まちをつなげるパン屋さん by Hanako1187 食パンに再注目!新たな暮らしを支えるリッチな食パンを作るベーカリーたち。
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。新しい生活様式の導入とともにパンをめぐる景色も変化してきました。そこで今回は、食卓のキホン・食パンに再注目!
1. 人気パティスリーの知恵を結集〈Mont St. Clair〉/ 東京都目黒区
高級食パンシーンに、実力者たちが続々参入してきた。コロナ禍で、〈モンサンクレール〉に近所の人たちの来店が目立ちはじめた月。「パンを増やしてもっとよろこんでもらえるように」という辻口博啓シェフの思いからパンへの挑戦がはじまった。「パティシエの僕らだからできることを」とスーシェフの大井博司さん。「パティスリー生食パン」は、乳製品のリッチさを、りんご種の隠れた酸味で際立たせる。「ハニーバター」のかりかりの表面はフロランタンを焼く技術で。「キャラメルフランス」のクランチチョコも、キャラメルソースも、ケーキのパーツの応用。パンをおいしくする術は、厨房に、そしてパティシエの頭脳にすでにあった。
先頭を走り続ける辻口博啓シェフのパティスリーでパンが本格始動。従来あったクロワッサンやデニッシュに加え、トレトゥールのようなフォカッチャ、サンドイッチ、パティスリー生食パンを使用したハニーバター…晴れの日だけではなく、日常使いできるお店へと進化。
〈Mont St. Clair〉
■東京都目黒区自由が丘2-22-4
■03-3718-5200
■11:00〜18:00 水休(臨時休業あり)
■4席/禁煙
2.パンのおいしいホテルから新登場。〈PALACE HOTEL TOKYO Sweets&Deli〉/ 東京都千代田区
〈パレスホテル東京〉の「パンドミプルミエ」。北海道〈ファーム田中屋〉産の「はるきらり」に、発酵させた生クリーム「クレームドゥーブル」。星敏幸シェフが選び抜いた両者が合わさると、その生地はこねるのが困難なほどとろとろになった。「ゆっくりゆっくり育てなきゃダメなんです」丁寧に成形し、発酵に時間をかけ、完成まで日かかる。いつも失敗と隣り合わせだ。「毎日どきどきしながら作っています」。パンになるかどうかの極限を突くから、奇跡のようにやわらかくなる。このパンのおいしさは、職人の技術と執念の勝利である。
定評ある〈パレスホテル東京〉のパンやお菓子を買える店。ホテル内厨房で職人が技を尽くし、焼きたてを提供。コーンブレッドなど伝統のもの、趣向を凝らしたシュトーレンに加え、季節ごとに新作が打ち出される。贅沢な果実をのせたデニッシュ、パンドミプルミエにもトリュフやチョコ、コーンなど季節限定版が用意される。
〈PALACE HOTEL TOKYO Sweets&Deli〉
■東京都千代田区丸の内1-1-1 B1
■03-3211-5315
■10:00〜20:00 無休
池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog
(Hanako1187号掲載/photo:Kenya Abe)