娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第十二夜1本目/ほどよい酸、ほどよい旨みの純米酒「田中六五 6513」~

LEARN 2020.05.03

弱冠23歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第十二夜の1本目は、冷蔵庫にしのばせておきたい定番酒。中でも毎年必ず飲むほどお気に入りのお酒から。
(photo:Tetsuya Ito,Minami Murata , Ding Ding illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)

第十二夜1本目は、味わい、飲み口、ラベル、すべてにおいて洗練された「田中六五 6513」。

娘・ひいな(以下、ひいな)「私とお父さんでさ、割り勘してセラーを買ったじゃない?」
父・徹也(以下、テツヤ)「そうそう、割り勘でね。俺はワインを入れたくて、ひいなは日本酒で」
ひいな「ワインと日本酒を入れたいから、上下で温度帯が変わるセラーにしたんだよね」
テツヤ「いつのまにかワインが1本も入る余地もなくなってたけど(笑)」
ひいな「今日数えたらね、日本酒が27本も入ってた!」
テツヤ「そりゃ、すごいわ(笑)」
ひいな「一般家庭ではあり得ないよね」
テツヤ「あり得ない本数だね(笑)」
ひいな「でもね、考えてみたの。普通の家なら、冷蔵庫の扉のところの牛乳とかポン酢とか入れるところに入れることになるでしょ? そうすると日本酒2〜3本くらいだなと思ったの」
テツヤ「ま、それくらいだろうな。ストックしておけるのは」
ひいな「だからね、今回は冷蔵庫に常にストックしておきたい3本をセレクトしてみました!」

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テツヤ「なるほど、いいねぇ」
ひいな「この連載を読んでくれている方も、この3本を入れとけば、どんな気分の時でも、毎日いろんな日本酒を楽しめるよって伝えたい!」
テツヤ「イヤなことがあっても、楽しいことがあっても、この3本あれば楽しめるぞ!と。3本あればちびちび飲めるし、ちょっとこのお酒飽きたなと思っても、3本でローテーションすれば味が変わるしね」
ひいな「1本目は『田中六五』を出してる白糸酒造っていう福岡県の糸島市にある蔵のお酒から」
テツヤ「こないだ九州に行った時、行けなかったところだね」
ひいな「そうなの。『田中六五』の六五は、精米歩合が65%っていうこと。8代目が田中さんっていうお名前で、田んぼのなかにある酒造っていうことから名付けられたみたい」

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テツヤ「なるほど」
ひいな「しかも、この『6513』はアルコール度数が13度でちょっと低めなの。スマートに飲めて、グイッといっても嫌味がないお酒だと思うから、そばちょこで飲んでみよう」

テツヤ&ひいな「それじゃ、乾杯〜!」
テツヤ「おいしい! こりゃ、いい酒だねぇ」
ひいな「ね、想像してみて。仕事終わって家に帰ってきて、冷蔵庫開けたらさ、このお酒があるんだよ。そしたらさ、飲んじゃわない?」
テツヤ「わかる。飲む。なんだろ、この余韻がね……」
ひいな「そう、余韻があるよね」
テツヤ「余韻がやばいね。なんかね、しみじみと、今日1日を振り返られるわ。『なんで、あの時、もうちょっと粘れなかったかな……』とかね。(ライター注:父は売れっ子カメラマンです)」
ひいな「そんなことあったんだね……(笑)」
テツヤ「これは、ひいなの好きそうな酸を感じる味だよな」
ひいな「うん、純米酒。このお酒、毎年かかさず飲んでるの。毎年きっと味が違うはずなんだけど、1年前の味を舌が記憶できる状況にまだなくて、それはこれからの訓練だなと思ってる。1年前のお酒の味を覚えてるのが理想かな」
テツヤ「この酸の立ち方、好きだわ〜。ワインだよね、これは。ワイングラスで飲むのもいいんじゃない?」
ひいな「このお酒はね、山田錦なんだけど、山田錦といえば兵庫のイメージがあるでしょ? でもね、糸島は山田錦の知られざる産地でもあるんだって」
テツヤ「香りがいいよね」
ひいな「福岡ってお米へのこだわりがすごくて、『吟のさと』っていうお米もあったり、お米の栽培も含めて特別な感じがあるんだよね」

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テツヤ「糸島産の山田錦ってわざわざ書いてあるね。100%使ってるんだ。地元の米で造られてる酒はやっぱりいいよね」
ひいな「地元に根付いている蔵だからね」

「田中六五 6513」に合わせるおつまみは、うまみたっぷりの「ろく助 塩」!

