「好き」が一番の原動力。その道のプロに聞く。 憧れのレコード入門【初級編】ポータブルレコードプレイヤーで、レコード質感に触れよう。
近年、アナログレコード人気が再熱しています。モノとして持つ喜び、自分好みの音を追求する楽しさ、手間をかけて音を聴くという行為そのものが多くの人を惹きつけているようです。アナログレコード愛好家、飯田貴志さんを先生に迎え、知識ゼロからでも始められるレコード入門、開講です。
この一台があればすぐに音が楽しめるフル自動プレイヤー。
飯田さんおすすめのポータブルプレイヤーは、〈オーディオテクニカ〉の「AT-LP60XBT GBK」。ボタンを押すだけでレコードの再生・停止ができるので初心者も扱いやすい。Bluetooth対応で、ワイヤレスヘッドホン、スピーカーに繋げばクリアな音質を楽しめる。
針を落としてみよう。
レコードは針で盤面の溝をなぞって音を再生するので、CDのようにプレイヤーにセットしたら終わり、ではない。まずはレコードプレイヤーの構造を知って、適正に音を再生できるようになろう。また、アナログレコードはとても繊細。盤面に傷が入ると音が飛んだり、埃がつきやすくなる。指紋をつけないように正しい持ち方を知っておこう。親指を外側に、中指、薬指を中央にあてると持ちやすい。
Step #1
盤面に指紋をつけないようにレコードを持ち、A面かB面、回転数を確認。レコードの中央の穴に合わせてレコードをそっと置く。
Step #2
針を浮かせたままレコードの端から2、3mmのところの無音部分に持っていき、アームレバーを使って、針を落とす。
Step #3
レコードのサイズと回転数に合わせて、プレイヤーをセットし、再生ボタンを押す。針が外周から中心に向かって音楽が再生される。
Step #4
針が中心に来たら再生は終了。途中で止めたい場合はアームレバーを使って針を上げる。回っているレコードは素手で止めないこと。
難しい操作はなし!オールインワンタイプ。
場所は取るし、手間もかかる。それでもレコードでしか聴けない音がある。レコードの魅力はそこだと思います。今は便利なストリーミングサービスによって、指先ひとつで簡単に音楽が聴ける時代。でも、アーティストたちは長い時間と労力をかけて音楽を作っています。だから、聴き手もそれなりの時間と手間をかけて聴く姿勢が大事なんじゃないかと思うんです。そうすると音楽の聞こえ方も変わる気がする。最近はシティポップブームで、過去にCDで発売されていた楽曲がレコードとして再販されたり、若手のアーティストがレコードで楽曲をリリースするなど盛り上がりを見せています。CDよりレコードの売り上げの方が上回ったというニュースもありました。ビギナーがレコードデビューするいいタイミングだと思います。
じゃあ、実際にレコードで音楽を聴いてみたいけど、何が必要か、そもそもプレイヤーを買うだけですぐ聴けるようになるのか?疑問がありますよね。ビギナーにはポータブルレコードプレイヤーがおすすめです。この一台さえあれば複雑な接続は不要で、すぐにレコードを聴けます。省スペースで持ち運びも可能。スピーカーが内蔵されたオールインワンタイプのプレイヤーもありますが、できればBluetooth対応のプレイヤーを選んでみてください。いいスピーカーを繋げば高音質の音が楽しめます。最近は音質だけでなく、デザインにもこだわったプレイヤーもあるので、インテリアのように空間に合わせて選ぶ楽しみも。
プレイヤーが手に入ったら、お気に入りのレコードをかけてみましょう。かけるうちにプレイヤーの構造がだんだんわかってくるようになります。そして、大事にしてほしいのはアームレバーを使って「針を落とす」こと。この行為は、失われつつある動詞だと思うんです。レコードが廃れてしまえば、この言葉はなくなってしまう。どんなに便利な時代になっても、この美しい所作は後世に残したいなと思います。
Teacher…板焼きマエストロ・飯田貴志鉄(いいだ・たかし)
精密機器のエンジニアである父の元で育つ。ジャズクラブの名門〈ブルーノート東京〉を経て、独立。2016年に、ソムリエールの松坂愛さんとともに、ナチュラルワインと鉄板焼きとアナログレコードの音が楽しめる店〈赤い部屋〉を東京・南青山にオープン。飯田さんは音楽のセレクトと料理を担当。