言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第57回~
ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。今回は怒りの感情について。
(photo : Yasutomo Sampei styling : Yui Funato hair&make : Akemi Kibe [PEACE MONKEY])
「あんたに何がわかるん」
あまり頭に血が上らないほうだと、自分では思っている。いや、正確に言うと頭に血は上るけど、それをその場ではどうにかやり過ごすことが出来ている。何かトラブルが起きて誰かを攻撃的に罵ったり、大きな声を出して怒りをぶつけたりした経験はない。意識的にそうしようとしているわけでも、流行りのアンガーマネジメントの講習を受けたわけでもなく、もともとそういう表現方法しか持ち合わせていないのだ。立ち向かって口論するよりは、一人にしてくださいと布団をかぶって泣く。感情のベクトルが外ではなく内に向いてしまうタイプ。
だから何かの拍子に導火線に火がついてしまって抑えきれずワーッと発散するタイプの人を見ると、あまりにも自分とは感情表現が違うので驚くのと同時に、よくこんなにストレートに表現できるなと感心してしまう。もちろんそんな状態の人に対峙するのはすごく嫌だし、そんなトラブルには巻き込まれないように注意しているけれど。というかそもそもそういったヒステリックな人をこの頃はあまり見かけなくなりましたね。ただ、海外ドラマを見ているとそういった激しい口論のシーンが沢山出てくる。家族、恋人、職場の同僚、近所付き合い…、どんな立場どんな間柄だとしても、みんな思ったことをそのまま口にする。「あなたのそこがダメなのよ!」「こういうことはやめて!」「私はあなたのことを思って言っているのよ!」ドラマの中とはいえ、なんでそんなに相手に素直に思ったことをぶつけることが出来るんだろうって、あそこまで言えたらスッキリするだろうなあと思う。
私みたいな人間は表立って発散できない分、すごくモヤモヤしたり、時間が経ってもそのことが頭の中に残っていて、何かしらの消化不良感を抱え続けるなんてことがある。ベクトルが内向きに働いているから仕方ない。友達に話して聞いてもらうことで気持ちが和らぐことはあるけれども、根本的な解決には至っていない。相手に対して「私はあなたのこの言動に気分を害された」という事実を伝えようとしないから。伝えない分、向こうも何が悪いのかはおろか、私が引っかかっていることさえも気づいていない人もいたりする。ひっそりと怒りを持ち帰り、一人グツグツと心の中で煮込む。ひとしきり怒りの感情を噛み締めたあとに、「ああ、こんなに怒っているのも馬鹿らしい。この人とは深く関わらないようにしよう」と心に決めて、なるべく距離を取って表面的な付き合いに限るようにする。自分の話をしない、当たり障りのない会話に留めるなど、不快に思われないくらいの線引きをしつつ…。お互い歩み寄るどころか、ずっと永遠に平行線のままだ。
きっと「ここが違うと思う」「ここは直してほしい」と伝えた方がお互いのために良いことなのは頭で分かっている。けれども、言ったところで人間すぐに考え方は変わらない、という諦念が私の足に絡みつく。
そんな私が最近持ち帰った怒りは、私よりだいぶ年上のおじさまに「バラエティばっかやってて何になるん。スポーツやったらええのに」と言われたこと。その時ばかりは「あんたに何がわかるん」って言ってやれば良かったと心底後悔している。
【弘中のひとりごと】
『Girls Planet 999』面白い……。