食材から調理方法、店舗設計、運営までオール・サステナブルなレストラン! 体と環境に優しいフレンチ〈Noeud. TOKYO(ヌー. トウキョウ)〉が永田町にオープン。
7月29日、食で環境問題に向き合い、SDGsを体感できる創作フレンチ〈Noeud.TOKYO(ヌー. トウキョウ)〉が永田町駅から徒歩1分の場所にオープン。オールサスティナブルフレンチという新たなコンセプトも気になり、早速伺ってみました。
「食の環」を大切にしたオールサスナブルフレンチ。
京都に本社を置きウエディング事業を手がけるタガヤと、元UNIQLO USA のクリエイティブディレクターでTOMODACHI Ltd.代表を務める梶友宏氏が初めてタッグを組み誕生した〈Noeud. TOKYO〉。
「食の環(わ)」をキーワードに食材の生育環境からこだわり、地産地消でFood Miles(食料の量×輸送距離)を考慮。フードロスに配慮した「無駄のない」調理、そしてその食材のもつ環境と味を生かした「無理をしない」料理を目指して、食が描く持続的な円環を食材やメニュー、空間を通して最大限ありのままに表現することを大切にしています。
旬の食材に合わせて毎日変わる一期一会のコース料理。
同店はダブルシェフ体制でスタート。フランスなどで14年シェフとして活動し、2ツ星レストラン〈クロ デ サンス〉でスーシェフの経験をもつ秋田絢也シェフと、自分の目で確かめた自然環境にも身体にも良い厳選食材を、無駄なくおいしく食べてもらうことを信念とした中塚直人シェフのお二人です。
シェフたちは使用する食材全ての生産者に会い、どういう環境でその食材が栽培、生育されているのかを目と舌で確かめ、生産者の生産方針なども聞いた上で直接買い付け。野菜であれば無農薬や有機栽培、ジビエや魚は極力自然の形で生育しているものを選び、家禽は無投薬や平飼いなどで育てられている食材を厳選しています。
そうした厳選食材の旬のおいしさを最大限引き出すため、フレンチレストラン特有の定番名物料理「スペシャリテ」はなし。毎日変わる一期一会のコース料理1種のみを展開しています。
あらゆるベジタリアンに対応するオーダーメイドコースメニュー。
また世界のベジタリアンの方々に、サステナブルな日本の生産者と日本の食文化を伝えたいと考え、ベジタリアン対応メニューを用意。
卵と乳製品を含めた菜食主義の「ラクト・オボ・ベジタリアン」や菜食に魚介類を加えた食事法の「ペスキタリアン」などに対応。多様なタイプのベジタリアンのために、事前に細かくヒヤリングしその人に合わせたオーダーメイドコースメニューの提供も行っています。
紙を使用せず、QRコードでメニューを紹介。
コースメニューは日替わりのため、紙ではなくスマートフォンでQRコードを読み取るという新しいスタイルでペーパーレス化。しかもメニューは料理名ではなく、その日使用する食材と産地の記載のみです。食材そのものを味わって欲しいという思いが込められています。
タパスは見た目も楽しいフィンガーフードたち。
コース料理はタパス、野菜料理2種、魚料理2〜3種、肉料理2種、デザート2種、お茶(コーヒー)の全8〜10皿。提供する料理の順番も、一般的な魚から肉などにこだわらず、食材と調理法によって変更されます。
最初に乾杯酒「ジョセフ・ペリエ・シャンパーニュ・ブリュット・キュヴェ・ロワイヤル」に合わせメニューにも載っていない、フィンガーフードが登場。この日は4種のじゃがいものチップス。インカのめざめやシャドークイーン、キタアカリ、レッドムーンという異なる品種のじゃがいもを使用していて、味の違いを楽しめました。
続いても一口サイズのタパスがお目見え。ズッキーニのカレー風味のスープを、凍らせたカカオバターで閉じ込めており、口に含むとひんやりとしたカカオバターが一瞬で弾けるように溶けてびっくり!中からは、見た目の可愛らしさとはうらはらなスパイシーでエスニックな味わいのスープが溢れ出てきて、ジュワッと口の中に広がります。
3品目もトウモロコシのタルトという、小ぶりなフィンガーフード。炒めてピューレにしたトウモロコシの実に、黒くなるまで火入れしたトウモロコシの芯の煮汁を加え、甘さの中にもほんのりとした苦味と香ばしさを感じられるタルトに仕上げていました。
4品目は、真ん中を切り抜いた切り株に乾燥させたニンジンの皮を敷き、燻製したニンジンのチップスとピューレをトッピングしたお料理。シェフいわく「ソーセージをイメージした」そうで、最初にソーセージのような燻製の香りが感じられました。カリカリとしていてニンジンのうま味と塩気が感じられ、ビールなどにも合いそうです。
ちなみにこちらの器をはじめ、テーブルや椅子なども間伐材を使用。なるべく素材を二次加工することなくそのまま使うことで、器や内装建材からも地球環境との関わりを感じることができるサスティナブルな空間を目指しています。
一つの食材を違う調理法で多彩に魅せるシェフの料理たちに感動!
同店の中塚シェフは一つの食材を違った調理法を用い、酸味を少し加えることで油分や塩味を抑えた、繊細かつ素材の面白さを引き出した料理がお得意。5品目のトマトのオードブルもその一つでした。
兵庫県あかねオーガニック農園のトマトを低音焼きにし刻んだり、酢漬けにしたり、バーナーで炙ったりと、5種類の調理法を施しています。これに酢漬けしたイチゴを合わせ、千葉県産紫梅農園のきゅうりのピクルスをアクセントに添えています。
仕上げにテーブル席にてトマトのエキスを透明に抽出し、潰したきゅうりを合わせた液体を回しかけ、ガスパチョのようにしていただきます。
フルーティさがありつつも、野菜の青さやさまざまな食感や香り、五味が感じられ食べ進めるごとに味の変化が楽しい一品でした。
6品目は千葉県産の鯖を酢でしめ、千葉県紫梅農園のモロヘイヤのピューレと合わせたお料理。ガーリックオニオンに白髪葱、江戸前寿司で知られる卵黄を火入れしたおぼろをトッピングし、オレンジとレモンを混ぜ合わせています。和食と洋食の融合といった趣で、日本酒にも合いそうな夏に爽やかな一品でした。
個人的にヒットだったのが、コースで供される自家製パン。旭川のオーガニック小麦を使用したパンなのですが、外側はさっくりと噛みごたえがあるのに中はふんわりやわらか。ホイップバターと合わせて、朝ごはんにでもいただきたくなるおいしさでした。
7品目も見た目がちょっぴり和風。愛媛県今治産のミカンイノシシのタンに、兵庫県野口ファームのジャガイモのピューレを合わせた、フレンチでいうアッシパルマンティエのようなお料理です。
炭で焼くことでジビエながら臭みが消えたイノシシのタンは、添えられた肉厚なしいたけの食感やうま味とよく合いました。ジャガイモのピューレはなめらかな口溶けで、パン粉代わりに使用している乾燥させたパセリがいいアクセントになっていました。
野菜が主役のお料理が絶品!後味も軽く満足感もバッチリ。
8品目はなかなか主役に躍り出ることのない、タマネギをメインにしたラビオリ。兵庫県野口ファームのタマネギを、食材の水分だけで40分ほど煮詰めてキャラメリゼのようにしたり、ラビオリの中にリコッタチーズとともに入れたり、透明のジュに仕立て泡立てたり、サクサクの天ぷらにしたりと、違った料理法でアプローチしています。今まで脇役として捉えられがちだったタマネギの魅力を余すことなく発揮した一品で、中塚シェフの類稀なる生産者と食材への愛を感じました。
9品目は千葉県紫梅農園のビーツと、岩手県岩清水養鱒場の八幡平サーモンをそれぞれ小さくカットしたマリネ。卵黄と焦がしバターソースで作る温かくて香ばしいサバイヨンソースに、ビーツの粉を振りかけています。甘いビーツとサーモンがサバイヨンソースと合わさることで、優しいキャラメルのような味わいに感じました。
10品目は千葉県産のマコガレイのポワソン。ローズマリーに加えウイキョウの葉を入れた、スティック状のフォカッチャを添えています。
こちらには、カサゴやイサキなどでだしをとり、卵白を混ぜて火入れすることで濁りを除去した澄み渡ったスープを回しかけていただきます。
薄味のように見えるスープは意外にもソースのようにしっかりとした味わい。パスティスというお酒で酸味も加えており、フレンチながらほっとする和食のような味わいが魅力的でした。
11品目は先ほども登場したミカンイノシシと兵庫県くまゆき農園のナスをグリルした料理。イノシシ本来の味を活かすために、ワインをあまり使わずイノシシの骨と筋からとった肉汁をソースとして使用し、ミカンを食べて育ったイノシシということで今治ミカンのピューレを添えています。皮ごと使ったミカンソースは酸味と苦味が感じられ、しっとりと柔らかいイノシシ、脂を吸ったナスやキヌアとよく合いました。
ちなみにアルコールのペアリングは、フランス・アルザス地方の「ボット・ゲイル ゲヴュルツトラミネール レ・ゼレマン 2016」や、オーストラリアワインで同店のコンセプトにもぴったりな名前の「ヤウマ・無理しないで|Murishinaide」など。産地にこだわらなず、料理の味を引き立てるような生産者にこだわったワインをペアリングしてくれます。
デザートも驚きあふれる味わいの3品が登場!
デザートはまずお口直しとして、兵庫県くまゆき農園のバナナピーマンのシャーベットが登場。バナナピーマンと言ってもピーマンの一種なので結構苦味がしっかりとあるのですが、あかねオーガニック農園のミントオイルと合わさることでキウイのようなフルーティな味わいになっていて面白かったです。
13品目は京都府るり渓やぎ農園のヤギミルクを使ったスイーツ。ヤギミルク4リットルを400ccまで煮詰めて作ったソースにヨーグルト、同じくヤギミルクのムースとアイス、ディスク状のソルベを添えています。酸味があることで少しラムネのような味わいで、羊ならではのクセが力強い味わいを作っているように感じました。
最後はシェフが最近まで修業していたフランス・サヴォワ地方の郷土菓子、ガトー・ド・サヴォワ。カボチャを生地に入れ、メレンゲにはオレンジのピューレを添えていて、パウンドケーキよりも硬くて香ばしく、歯を入れるとほどけるような食感でした。
ちなみにデザートともに、食後はお好みで国分寺〈珈琲焙煎店 ろばや〉のコーヒーか、紅茶をいただけます。
品数も多くボリューム満点な内容ながら、野菜がたっぷりで油分や塩分などが控えめだからか胃が疲れず、食べ終わったあと体が軽やかなのが嬉しかったです。料理だけに留まらず、使用する器や内装、メニュー表に至るまでサスティナビリティを追求している〈Noeud. TOKYO〉。東京の最先端食トレンドの発信地として、今後人気を集めそうです。
〈Noeud. TOKYO(ヌー. トウキョウ)〉
■東京都千代田区平河町2−5−7ヒルクレスト平河町B1
■03−6910−0233
■17:00〜22:00(17:00〜1部スタート、20:00〜2部スタート)
■日月休
■公式サイト