花井悠希の朝パン日誌 vol.59 人気店のあのオヤツでとっておきの朝食を…〈mameshiba coffee〉と〈Equal〉
今日の私を甘やかしの刑に処する!昨日のうちに決めていたんです。この刑の執行を。心躍らせながら向かった道すがらも、ホクホクしながら帰った足取りも、ムフムフしながら寝る前にこの子たちへ送った一瞥も、みんなみんな今朝のこの瞬間へのOverture。布団から抜け出してお湯を沸かして美味しいカフェオレを作る。はやる心をふぅっと落ち着かせて。とっておきなお店のとっておきなオヤツ。それを朝パンにする心の満たされ度は想像よりずっと高いのです。
秘密基地のあの子…〈mameshiba coffee〉
東京と埼玉の県境、埼京線の戸田公園駅が最寄りの〈mameshiba coffee〉さん。ある日曜日の夕方、日が暮れてから訪れてみると、ほわんと柔らかなランプの灯りと穏やかな静けさに包まれ、ハッとするほど素敵な雰囲気です。普段歩くのも早めでわりと前のめりな生き方をしているので、なおさらそんな自分にハッとしたのかも?なんだか自分の秘密基地をみつけたような安心感にも包まれて、思いがけずゆっくりと自分自身に向き合う時間になりました。
プリンで夜の甘やかしも忘れません。このプリンの固さとなめらかな舌触りとコクのバランスが絶妙!
お持ち帰りでマフィンを2つ。この子はイートインでは温めて提供されるみたいなので、私も温めて頂きました。口付けるや否やふわっと柔らかな感触に出迎えられ、パサつきはどこにも見当たりません。ふわっとした接触にしっとりと滑らかな口当たりは大人を甘やかしてくれるには十分。
マフィンカップからはみ出た部分は少しかりっとしています。でも、その全ては優しいのフィルターを通して。甘さも口当たりも風味も、みんなみんな優しい。甘さを自然に引き出したコンポートのりんごには、カマンベールチーズで少しの緊張感を。
表面にメルティングしているチーズは音楽におけるテンションコードみたいな役割を発揮し、これまでと少し違和感がありつつ印象を残すフックとなっています。わずかなチーズの塩気と芳香、そこにくるみがカリリ。くるみが控えめなチーズの背中をそっと押して、甘く優しいだけじゃいけないのって、そっとウィンクしていきました。うん、確かにこの大人っぽい眼差し、効いています!
お芋が美味しいよぉ(涙)。ふかし芋じゃなく焼き芋食感で、ほくほくじゃなくねっとり。そうなのよーこのねっとりが好きなのよー。食べながら頷きが止まりません(←いつもの変な人)。そんな無類の芋好きを励ましてくれるかのごとくさつまいもが大きくごろんと入っています。ナマステーーー!!!(何故ヒンディー語)。
芋にすっかり心を奪われていましたが、ゴマがプチリと弾けひゃっとする。そうだ、大学いも風なのだった!黒ごまが香ばしく和の香りとテイストを放ちます。上だけじゃなく、底にも黒ゴマが敷かれているからうっかり最初に芋に食いついてトップを先に食べてしまったあわてんぼうさんでも、最後まで見捨てず大学いも感を味わわせてくれますよ(そう、私だ。)。
なによりこの生地の自然な甘みと滑らかに溶ける食感がねっとりしたお芋さんによく寄り添うんですよ。1ミリだって離れたくない!って高校生のカップルみたいな台詞だって、この子たちにはお似合いです。さぁ、あなたも2人の愛の証人になってみないか(←誰)。
オープン間もない人気店のあの子…〈Equal〉
まずこちらからの帰り道にすれ違った皆様に謝っておきます。あの時の私はレインボースターを取ったマリオの気分だったのです。ずっと食べたかったシュークリームとマロンパイを手に代々木上原駅へ歩き出した私の足取りは、間違いなく跳ねていました。いや、跳ねるどころではない、スキップだったかもしれません。
ここだけの話、喜び余って紙袋と2ショットを撮った形跡もフォトロールに見受けられました(でもとてもじゃないけど載せられない写り)。それだけ憧れの〈Equal〉だったんです。シュークリームはその日のうちにすぐ頂きました。朝パンじゃないですが「夕暮れオヤツ」ということでチラリとご紹介。
ちょこんとしたサイズ感。可愛さ120点です。見た目の隙のない美しさとは裏腹に、穏やかであったかい味わいが広がって、ふにゃんと目尻が下がっちゃいます。
バニラビーンズの味わいの強さで押し切らないのに、舌に残るこの幸福感はなに?手土産に持っていったらみんなに喜ばれる事間違いなしです。
そして朝パンにとっておいたのはマロンパイ。一口目からパリパリが止まりません。冬の手前の今を映すかのような、薄氷みたいな砂糖アイシングがパリパリしゃりしゃりと霜柱のような音をたてて崩れると、中には森の詰め合わせが。
ゴロっとありのままの姿で甘さを丁寧に引き出された栗からは、この栗が実っていたであろう木の香りやその姿を感じられそうなほど自然の力強い味わいが生き生きとしています。目の前の栗を頂きながら、さらに奥へ奥へと意識が向かい、栗の木が揺れる深い森への扉が開くよう。
〈Equal〉の皆さんの手作業で皮を剥かれ大切に扱われた栗だから、森の香りをそのまま閉じ込めたような深い栗の味がするんですね。しっとりしたケーキ生地がこれら栗のまわりを包み、栗から溢れ出た味わいは全てこの子たちが受け止めて1エッセンスだって取りこぼしません。濃い緑色で縁取られた深い深い森の情景を見せてくれるようなマロンパイ。なんてロマンティックなんでしょう。ここ最近で食べた栗菓子で間違いなくナンバーワンです。イガグリを開けるときのように、両手で大切にパコッと開けて。森の宝物が待っていますよ。
そしてここまで書いておいて残念なお知らせをしなければいけません。こちらのマロンパイは期間限定だったので今はもう販売終了しているかも。ごめんなさい。また来年の楽しみに。私も今から心待ちにしています!
宝物みたいにこの子たちを大事に抱えた帰り道から、この朝パンの幸せな時間は始まっていたのかもしれません。年末がさし迫り、冬も本領発揮してきて身も心もせわしない季節だからこそ、イルミネーションをゆっくり見る余裕はなくても、甘やかしの刑で朝のほんのひと時に小さなキラメキを散りばめてみませんか?