BARをもっと、カジュアルに。 青山〈IL LUPINO PRIME〉の佐久間弘一さん〜児島麻理子の「TOKYO、会いに行きたいバーテンダー」〜
お酒業界での広報歴12年!児島麻理子が、実力派のバーテンダーをご紹介します。第48回目の登場は、青山〈IL LUPINO PRIME(イル・ルピーノ・プライム)〉の佐久間弘一さん。緑に囲まれた青山の森にあるバーで、食事に合わせたカクテルを展開しています。
突然ですが、みなさんに“行きつけの森”はありますか?コロナ禍になり、私が愛犬と始めたことのひとつは、二拠点で森に暮らす知人に会いに行く、行きつけの森めぐりです。
そんな我々の東京での行きつけになりそうな森を青山に見つけました。その森の住民はバーテンダーの佐久間弘一さん。青山にできた小さな森の商業施設〈ののあおやま〉にあるレストランバーで、腕を振るっています。
「緑や空には縁があるんです。初めて働いたホテルはその名も〈山の上ホテル〉でしたし、外資のホテルを2つ経験しましたが、どちらもそのエリアでは最も高い場所にあるようなルーフトップバーでした。開放的な場所はやっぱり気持ちいいですよね」。
現在、佐久間さんが務める〈IL LUPINO PRIME〉は、ハワイ・ワイキキに店舗を構える本格イタリアン〈IL LUPINO〉のハイエンド店舗。同様の気持ちよさをもつ、ここ青山の森に2022年7月、日本の1号店をオープンしました。同店は〈ウルフギャング・ステーキハウス〉が手がけることから、この店舗でも品質の高いTボーンステーキや本格イタリアンが提供されています。
「レストランバーのいいところだと思うのですが、カウンターでは気軽に1杯と1皿を合わせて楽しんでいただけます。緑に覆われたテラス席では、ピクニックのような気分が味わえますよ」。
食事と合わせるカクテルを考える上では、佐久間さんのソムリエとしての経験が多いに役立つところです。得意とするのは、食の素材と合わせてハーブやフルーツを使うペアリングや、ワインをカクテルに使うような食への寄り添わせ方です。
「食と合わせるものとして、ワインはもちろん伝統と文化があり、無限の可能性があるのですが、カクテルは自分なりの解釈で、より自由に合わせられる魅力があります。俳優が役を演じるのと同じで、カクテルからも素が見えるようなところがあって、作り手の表現が透けてでるんですよね。お客さんに好みを伝えていただいて一緒に作るようなこともカクテルならではの楽しみだなと感じています」。
テラス席もあり、昼から空いている〈IL LUPINO PRIME〉ならではの佐久間さんの想いは、早い時間から飲む文化を広げることです。
「イタリアでは夕方の早い時間から飲むアペリティーボの習慣があります。また、フランスでは食後をカルバドスで締めたり、またイタリアでコーヒーにグラッパいれて飲んだりと、各国豊かなお酒の文化があります。香港にいたときは、若い人が特に用がなくてもバーに来たり、生活に溶け込んでいるのが印象的でした。ここでも明るい時間に合うようなカクテルも提案しながら、みなさんがカジュアルに早い時間から飲めるような文化を発信していけたらいいなと思っています」。
緑のなかのテラス席でカクテルは、新たな行きつけの森での習慣になりそうです。