娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 【新酒】即完売!いま話題の新銘柄「天美 新酒 純米吟醸 にごり生」~『伊藤家の晩酌』第二十九夜2本目~
弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第二十九夜の2本目は、人気女性杜氏が醸す、日本酒界を賑わす山口県のお酒。
「天美 新酒 純米吟醸 にごり生」に合わせるのは、生姜醤油と塩で食べる「しいたけの海老しんじょう」。
テツヤ「さっきから揚げ物の匂いがしてるんだけど…」
ひいな「あ、バレちゃった?」
テツヤ「たしかに、揚げ物すごい合いそうだね。揚げ物を日本酒の酸で切るというか」
ひいな「はい。合わせるのは揚げ物です(笑)」
テツヤ「お?何だこれ?」
ひいな「しいたけの海老しんじょうです」
テツヤ「あぁ、うまそう!最高!かたちがなんともかわいいねぇ」
ひいな「生姜醤油をつけてお召し上がりください」
テツヤ「いいねぇ。なんで『天美』にしいたけ海老しんじょうだったの?」
ひいな「『天美』に唯一足りないものって、だし感とかうまみ成分だと思ってて」
テツヤ「たしかにすっきりしてるもんな」
ひいな「それを補えるものって何だろう?って考えた時に、海老のうまみとしいたけのうまみのダブルはどうだろうと」
テツヤ「うまみの塊を合わせたわけだな?俺、揚げ物は手で食べたい派なんだけど、こりゃ熱すぎてダメだわ」
ひいな「やけどに気をつけて(笑)」
テツヤ&ひいな「いただきます!」
テツヤ「わぁ、こりゃおいしい。お酒ともすごく合ってるね。バッチリ。でもさ、生姜醤油もいいんだけど、塩でもおいしそうじゃない?」
ひいな「塩も合うと思う!」
テツヤ「この塩はさ、能登のはま塩って言って、桶で海水を撒いて揚げ浜式の製法で作られてる自然塩なんだって」
ひいな「うん、おいしい!塩、めちゃ合うね」
テツヤ「塩だった?」
ひいな「うん。『天美』のやわらかい感じには、もしかしたら塩で合わせた時のだし感のほうが合うかもしれない」
テツヤ「うん、だよな。この塩めちゃうまいな。まろやか!」
ひいな「塩だけでも日本酒にも抜群に合う。能登に行かないと買えないの?」
テツヤ「そう。『dancyu』の編集さんが買ってきてくれたのよ。しかも、この塩は先代の方が作った塩でなかなか手に入らないらしい」
ひいな「貴重だね」
テツヤ「しいたけ海老しんじょうもうまいよ。どうやってこんなの作れるの?」
ひいな「もともとはしいたけを焼いて、かさのところにだし醤油とか入れようかなって思ってたんだけど」
テツヤ「それもいいね」
ひいな「でもやっぱり海老のうまみをプラスしたくて。海老は完全にすりつぶしたほうがいいらしいんだけど、ちょっと歯ごたえを残して、つなぎのはんぺんの食感も残ってる感じにしてみた」
テツヤ「はんぺんが入ってるからこんなにふわふわなんだな。食べる時はさ、海老じゃなくてしいたけ側を舌につけて食べたほうがうまいと思う」
ひいな「え(笑)」
テツヤ「絶対、味わい違うと思うよ」
ひいな「うん、しいたけ感をより感じられるかも。お酒がからっぽになっちゃったね」
テツヤ「それくらいうまいってことだよ」
ひいな「うまみに『天美』が合うでしょう?」
テツヤ「うん、バランスいい。食べたあと味を切る感じがあるね。『伊藤家の晩酌』の中でもかなりいいつまみだと思います!」
ひいな「よかった〜」
1つの蔵から生まれるお酒を四季ごとに味わって、1年かけて追ってみたい!
ひいな「蔵のスローガンはね、『微差は大差』なんだって。かっこよくない?」
テツヤ「どういうこと、どういうこと?」
ひいな「ちょっとの差は大きい差になってしまうっていうこと」
テツヤ「なるほど。それは日々酒造りに向き合ってるなかで生まれた哲学なんだろうな」
ひいな「日本酒が苦手な人でも感動する極上の一杯をって造られてるから、本当になんの抵抗もなく飲めるお酒って感じがするな」
テツヤ「うんうん」
ひいな「この蔵はね、昔、『菊川』っていうお酒を造ってた児玉酒造ってところがあって、そこが製造量の減少に伴って製造を停止しちゃったんだって。そしたら、長州産業株式会社っていう太陽光発電システムを開発している会社が、事業を継承するかたちで長州酒造に改名して、そこに杜氏として藤岡さんを迎え入れたんだって」
テツヤ「あぁ、そういうことか」
ひいな「杜氏の藤岡さんは、東京農業大学の醸造科を出てるんだけど、奈良県の『やたがらす』っていうお酒を造ってるところにいたり、香川県の『川鶴』とか、三重県の『作(ざく)』とかを造ってた有名な方で、新しいこの蔵に就任したの」
テツヤ「へぇ!どれも聞いたことあるお酒ばっかり。知る人ぞ知る杜氏なんだな。藤岡さんの造る味の系統ってあるのかな?」
ひいな「こういう造りをしたいっていうのはあると思うよ。実はさ、『天美』のほかにも別の蔵から『天賊(てんぶ)』ってお酒もあって」
テツヤ「どこが出してるの?」
ひいな「芋焼酎の『富乃宝山』を出してる、鹿児島県の西酒造」
テツヤ「おぉ」
ひいな「この『天美』と『天賊』が2020年に人気だったツートップで」
テツヤ「へぇ。全然知らなかった。山口県と鹿児島県、西のほうのお酒がトレンドなのかな。しかも『天美』はまだ1年の蔵なのに!」
ひいな「そう。この1年ですごいファンがついたの」
テツヤ「自粛期間にみんな家で飲んでたんだな。でも毎年、トレンドって変わるでしょう?」
ひいな「そう。でも流行りがあるなかでも『天美』はすごく好感を持ってて。これからも応援していきたいなと思う酒蔵で。春に出る“桃天”も楽しみにしてて」
テツヤ「たとえばさ、季節ごとに変わる日本酒をそろえてさ、たくさんの種類じゃなくていいから、いくつかお気に入りの蔵の日本酒を1年通して飲める宿とかあったらいいよねぇ」
ひいな「あぁ、素敵だね」
テツヤ「常連の宿にしてさ、こういう季節になりましたよ、今年のお酒はこうですよっていうほうが通いたくなるなぁって」
ひいな「1週間に3〜4回通うお店よりも、1年間に4回、四季に合わせて行くことに価値があるよね」
テツヤ「たしかにね。季節が変わるタイミングで通うって素敵だな」
ひいな「どこの蔵を年追っかける?」
テツヤ「どこだろう?1年中、いつ飲んでもうまい酒がいいよね。今まで100回以上連載やってきたけど、もう一回全部を飲み比べてみたい!」
ひいな「やりたい!大試飲会!」
テツヤ「で、俺の蔵ベスト3を選ぶ!」
ひいな「今年も長くつきあっていきたい、おいしい酒蔵を探していきたいねぇ」
【ひいなのつぶやき】
杜氏の藤岡さんがこだわり抜いたからこそ、世間が愛しているお酒だと感じています!「微差は大差」を舌で味わいましょう!
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photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita