娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第十六夜3本目/こういう酸っぱみ待ってました!「飛良泉 山廃純米 マル飛 No.77」~
弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第十六夜は夏にぴったりな特別ゲストを迎えての残暑に合う酸っぱみ特集。3本目は、伊藤家みな大絶賛のほどよい酸が絶品のお酒。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第十六夜3本目は、山廃の酸味が伊藤家好みの「飛良泉 山廃純米 マル飛 No.77」
娘・ひいな(以下、ひいな)「あれ?」
ナツ・サマー(以下、サマー)「あら?」
父・徹也(以下、テツヤ)「あ、俺が撮ったやつ!」
ひいな「いらっしゃいませ〜!」
クニモンド瀧口(以下、瀧口)「プロデューサーやってます、クニモンド瀧口です〜! 遊びに来ちゃいました!」
テツヤ「ようこそ、伊藤家へ!」
瀧口「お邪魔します〜!」
ひいな「では、メンバーもそろったところで、次のお酒をご紹介しますね。3本目のお酒は、秋田県の『マル飛』です!」
サマー「あ、77って数字がラベルに入ってる!」
ひいな「そうなんです。このお酒、ちゃんと酵母の名前が入ってるんです。私が77号酵母を知るきっかけになったお酒でもあるんです」
テツヤ「次はどんなリンゴ酸か、楽しみだね」
テツヤ「はい! みなさん、盃を持っていただいて! 乾杯!」
一同「乾杯〜!」
テツヤ「うわぁ! これ、すごくバランス取れてるね」
サマー「すごくおいしい!」
ひいな「そうなの! 77号酵母の中でも、リンゴ酸だけじゃない感じがするでしょ?」
テツヤ「優等生な感じがする」
瀧口「これはいいですねぇ。おいしいなぁ」
サマー「酸味も強すぎず、甘みもあって、バランスがすごくいい! まろやかでとってもおいしいです!」
テツヤ「いい味だね。飲みやすいよ」
ひいな「喜んでもらえて、うれしい! しかもこのお酒、山廃純米なの」
テツヤ「へぇ、そうなんだ! やっぱり山廃ってうまいねぇ」
ひいな「前にも、山廃のお酒『熟露枯(うろこ)』を紹介したことがあったけど、それとは違う、飲みやすい酸味というか、リンゴ酸と山廃ならではの乳酸が加わった酸味で、しかも、ものすごくまとまりがいいんだよね」
テツヤ「うん、すごくまとまってる」
サマー「1本でバランスがすごくいい感じ」
瀧口「これは飲みすぎちゃう感じあるよね。フルーティだし」
テツヤ「77号酵母の山廃のお酒は間違いない、と覚えておこう」
ひいな「そうだね。これは伊藤家好みの味だね。実はこのお酒、うちで飲むの3本目なんだよ。知ってた?」
テツヤ「マジで?」
ひいな「しかも、ここ4ヵ月の間で3本も」
サマー「わぁ、そんなに。ひいなちゃん、気に入っちゃったんですね」
ひいな「何回か、父親に飲ませてるんですけど……」
テツヤ「ぜんぜん覚えてなかったわ(笑)」
ひいな「いいの、いいの。毎回、おいしいって飲んでくれるのが一番だから(笑)」
テツヤ「毎回、新鮮な感じでいただいております」
サマー「でも、バランスがいいお酒ほど、おつまみと合わせるの難しくないですか?」
瀧口「確かに、これ単品で成り立つくらいのおいしさがあるもんね」
ひいな「それがね、すごくおいしいのがあるんです!」
「飛良泉 山廃純米 マル飛 No.77」に合わせるのは、「鮎の稚魚のめざし」!
