【カレーときどき村田倫子】 祐天寺〈ハナコのカレー〉でいただく、スパイスカレーへの敬意と愛がつまった、華やかな3種盛りプレート。
「カレーときどき村田倫子」へようこそ。食べたいカレー屋さんを訪ね、自身でつらつらとカレーに対する想いを綴る、いわば趣味の延長線ともいえるこの企画。今回は、祐天寺にある〈ハナコのカレー〉を訪れました。
祐天寺の駅を降りてすぐ。黄色の暖簾と、漂う香ばしいスパイスの香りが目印の〈ハナコのカレー〉。
「好きなこと、やりたいことに正直に、真っ直ぐに駆け抜けてきました。経験とご縁の重なりが今の私です」。
マスク越しでも伝わる、チャーミングな笑顔が印象的な店長のハナコさん。元々薬膳に興味があり、薬膳を通して出会い、虜になったスパイス。そしてたどり着いた先は、スパイスを軸に構成され表現の媒体となる“スパイスカレー“だった。
知れば知るほど、カレーの魅惑と奥深さに惚れ込み、独学でカレーつくりをはじめたハナコさん。それだけでは飽き足らず、自身の表現の幅を求めてカレーの聖地下北沢にて、惚れ込んだカレー店のキッチンに立つ。カレーにどっぷり浸り、想いを育てる時間を丸一年。日々、カレースキルを更新しつつ、そこでの出会いやご縁を紡いでいまに至るそう。
好きを動力に、まっすぐに走り抜けてきたハナコさん。そんなカレーは、ご本人の鏡のように華々しく、あたたかなパワーが宿る。
絵画のように、一皿に咲き乱れるカレー。どうしようもなく鼻腔をするぐるスパイスの香り。
バランスよく注がれたカレー。愛らしいデコレーションのような「小松菜のココナッツ和え」、「ビーツ色に染めたキャベツ」、「ターメリックで漬け込んだ玉ねぎ」。カラフルな副菜たちが色彩を放つ。
かわいらしい見かけとは裏腹に、カレー自体の存在感は圧倒的。
「一皿で、様々な味を堪能できる3種盛りがおすすめですが、〈ハナコのカレー〉は、それぞれのカレーが個々でも主役になれるようにつくっています」。
レンズ豆と季節の芋をポタージュ状になるまで煮込んだ、優しく縁取る「お豆とお芋のきいろカレー」。ほっこりと肩の力が落ちるマイルドさの中に、くっきり残る旨みのバランスが絶妙。素材自体の旨みと甘みを軸に、ぼやけない優しさはごはんも進む。
鋭角に、スパイスの魅力を切り取る「ハーブ香るマトンキーマ」。マトンが織りなすヤンチャなコクの深み、キリリと立ち昇るスパイスの香り。ブラックペッパーが、さらなる旨みの深みを誘って、ライムリーフの心地よい爽快感がお行儀よし。
もうこりゃごはんのお供オブお供。猛々しさと上品さが混在する魅惑のキーマだ。「スパイシー半熟ゆで卵」と絡めれば、さらにワンランク上の魅力へ。
本日の日替わりカレーは、エビの出汁をベースに、魚介の恵みがぎゅとぎゅっとつまった「ココナッツのエビカレー」。ココナッツミルクの甘みとコク。ぷっちんとお口で跳ねるエビ。おいしいの層が繊細にミルフィーユされて、口内でそれが自由に弾ける様は、もう幸せでくらくらする。
トッピングした、ココナッツパウダーをまぶして揚げた「揚げバナナ」はハナコさん一押し。
カレーの塩気、バナナとココナッツの甘味。珍しいコラボも“甘ショッパイ“の黄金比にばちんとはまって、驚くほど互換性がよい。
〈ハナコのカレー〉は視覚、味覚、嗅覚をくすぐる、立体的で体験型のアート。見て、香って、食べて、何層にも楽しみを提供してくれる。
作り手の想い、人柄、カレーへの敬意と愛。こうゆうものは嘘がつけないし、一度口にすれば真意をもって伝わるんだなぁと。なんだかパワーもらった、そんなカレー。好きなことを表現する、そんな魅力と奥行きに酔いしれた時間。
〈ハナコのカレー〉
■https://linktr.ee/curryspice_hanako
(photo:Kayo Sekiguchi)