【カレーときどき村田倫子】 代官山の人気カレーが神泉へ!〈カリカリスパイス〉でいただく、心とカラダに染み渡る2種盛りプレート
「カレーときどき村田倫子」へようこそ。食べたいカレー屋さんを訪ね、自身でつらつらとカレーに対する想いを綴る、いわば趣味の延長線ともいえるこの企画。今回は、神泉のカレー屋さん〈カリカリスパイス〉を訪れました。
何かに名前をつけるのが好きだ。〈idem〉で服を仕立てるときも、名前与えた瞬間、ぐっと色っぽく輝く現象は、なんというか出産に近い神聖な儀式である。
本日訪れたのは、味噌汁のようにじんわり心に沁みるネーミングを持つカレーに出会える〈カリカリスパイス〉へ。
ピンクのボブスタイルが愛らしい、店主の南原さん。彼女一人で、〈カリカリスパイス〉を切り盛りしている。
以前は大阪で食品メーカーに勤務していた南原さん。誰かにご飯を振る舞うことが大好きな彼女は、OLの名札を引き換えに飲食店への夢を胸に抱き、この世界に飛び込んだ。「東京は、なんだか活気があってわくわくする…!」そんな直感と希望を胸に上京した彼女の足並みは勇ましい。
上京後、憧れだった都内の有名イタリアンでバイトを始めた南原さん。都内トップクラスの技術を肌で感じるためにキッチン…ではなく、志望したのはサービス業。彼女はまずは基本の作法から学んだ。
チャンスはふとしたところから、やってくる。ある日、上司から思いがけない提案が。「代官山で振る舞う間借りカレーに興味があるか?」…と。実はお店で営業後に自身のカレーをシェフ達に振る舞っていた南原さん。その味に納得した上司からの提案。二つ返事で代官山のイタリアンにて間借りカレーをはじめた。
色々なご縁と偶然が重なり、何かに導かれるように彼女の前に現れる分岐点。そしてついに2019年12月、ここ神泉にて拠点を移し、自身の城を構えて独り立ちを果たした南原さん。彼女が目指すのは、日常に寄り添う一皿。
本日のWeekly curryは「ほのかな酸味を味わうカレー」。もうすぐそこに、夏ですね。
彩り豊かな副菜は、水菜、赤キャベツと大根&ペパーミントのマリネ、りんごのライタ。管理栄養士の資格も持つ南原さん、カラフルなバランスの良い食材たちは視覚もカラダも癒してほぐす。
まずは「レモンとレモングラスのチキンカレー」。
きゅきゅきゅん。カラダが喜びの奇声を上げている。あ、美味しいの後に駆け抜けるレモンの香りと酸味。乾いたカラダにごぐごぐポカリが無抵抗に雪崩れ込んでくるあの感じ。
ホロホロのチキンに、満足感のあるグレイビー。しっかり魅せてから、香りと酸味で遊びを。のびのびと心地よいセンスが詰まってる。
お隣は「ハーブポークカレー」。ハーブの香りと、奥深い旨味。薬草とスパイスが入り混じって引き合って、ポークの旨味を引き立てる。親しみ安さの中に、知らない表情。
南原さんのカレーは、まるでアート鑑賞のよう。どこを掬いとっても発見と驚きがある。名画は知っていても、実際に足を運んで目の当たりしたときの、あの言語化できない感動と共感。五感で感じる喜びを教えてくれる、そんな感じ。
彼女の人生の経験とエッセンスが、ぎゅんと詰まったのが〈カリカリスパイス〉のカレー。OL時代、イタリアンでのバイト時代、間借りの経験…日々無駄なことなんて一つもない。毎日が何かの伏線を回収している。
何かに想いを込める。名前をつけることはそうゆうこと。南原さんのカレーには、母が子に宿すおまじないのような、ぽかぽかと温かいものが通う。
〈カリカリスパイス〉
■東京都渋谷区神泉町7-8 リラプレイス渋谷1F
■11:00〜L.O.14:30、17:30〜L.O.19:30 ※時短営業中
■日曜休(月曜日不定休)
■https://www.instagram.com/karikari.spice/
(photo:Kayo Sekiguchi)