カフェと喫茶店には物語がある。「渋カフェ」その20 システムエンジニアからジャズ喫茶の店主に! 四谷三丁目〈喫茶茶会記〉。

LEARN 2018.03.28

Hanakoスイーツ担当が、普段訪れるカフェ&喫茶店の物語をご紹介しています。レトロなテーブル、懐かしくてかわいいメニュー。不思議と落ち着く「渋カフェ」。お茶をいただきながら、マスターやその店それぞれのストーリーに耳を傾けて。前回の表参道〈HADEN BOOKS〉はコチラ。連載トップはコチラ。20回目は元システムエンジニアが始めたジャズ喫茶〈喫茶茶会記〉。

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今回の渋カフェは四谷三丁目〈喫茶茶会記〉。駅から歩いて四、五分の路地にある看板が目印。こんな奥に喫茶店が?

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惹かれてドアを開くと、ほの暗い空間に響く心地よいジャズ。そうここは、オープン11年目を迎えるジャズ喫茶なのです。

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ドリンクは全て500円。紅茶にはクッキーが添えられて。

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マスターの福地史人さんは、もともとはプログラマーやシステムエンジニアをしながら、いくつかの有名企業でバリバリと働いていたそう。「でも、いつでも対応できるように電話を持って待機しておかなくちゃいけないから、気が休まる時間がなくて」。2時間かかる映画などは、見ることも出来なかったそう。

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ショーケースの中に、小物が思い出のようにひしめく。

「まだWi-Fiもスマホもなかった時代。ノートパソコンにPHSを挿して対応するような日々でした。そんなときの癒しが、昔から好きだったジャズ喫茶だったんです」

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窓際には特製のスピーカーが。「楕円形はグルンリッヒ社のもの。小さなスピーカーはシーメンス社。両方とも60年くらい前のドイツ製で、中音域の響きを大事にした、人の耳に心地いい音なんです」。いい音響は造形も美しい。カスタムされたオリジナルのユニットは、オーディオマニアならずとも引き込まれる佇まい。カウンターの下のターンテーブルでは、アナログ盤がくるくると回る。

明大前〈マイルス〉、渋谷〈メアリージェーン〉、中野〈コーヒージャズジニアス〉、四谷〈いーぐる〉。いろんなジャズ喫茶に通うなか、福地さんがカフェの経営自体に興味が湧いたのは、自然な流れだったそう。そんなある日、行きつけだったヴィンテージオーディオサロンの店主から、店の一角でカフェをやらないかと誘われる。「それがこの場所に以前あったお店で。最初は副業のつもりだったけど、なんとかフルでもやれそうだなって」

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函館出身の福地さん。コーヒーは「函館美鈴珈琲」の深煎り、500円。函館トラピストバタートーストとアイス400円。とろけるアイスがクセになるオリジナルメニュー。

「それで2007年に〈喫茶茶会記〉をオープンしたんです。最初はヴィンテージオーディオサロンの事務所と同居していたんですが、そこの撤退に伴い、2010年に店の奥にアートスペースを開いて。それからは、自然と出演者の仲間や音楽好きの人が集まる店になって」。今では、タップダンスの日もあれば、ライブ、朗読、演劇。様々な演目が催しされる。基準は福地さんが良いと思うもの。「こだわるわけではないけど、この空間に合うものをやれたら」

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ときには、福地さんが先輩と一緒にジャズのスタンダードを紐解くイベントを開催することも。「トークショーをしながらみんなで聴くのも楽しいですよ」。ファンにはたまらない至福の時。

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夜8時30分からはチャージがかかるバータイムに。芸術論が交わされることも。カウンターには小林秀雄の全集が並ぶ。「芸術論って、知識や歴史、ロジカルな話に終始することも多いんですが。小林秀雄は、シンプルに感じて楽しむことを書いている。そこが好きなんです。ブルースリーのように『FEEL』って(笑)」

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ジャズ喫茶の本でもすっかりレギュラーになり、定期的に出演する人たちの芸術論を集めた本も出版された〈茶会記〉。昔からカフェをやろうと思っていたわけじゃないと話す福地さん。けれど確かな求心力がないと、店は続かないはず。そういえば、システムエンジニアの世界とジャズの世界、何か共通項はあったのだろうか?

「どちらも、わりと引きこもりがちというか自分たちの世界に入っちゃうんです。そこが似てたと言えば似てたのかも」。渋カフェのマスターがたまに使う「引きこもる」という言葉。自分はいつも「引き寄せる」というワードに翻訳して話を伺っている。お客さんもマスターも、同じ世界を共有できること。カフェにとって、いちばん大事なエッセンスなのかも。

最後に今後の夢を聞いたら、「いまのクオリティで続けていくこと」。引き寄せる理由はちゃんとあるのだ。

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〈喫茶茶会記〉
イベントスペースが奥に。福地さんとお話しながら音の世界を楽しむべし。

◼︎東京都新宿区大京町2-4、1F
◼︎15:00~23:30。20:30からのバータイムは別途チャージ500円。
◼︎無休
◼︎8席 喫煙
イベントチェックは事前にこちらから。
http://gekkasha.modalbeats.com/

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