娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第十夜2本目/時間をかけてじっくり楽しみたい「農口 純米酒」~
弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第十夜は、2月に成人を迎え、お酒解禁となった妹・ひびきへ、オススメの日本酒を3本ご紹介。味の変化がユニークな、時間をかけての楽しみたい1本。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第十夜2本目は、熟成した濃厚な味わいがクセになる「農口 純米酒」
姉・ひいな(以下、ひいな)「このおちょこ、かわいいでしょ?」
妹・ひびき(以下、ひびき)「小さい〜!」
父・徹也(以下、テツヤ)「お!? やちむんだね」
ひいな「そう、自由が丘にあるニライカナイ自由が丘で買ったやちむんだよ」
ひびき「こんな小さいおちょこでお酒飲むの?」
ひいな「そう。くいっと飲めちゃう大きさでしょ? 沖縄では泡盛飲む時に、この小ささで飲むんだって。アルコール度数が強いから」
テツヤ「ショットだな(笑)」
ひいな「今日のお酒はね、石川県能美市の『農口』ってお酒だよ」
ひびき「『のぐち』って読むんだ」
テツヤ「ラベルの存在感がハンパないね」
ひびき「しかも、一升瓶だ!」
テツヤ「ひびき、一生瓶ってどれくらいの量か知ってる?」
ひびき「うん、ここに書いてある(笑)。1800mlって」
テツヤ「正解!」
ひいな「では、いただきましょうか」
ひいな「あれ? ダメだった?」
ひびき「うぇぇ〜」
テツヤ「確かに、これクセあるね」
ひいな「ひびきが、涙目になっちゃった(笑)。私的には、日本酒が純米吟醸か純米大吟醸しかおいしくないと思っているひびきに、日本酒の味っていろいろあるんだよっていうのを紹介したかったんだけど……」
テツヤ「なるほど。酒はいろいろあんだぞと」
ひいな「こんな味わいもあるよってね」
テツヤ「日本酒の洗礼だね」
ひいな「わわ、泣いちゃった……。ごめん、ひびき!」
抜栓してからも、味の変化が楽しめる「農口 純米酒」
ひいな「涙の理由、聞いてもいい?」
ひびき「よくわかんないんだけど、涙が出てきた」
ひいな「おいしくなかった?」
ひびき「うん……」
テツヤ「お酒単体じゃなくて、食事と合わせると印象変わるかも」
ひいな「そう。いろんなお酒を飲むことで、自分の好みがだんだんわかってくるから」
テツヤ「その前に、お水飲んでみな」
テツヤ「このお酒、後半のほうがうまく感じるな」
ひいな「後半って?」
テツヤ「3口目くらいのほうがおいしいと思う。第一印象とは違う感じ」
ひいな「あれ? 冷えすぎてたのかな? 抜栓してすぐの第一印象はかつお節っぽい感じと、竹のような香りもあるかなって思ったよ。もう一つ、前に開けた常温の『農口』もあるから飲んでみようか」
テツヤ「あれ。ぜんぜん香りが違う。こっちのほうが飲みやすいかも?」
ひいな「うん。深みがあるね。実は開けてから18日も経ってるの。だからまろやかになってるのかも」
ひびき「こっちのほうがおいしい」
ひいな「うん、飲みやすくなってるね。ひびきにも気に入ってもらえてよかった〜」
テツヤ「一升瓶ってなかなか飲みきれないって言う人にもおすすめだね」
ひいな「ね。時間をかけて変化が楽しめるお酒、いいよね」
テツヤ「1日一合とか決めてる人とかさ(笑)。健康のために」
ひいな「お父さんにぴったりなんじゃない(笑)?」
「農口 純米酒」に合わせるのは、さつまいもの甘みだけで作った「スイートポテト」
ひいな「このお酒には、甘さをプラスしたほうがおいしさを感じるんじゃないかなと思って。かつお節みたいなスモーク系の香りがしたから、それを邪魔しない食材ということでお芋を思いついたの。紅あずまをふかしてみたらすごく甘かったから、お芋と牛乳だけで砂糖なし。卵を塗って焼いてみたよ」
ひびき「お芋、おいしい!」
テツヤ「おぉ、うまいね〜!『農口』に合う!」
ひいな「みんなどうやって食べた?」
ひびき「お芋が口に残るから、それをお酒で流す感じ。あれ? 日本酒もおいしいよ」
ひいな「わ、よかった!」
テツヤ「お? ひびきもおいしいって思った?」
ひびき「うん、おいしい。おかわり」
テツヤ「そりゃよかった」
ひいな「食中酒になると印象ってこんなに変わるんだね。すごく勉強になる! ひびきの反応」
テツヤ「日本酒のイベントとかやってさ、同じ日本酒でも、おつまみと合わせることで、これだけ違いますよって飲み比べてほしいよな」
ひびき「単体で飲んだ時とぜんぜん印象が違う。おいしい」
テツヤ「さすが! ひいなのマリアージュが功を奏したんじゃない?」
ひいな「何なの?急に(笑)」
テツヤ「父からのフォロー(笑)。やっぱりさ、お酒に何を合わせるかによって、お酒の印象もガラッと変わるからさ。この『農口』に魚を合わせたら、きっと全然違うはずじゃない。だから、ひびきもおいしく飲めたのは、ひいなのおかげなんじゃないの?ってね」
ひびき「うん。お芋おいしかった」
ひいな「よかった〜。ひびきの顔が曇った時はどうしようかと思った」
テツヤ「一緒に酒が飲めてうれしかったんだよな?」
ひびき「うん、じゃ、そういうことにしとく」
テツヤ「なんじゃそりゃ(笑)」
ひびき「お芋、もっと食べたい」
ひいな「ひびきがおかわりしてくれた!」
テツヤ「芋好きだもんな」
ひびき「うん」
テツヤ「ひびき、顔が赤くなってきたんじゃない?」
ひびき「なってないよ!」
テツヤ「お酒、弱いんじゃないの?」
ひびき「2人が変わらなさすぎなの!」
テツヤ「顔色は変わらないけど、だんだん目の力が弱まってくるんだよな……」
ひいな「食べ物でお酒の味が変わるの、おもしろかった?」
ひびき「うん。デザートみたいなお芋と日本酒ってこんなに合うんだね」
テツヤ「つまみ=塩辛だけじゃないんだぞってね。ひいなのつまみがね、毎回絶妙なんだよ。よくぞ、これを合わせるねっていうのばっかり!」
ひいな「もちろん珍味とか酒のアテみたいなのが合うお酒もあるだろうけど、そうじゃない選択肢を紹介したいんだよね」
テツヤ「それにしても、ひびきのストレートな反応を見てるのがおもしろかったな」
ひいな「ね。これからも、どんどん飲ませちゃお!」
→次回:3月22 日(日)更新予定
【ひいなのつぶやき】
一家に一本、「農口」をキープしておくことを推奨します!
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