところも。普段使いできてかつ飽きがこない。美しさと機能性、その両方を持っているところが素晴らしい。
ティモ・サルパネヴァは、そんなユニバーサルな〈イッタラ〉の魅力を伝えたひとり。〈イッタラ〉のシンボルである「i」のロゴをデザインしたのも彼です。
彼の生み出した作品でとくに好きなものは「i-ライン」シリーズ。直線も曲線も優しさと潔さを持っていて、美しい。北欧の光は表情豊かです。
朝靄のオレンジから、夕時の暮れなずむパープル、夜の深いブルー……、北欧の光を閉じ込めたような色合いを表現しているところがたまりません。
シンプルなのに、どこか温かみがありユーモラスなデザインを手がけるところも魅力的です。
3人目...山野・アンダーソン・陽子(ガラス作家)
やまの・アンダーソン・ようこ/現在、スウェーデン・グスタフスベリにアトリエを構える。著書に長島有里枝との共著『ははとははの往復書簡』(晶文社)がある。
Yamano's Comment 「自由な色使いと遊び心に感服する」
私が最初に手にした〈イッタラ〉の製品は透明なアアルトの「サヴォイベース」で、それに代表されるように、イッタラにあるガラス工場は量産された型吹きのイメージが強かったです。実際に、私が訪れた際にも同じ印象を受けました。
一方、〈ヌータヤルヴィ〉の工場はたくさんの色ガラスが作られている、カラフルな印象を受けました。そこで初めてオイバ・トイッカに会いました。オイバはガラスで遊ぶ人、色で遊ぶ人のイメージがあります。
初めて彼の作品を展覧会で見た時、たっぷりと含んだガラスに閉じ込められそうで閉じ込められていない光が多面的でとても美しく感じられました。彼のガラスというマテリアルへの理解には共感できて、たくさんの影響をもらっていると感じます。
彼の「バード」シリーズは、量産されたアートであり、彼の遊び心と大衆へのアプローチのバランスが面白い作品だと思います。自由で冒険的で羨ましいな、とも思います」