ひいな「今日のおつまみは、鮎の稚魚のめざしです!」
サマー「わぁ! 鮎のほろ苦さがきっと日本酒の甘みに合うんだろうな」
テツヤ「サマーちゃんは酒飲みですねぇ、ほんとに」
サマー「苦味がね、最高ですよね。苦味をおいしいって感じるのって日本の文化かなと思うんですけど、どうなんですかね? 日本以外にありますかね?」
テツヤ「魚は確かにそうかもね。まるっと頭から食べるもんね。『苦味を求めて』ってHanakoで連載、どう?」
編集・小倉「なんとマニアックな。続きますかね?(笑)」
テツヤ「東京根津にある〈根津松本〉っていうお店があって。一級品の厳選した魚しか置いてないんだけど、日本酒に合わせたいとみつくろってもらったのが、この鮎のめざしです。あのお店はね、本当にヤバいよ。お金の感覚が麻痺してくるけど、おいしいから買っちゃうんだよな」
サマー「いい香り〜!」
ひいな「焼いた魚にはレモンを添えたくなるところなんですが、あえて添えていません!」
テツヤ「日本酒の酸味と合わせる、ってことだね?」
ひいな「そう!」
一同「いただきます!」
瀧口「わ、熱々!」
サマー「この香りだけでも飲めますね(笑)。なんだか実家に帰った気分になるんですよねぇ」
テツヤ「魚が焼ける匂い、いいよねぇ」
テツヤ「何これ、めちゃくちゃうまい〜!」
サマー「おいしい! この苦味が、いい!」
瀧口「最高じゃん、これ!」
テツヤ「ふっくら、焼き加減、最高! いくらいい魚買ってきても、焼き加減が悪いとダメだからね」
ひいな「よかった。苦味と酸味の補完関係があるんだよね。リンゴ酸って主張がある味だと思うんだけど、その中でも山廃造りだからこそ、さらにグッと奥にくるものがあるっていうか。鮎のほろ苦さとぴったりだよね」
テツヤ「でも、この鮎に合わないお酒もきっとあるよな。生臭さを感じるとかさ」
ひいな「うん、あると思う」
サマー「すごくバランスのいいお酒だから、この鮎に合うのかもしれないですね」
瀧口「王道の組み合わせ!」
サマー「今まで感動したことがある日本酒のおつまみって、鮎の塩焼きぐらいだったんですよ」
テツヤ「お、じゃ、また今回も鮎で」
サマー「どのおつまみも、すっごくおいしかったです」
ごきげんな酔っ払いたちによる、お酒にまつわる話は尽きることなく。
瀧口「最後に、僕のお酒の初めての体験、話してもいいですか?」
テツヤ「長くなりそうだな(笑)」
瀧口「僕が若い頃はね、カフェバーがブームだったんですよ。テツヤさんと同世代なのでわかると思うけど、カフェバーでブルーハワイとかマイタイとかのカクテルを飲むのがおしゃれだったの。でもね、やっぱり若いから酔っ払っちゃうわけです。“マイタイ飲んで、参ったい”ってね。以上です」
テツヤ「瀧口さん、そろそろ酔いが回ってきたんじゃないですか?(笑)」
瀧口「はい、いい感じに」
サマー「じゃ、私もおつまみにまつわる話を。地元が、珍味の生産量が日本一多いところなんです。小学校の時の社会科見学は、もちろん珍味工場へ」
瀧口「えぇ〜! 小学生で?」
ひいな「いいなぁ(笑)」
テツヤ「水筒には、もちろん日本酒だよね(笑)」
サマー「その頃は、ぜんぜん興味なかったんですけど、今思えば、おもしろかったなって」
ひいな「何の珍味ですか?」
サマー「さきいかとかですね。いろいろ工程を見て、最後にそこで働いているおばさんから、ガサッとできたてのさきいかをもらうんですけど」
ひいな「いいな〜! できたて!」
サマー「でも、実家が酒屋なので、さきいか、普通に売ってるんですよ。別にありがたみはないっていうか(笑)」
テツヤ「確かに」
ひいな「でも、そんな体験、憧れだな!」
サマー「さきいか食べながら帰りましたね。給食にも『おしゃぶりするめ』っていうするめが週に1回くらい出てくるんです。そういう町で育ちました」
テツヤ「珍味の町の酒屋の娘って最強じゃないですか」
瀧口「酒飲みしか生まれない土地だよね」
サマー「おやつは珍味でしたね。でも合わせるのは牛乳でしたけど」
テツヤ「先生たち、辛かっただろうな。日本酒飲みたくなるだろうに(笑)」
ひいな「ナツ・サマーさん、クニモンド瀧口さん、どうもありがとうございました! また遊びに来てください!」
→次回は9月13日(日)更新
【ひいなのつぶやき】
ほろ苦さとも相性の良い、山廃×リンゴ酸、クセになります!
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