海外に気軽に行けないいまだからこそ。 青木由香の新刊『 暮らしの図鑑 台湾の日々 』から、台湾を感じる。
29歳での初来台をきっかけに台湾へ移住し、現在はコーディネーター業や執筆活動、ラジオパーソナリティ等として幅広く活躍する青木由香さん。2005年には台北市にアートギャラリー〈你好我好〉をオープンし、日本と台湾の架け橋として相互の良さを色々な方面から発信し続けている。これまで数々の台湾本を執筆してきた青木さんだが、最新刊『暮らしの図鑑 台湾の日々 マネしたい生活のあれこれAtoZ×基礎知識×実践アイデア』では、いまの状況も相まって、新しい視点から台湾の暮らしについて紹介ができた、と語る。
「 台湾の暮らしの真髄に触れる図鑑 」
いつもなら「本を出しませんか?」と企画をいただいても、「いま私が書きたいのはこれなんです!」と、違うものを提案することが多いんです。でも今回は、『暮らしの図鑑』というライフスタイル本のシリーズがベースにあり、「その一冊として台湾をテーマに執筆しませんか?」とお話をいただきました。お話を受けて、コロナ禍で台湾に行くことが難しい現状が続いているので、「いま」の現地の暮らしや、旅行では触れることのない暮らしにまつわるディープな部分、普通の旅行ガイド本では載せきれない部分を拾ってA to Zで紹介できたら面白いな、と。
以前刊行した『奇怪(チーグワイ)ねー台湾』は頭の中で考えていたこと、実際に見たことのエピソードを思うまま載せていたのですが、この本は〝ためになる図鑑〟が裏テーマでもあったので、現地の人へのインタビューや綿密なリサーチなど、事実の裏付けをしっかり取りながら作りました。その中で、例えば台湾の国色を政府が公式発表していたのも初めて知りましたし、新しい発見の連続。なので面白いネタ披露大会じゃないですけど、豆知識も詰まっているので、意外に(笑)、役に立つと思います。
台湾の政治や法律、歴史についても少し触れました。ライフスタイル本なのに…と思われるかもしれませんが、「台湾楽しい! 面白い!」で終わるのではなく、「どうしてこういう暮らし方になったのか」という疑問に対して歴史が絡んでくることも多いので、台湾の真髄に迫るには書いた方がいいと判断したんです。でも深く書きすぎると専門書になってしまうので、そこの加減が難しかったですね。堅くならず、分かりやすくなるように意識したページです。
タイトルにも「マネしたい生活のあれこれ」とありますが、日本にいるままでも、台湾の暮らしの良いところを取り入れた生活は実践できます。常温の水を飲む、台所用具をステンレス製にしてみる、疲れた時は無理に自炊せず気軽な気持ちで外食する…。今回、3年以上ぶりに帰国したんですが、街中で「台湾」を目にする機会が増えたな、と感じました。例えば、台湾の食卓には欠かせない「豆干」(豆腐を脱水し、圧縮して麺状に切ったもの)という食べ物があるのですが、日本のコンビニに入ったら、バジルや柚の味を付けて真空パックにした「豆腐バー」という名前で売っていたんですよ。日本流に分かりやすく名前を変えて販売しているのは面白いなと感じましたし、旅行ができない間に食材や雑貨など暮らしのアイテムが日本の日常に浸透しているのを実感しました。
この本を通じて「あ、台湾のこの部分をもっと知りたいかも」という〝きっかけ作り〟ができるとうれしいです。専門書などは世の中にたくさんあふれているので、この本は台湾の覗き窓を開けるようなものになれば、と。以前から台湾旅行が好きな人は、この本を読んでから台湾に足を運んでみると、また違った世界が見えるかもしれないですね。
青木さんおすすめの台湾グッズ。
『 暮らしの図鑑 台湾の日々 』
いますぐマネしてみたい、心地よい台湾の暮らしにまつわるモノ・コト・人をA to Zで紹介。(翔泳社/1,980円)
青木由香
あおき・ゆか/神奈川県生まれ、台湾在住。著書『奇怪ねー台湾』(東洋出版)ほか、ラジオパーソナリティやショップ〈你好我好〉オーナーなど幅広く活動。