目立たせじゃなくなじませ上手。 スタイリスト木村真紀による「ソロソロ、イイモノ。」Theme #3/バケットハット
似合うものは決まってきたし、あふれるほど欲しいわけじゃない。心地がいい、具合がいい、気分がいい、品がいい。いろんな意味でバランスの「イイモノ」に、少しの特別を添えて。
パリでスタイリストアシスタントをしていた頃、編集者時代のスキルを活かして、お店の取材やインタビューなどにも携わっていました。ドレスコードがある華やかな場での取材が時折あったのですが、中でも記憶に残っているのが時計ブランドの主催する世界最高峰の“ホースレース”。日本ではギャンブルのイメージが強い“競馬”ですが、元々は18世紀に貴族階級のたしなみとして始まったといわれています。パリからオリエントエクスプレスさながらの高級列車に乗り向かったのは、美しいお城を借景とする歴史的なシャンティイ競馬場。選抜された名馬にベットする特別な体験も素晴らしかったのですが、個人的な見どころはなんといっても来場者たちのドレスアップです。映画『マイ・フェア・レディ』を彷彿とさせる華やかなハットの数々は、この日のためにオーダーしたという気合いの入れよう。ドレスコードにハットと記された舞台が初だった私はレースをあしらったブルーのストローハットで挑みました。派手さはないけれど自分的名品として今もクローゼットを飾っています。
数々のお店でさまざまな帽子を試したおかげで気に入ったものに出会った半面、改めて気付いたのが帽子が似合わないという事実(笑)。麦わら帽子やニット帽という季節的な帽子は持っているのですが、もっと日常的に楽しめる帽子はないものか、と探しているうちにしっくりきたのが昨今のトレンドでもある“バケットハット”です。アクセントとして取り入れがちなハットですが、意識したのは“なじませる”ということ。頭を覆う部分が深く、ツバが下を向いているので、比較的どんな頭にも顔にも寄り添ってくれます。夏はツバが日差しから守ってくれるので、UVケアにも効果的。素材やカラーでさまざまなムードを楽しめるのも魅力なので、夏は透け感や軽い素材のものを楽しんでみてはいかがでしょう。
テクスチャーで描く太陽と波模様が洒落た夏を演出。
エンボス加工で描いた太陽と波が夏ムードを盛り上げてくれるバケットハット。上質なコットンを100%使用することで上品で、カジュアルになりがちなパイル地も大人っぽい印象に。エンボスやパイル地に呼応するようなテクスチャーのあるトップスを同系色で合わせて、トレンド感満載で楽しんでほしい。
考え抜かれたシルエットが生む印象的な横顔。
ガラスの花瓶から透ける夏の日差しから着想を得た大人気モデル。顔を覆うようなブリムラインが正面からは小顔に、後ろにかけてなだらかに傾斜したブリムが横顔を美しく見せてくれます。張りがありながら、風通しが良いのも魅力。洒落感と抜け感が絶妙なブラウンなら、モードにもカジュアルにも似合います。