優しい気持ちを作る、理想の部屋づくり。 センスのいい人に学ぶ、心地よい部屋の工夫。|〈martau. (マルト) 〉デザイナー・滝沢うめの『風の抜ける「呼吸する」家。』
物件そのものの良さだけでなく、素敵な部屋には家主の持つさまざまな“工夫”がちりばめられています。実例をお手本に、センスアップのヒントを学びます。今回は、〈martau. (マルト) 〉デザイナー・滝沢うめのさんのお部屋をご紹介します。
デザイナーの滝沢うめのさんが住むのは、「日本のガウディ」と称される建築家が設計したヴィンテージマンション。メゾネットの部屋をフルリノベーションし、個性的な箱とリンクするような雰囲気ある空間を作り上げている。
滝沢さんがこのメゾネット物件を選んだのは、「風が気持ちよく抜けるから」。実際部屋に入ると、ふたつのフロアをつなぐ階段が通り道になって、風が家じゅうをよどみなく流れているのがわかる。あちこちで観葉植物や花がそよぎ、空気がすがすがしい。「いつも自然を感じられる家にしたくて。グリーンやお花が部屋にあると、空気の巡りがよくなってリラックスできるんです」
改装は、友人である〈ZUBO D.I.Y.Laboratory〉のニイハラフクミさんに依頼した。気心の知れた仲だからこそ、思い描くイメージが伝わりやすく、多少の無理も叶えてもらえたという。例えば、くすみブルーの壁が印象的なキッチンは、水回りでは敬遠されがちな「木」をテーマに。ニイハラさんの家のベランダで“育てた”古材を利用した収納棚をはじめ、一般的にはステンレスを用いる作業台まで、木材で統一した。「昔のフランス映画に出てくるような木のキッチンが念願でした。本当は作業スペース部分も古材にしたくて相談したところ、やはり強度的に難しかった。でも、木を使うことは妥協せず、無垢のオーク材を選びました。水気はすぐに拭きとるなど少し手間はかかりますが、機能性より自分が思う美しさを大事にしました」憧れと美意識を形にしたキッチンは、床にも同じオーク材を使ったこともあり、アンティークの家具が配されたダイニングとひと続きのよう。
玄関があるフロアは床にも古材を張り、ヨーロッパからアジアまで各国の古い家具や道具、オブジェなどが、風が抜ける余白を保ちながら点在する。漆しっ喰くいの壁を場所によって白と黄色で塗り分け、空間にやわらかなリズムをつけているのもユニークだ。黄色の色味は、旅先のモロッコで見た「ターメリックで色付けした壁」をイメージソースに、何度もニイハラさんとやり取りして作り上げた。「心が動いたものをひとつずつ選び、表現している感じですね。どこか懐かしさを感じる質感、いくつもの場所や人の手を経て表れる温かみなど、人工物や新しいものにはない表情に惹かれます。歴史や背景に思いを馳せられるもの、呼吸するものと暮らすことは、創作のインスピレーションにもなるんです。これからも少しずつ理想の部屋に近づけていけたら」
【DATA & PROFILE】
【PROFILE】
たきざわ・うめの/フランスのヴィンテージリネンを使ったバッグなどを制作する〈martau.〉を主宰。家族はパートナーと猫のモーリン。Instagram:@martau._umeno
【DATA】
■人数:2人暮らし
■所在地:東京23区 駅徒歩18分
■築年数:47年
■居住歴:4年