ひいな「疲れて帰ってきた時に飲みたいお酒だから……」
テツヤ「それに合わせるおつまみは?」
ひいな「こちらです!」
テツヤ「なんだこれ? 白い粉……?」

おいしすぎて、ずっと舐めてられる『ろく助』の塩。
おいしすぎて、ずっと舐めてられる『ろく助』の塩。

ひいな「塩だよ! 『ろく助 塩』っていうんだけど、ただの塩じゃないの」
テツヤ「何が違うの?」
ひいな「粗塩に干し椎茸と昆布と帆立貝の旨みをプラスした調味塩なの」

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テツヤ「おぉ〜、聞いてるだけで最高だね。うまそ!」
ひいな「うちでサラダ食べる時、ドレッシングかけないじゃない? オリーブオイルと塩で食べる時、私たちはいつもこの塩を使ってて。ほら、お父さんは、お気に入りの岩塩があるから食べたことなかったんだよね。伊藤家ではサラダに欠かせない塩なの」
テツヤ「え、そうなの? どうやって食べればいいの? 舐めた直後に飲むの?」
ひいな「どっちでも(笑)。お酒の味が変わるよ!」
テツヤ「塩だけでもうまいね。で、このあとお酒を一口。うんめぇ〜。出汁の旨みがすごいね。こりゃ。このおいしさ、俺だけが知らなかったんだな……」
ひいな「そうなんだよ! お酒の旨みが、さらに乗ってくる感じがするの」
テツヤ「あぁ、酒の味が深まる!」

ひいな「でしょ? 疲れて帰ってきて、お酒注いで、塩を舐めるだけでいいの!」
テツヤ「それ、やばいやつだよ(笑)。 でも、確かにこの組み合わせは最高だね」
ひいな「実はね、これ、お湯に溶かすだけでもおいしいんだよね」
テツヤ「わ! これは二日酔いの後に飲むスープだよ! むっちゃうまい! これはグビグビ飲めるね」
ひいな「塩だけでもおいしんだけど、栄養取るためにもプチトマトとかにつけてね」
テツヤ「つまみ、塩だけでいいよ」
ひいな「だよね(笑)。最近、塩と日本酒っていう組み合わせがブームになりはじめてるらしくて。野菜ともバッチリ合うけど、この塩とお酒が最高に会うんだよね。手頃なペアリングでしょ?」
テツヤ「疲れて帰ってきてさ、ネクタイ緩めながら冷蔵庫開けてさ」
ひいな「いつもネクタイしてないし(笑)」
テツヤ「日本酒と塩で晩酌とかさ。かなり究極のシチュエーションだけど、でも、そういう日もあるよね」
ひいな「うん、それが人生だよ」

オンリーワンでもなく、ナンバーワンでもなく、定番のお酒を目指して。

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ひいな「この酒について調べてたらね、すごく納得したのが“オンリーワンでもなく、ナンバーワンでもないお酒を目指してる”っていうことだったの」
テツヤ「どういうこと?」
ひいな「これじゃなきゃダメっていうのでもなくて、これが一番っていうのでもないってことじゃないかな。精米歩合65%っていうのも磨きすぎず、定番の65%にたどり着いたってことみたい。このお酒は旨みもあって、でもとんがってなくて、嫌味がない感じがすごくいいなと思って」
テツヤ「うん、わかる。うまいよね。飽きのこないうまさっていうかさ」
ひいな「行きたかったね、蔵」
テツヤ「今度行こう。また旅する理由ができた」
ひいな「白糸酒造を目指して行こう」
テツヤ「ちなみにさ、このお酒の値段は?」
ひいな「実はこのお酒少し高いんだよね。3080円」

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テツヤ「おー! まぁまぁ高いな! でもすげー気に入ったわ。これはね、採用します!」
ひいな「我が家の冷蔵庫のポッケにいれていいんだね!」
テツヤ「デイリー酒にしては少し高いけどな。うーん、一流企業のサラリーマン向けかな。でも、冷蔵庫に1本あったら幸せだよね。あとさ、これはモテ酒だね」
ひいな「モテる酒ってこと?」
テツヤ「そう、みんなおいしいって思うでしょ? 一人暮らしの男の家に女の子が遊びに来て、冷蔵庫にこの日本酒が入ってたらさ、女の子喜ぶでしょ?」
ひいな「何それ(笑)」
テツヤ「センスいいって思われるでしょ? 見た目もクールだし、きちんとおいしいし」
ひいな「でも、家入ってさ、いいお酒あるんだよねっていわれて、冷蔵庫から『6513』が出てきたら、『こいつ、口説きにかかってるな』って思っちゃう。私だったら絶対嫌だ(笑)」
テツヤ「でもさ、日本酒知らない女の子には飲みやすいし、いいと思うけどな〜」
ひいな「最初に飲む日本酒としてはいいかもね。パーティに持っていくお酒としてはどう?」
テツヤ「パーティってさ、持ってきた時のイメージはあるんだけどさ、いろんなお酒を飲みすぎて味の記憶がないんだよね(笑)」
ひいな「わかる(笑)。じゃ、プレゼント?」
テツヤ「うん、もらったらうれしいよね。最近、伊藤家は引っ越ししましたので、みなさま、引っ越し祝いでお待ちしております!」
ひいな「お待ちしております!」

→次回:5月10 日(日)更新予定

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【ひいなのつぶやき】
癒されたい時に飲むお酒として、我が家で重宝します!
ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中

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