【カレーときどき村田倫子】 「レトロ可愛い」からのギャップ萌え!渋谷〈カレーショップ初恋〉のスパイスカレーに舌鼓。
「カレーときどき村田倫子」へようこそ。食べたいカレー屋さんを訪ね、自身でつらつらとカレーに対する想いを綴る、いわば趣味の延長線ともいえるこの企画。今回は、渋谷のカレー屋さん〈カレーショップ初恋〉を訪れました。
ビビットな紫に浮かぶレトロなフォント。
本日のお目当て〈カレーショップ初恋〉。昭和感漂う看板は、まるでスナックのようだ。本当にここはカレー屋なのか?戸惑いながら階段を降りると、スパイスの香りが漂ってきてほっと安心する。
ユニークな看板と名前が印象的な〈カレーショップ初恋〉。実は、ここは創業58年の歴史あるスナック〈千早〉の跡地。その敬意や背景を汲み取って、遊び心あるモチーフとなっている。…この流れからピンときた方は中々鋭い。そう、この店の名前は昭和は代表する村下孝蔵の大ヒット曲『初恋』から紐付いている。
由来からユーモアが溢れるお店だ。(私は因みに曲サビでやっとピンときました笑)。店の風貌は昭和レトロだが、ここではスリランカや南インドをベースにした本格的なスパイスカレーが楽しめる。「レトロ可愛い」の第一印象からのギャップ…なかなか萌える。
カレーは、「初恋チキンカレー」、「パクチーシュリンプ」、「スパイスラムキーマ」、「薬膳ベジタブル」、「日替わりスペシャル」の5種類。これらは一種からはもちもん、二種、三種のあいがけもオーダできる。ご飯の量(大・中・小)は無料で変更でき、具材トッピングもカスタム可能。食べる側の「欲張りたい」の気持ちを細やかにカバーしてくれている。
多くの選択肢に悩んだ末、オーダしたのは…
「初恋チキン」×「スパイスラムキーマ」の二種あいがけと、やっぱり欲張りたくて小皿で追加した「日替わりカレー」。深緑のお皿と具材のコントラストが目を引く一皿。頂上にそびえ立つパパドのツノが可愛らしい。
この日は北海道産の銀鮭とほうれん草の出汁カレーに仕上げた「鮭と泪と男と女」。ここでも演歌節は炸裂。ちゃかり“ダジャレ”になっているネーミングに思わず笑みが溢れる。
〈初恋〉が紡ぐカレーの大きなテーマに「健康」がある。医食同源の考え方を軸に、化学調味料、人工添加物は使用せず、身体と心を気づかうカレー。スリランカ・インドの調理と思考をベースに、日本の食材と調理技法を自由な発想で取り入れた唯一無二の一皿だ。
プレートには、セレクトしたカレーの他、季節の副菜(5種)、スパイス卵、ポルザンボルが付いている。ライスはなんと、ターメリック、グローブ、ローリエ、たっぷりのクミンと炊き上げた「クミンライス」。クミンちゃん推しの私は、この時点で香り高いライスにメロメロだ。
はじめましてなのに、「どこかでお会いしましたか?」という感覚になるのは、「出汁」の仕業。私たちの味覚に染み込んだカルチャー「出汁」。実はスリランカにも出汁の文化があるため、我々日本人と親和性が高いのだ。ほろほろの鶏モモとシャバッとしたグレービーの「初恋チキン」は、しっかりと出汁の風味が綴じ込められている。味噌汁を最高の形でスパイスに出会わせたら、こんな感じなのかしら?ずずっとお皿ごと啜りたくなる、魅惑のカレー。
あいがけした「スパイスラムキーマ」は、粗挽きラムの力強い旨味にガリっと弾ける強スパイスがガシッと味覚を抱擁してくる。オス全開!なのに、胸焼けしない爽やかさは、カルダモンの香りが上品に余韻を醸すから。絶妙なギャップにうっとりとしてしまう。
魅惑的なカレー達を、ダルカレー、副菜達と混ぜ合わせれば、旨味の相乗効果が楽しめる。卓上に置いてある、「大根のウールガイ」とクミンライスの組み合わせが、個人的に推しコンボ。従来のビリヤニの「炊きすぎて固い」「具が少ない」…といった「ちょっとココが惜しいのだよな」というポイントに目をつけて、独自の調理で自由度を付加したのが「クラフトビリヤニ」。
メニューはなんとほぼ日替わり…!お客さん想いの中々ストイックな構えだ。この日は「コリコリ豚タン&ゴボウ」。王道のマトンやチキンから、あえて脱線しての「豚タン」。
コリッと楽しく弾ける豚タンに今が旬の「新ゴボウ」の豊かな食感と旨味が加わり、人生初めてのビリヤニの食体験。
セットのダルカレーやライタ(ヨーグルトのソース)を混ぜ合わせるころによって、味変も楽しめる。「クラフト」という枕詞には「初恋」ならではの「自由」が反映されているのね。
スパイスに対する情熱と遊び心が表現された一皿、お店に散りばめられたチャーミングな仕掛け。色んな角度から私たちを楽しませてくれる〈カレーショップ初恋〉。ここは渋谷にできた小さなエンターテイメント空間だ。また、元気と好奇心を味わいに、紫の看板を潜ろう。
〈カレーショップ初恋〉
■東京都渋谷区道玄坂1-17-11 ミナミビルB1F
■03-6416-9503
■平日11:30〜15:00、18:00〜24:00 土日祝休
(photo:Kayo Sekiguchi)