娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第三夜4本目/常温で、燗で。味の変化が楽しい「羽前白梅 純米酒」~

LEARN 2019.10.06

弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 4本目は飲むたびに味が変化する、これぞ純米酒な一本!
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)

第三夜4本目は、飲むたびにおいしさが増す、長く楽しめる「羽前白梅 純米酒」

1592年創業、山形県鶴岡市最古の蔵元で昔ながらの日本酒造りを行う。「羽前白梅 純米酒」720ml 1728円(税別・ひいな購入時価格)/羽根田酒造株式会社
1592年創業、山形県鶴岡市最古の蔵元で昔ながらの日本酒造りを行う。「羽前白梅 純米酒」720ml 1728円(税別・ひいな購入時価格)/羽根田酒造株式会社

娘・ひいな(以下、ひいな)「最後の1本は、山形県鶴岡市の『羽前白梅(うぜんしらうめ)』だよ」
父・徹也(以下、テツヤ)「クラシックなラベルがいいね」
ひいな「新川にある酒店〈今田商店〉に行った時、今度若い杜氏の特集をやるんですよって話をしたら、『ここの蔵も若いよ』って教えてくれたのが羽根田酒造だったの。しかも、その日に杜氏の羽根田成矩さんに連絡してくれて。今年30歳になるんだって」
テツヤ「平成生まれの杜氏だね」
ひいな「羽根田さんと話をした時、今年の6月に起きた山形県沖地震の影響を受けたらしくて。商品が破損したり、建物も倒壊したり被害が大きかったみたいで、まだ復旧作業が続いてるんだって」
テツヤ「そうか、それは大変だね。飲んで応援しないと!」

ひいな「じゃ、開けるよ。これは正真正銘、開けたての『羽前白梅』」
テツヤ「鶴岡は、海と山が近くて、真っ平に広がる庄内平野がほんとにきれいなんだよな。空港の愛称も『おいしい庄内空港』っていうだけあって、おいしいものだらけだし」
ひいな「お酒もおいしいしね!」
テツヤ「じゃ、乾杯!」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

テツヤ「すごく色がついてるね。うぅん!? 水みたいだぞ」 
ひいな「ミネラル感が強いかも」
テツヤ「これは、チェイサーだな(笑)」
ひいな「そう思うでしょ? ちょっと待ってて」

ひいな「こっちは、4日前に開けた『羽前白梅』!」
テツヤ「え? どういうこと?」
ひいな「いま開けたやつと4日前に開けたやつを飲み比べてみて」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

テツヤ「なるほど。同じ酒器で飲んでみたいね。入れたらどっちがどっちかわからなくなってきたぞ(笑)。
ひいな「ご心配なく。ぜんぜん味が違うから」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

テツヤ「色は一緒だね。じゃ、4日前のほうを飲んでみるよ」
ひいな「どう?」
テツヤ「何これ! ぜんぜん違う!」
ひいな「酸が出てきて、角が丸くなってるでしょう?」
テツヤ「確かに。コクが出てる。これは飲んで発見したの?」
ひいな「試飲しようと思って4日前に飲んだ時と今朝飲んだ時で味が変わってる!と思って」
テツヤ「朝から飲んでたんだ(笑)。ワインもさ、抜栓してから味が変わるもんね」
ひいな「日本酒は開けたら1週間くらいで飲み切るといいっていわれるけど、なかなか飲み切るのって難しいじゃない?」
テツヤ「飲んじゃうけどね(笑)」
ひいな「まあね(笑)。でも一度開けても、味が変化しながら長く楽しめるお酒としておすすめしたい」
テツヤ「うん、それはいいね」

「羽前白梅 純米酒」に合うおつまみは、こっくりとしたタレが最高な「手羽の甘辛煮」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ひいな「『羽前白梅』は手羽中の甘辛煮と合わせて飲んでみて。山椒をかけるよ」
テツヤ「いただきます!」
ひいな「どう?」
テツヤ「う〜ん、3本目に飲んだ『あべ』と南蛮漬けが合いすぎたからさ…。さっき開けたばかりのほうで合わせてみたいな」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

テツヤ「うん、新しい酒のほうが合うよ」
ひいな「そう? 4日前に開けたほうが私は合うと思うんだよね」
テツヤ「俺はフレッシュ派かな」
ひいな「意見が分かれたね」
テツヤ「俺は俺の道を行くよ」
ひいな「じゃ、私は私の道を行くよ」
テツヤ&ひいな「(笑)」
テツヤ「手羽が濃い味付けだから、水くらいさっぱりとした味のほうが合うと思ったんだよね。さっぱり流すみたいな」
ひいな「おもしろいね、意見が違うの」
テツヤ「なんで手羽の甘辛煮だったの?」
ひいな「塩じゃないな、タレだなと思って。手羽先だと食べにくいし」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

テツヤ「これ手羽中?」
ひいな「そう」
テツヤ「俺、手羽元、手羽先じゃなくて、手羽中が一番好き♡」
ひいな「そうなの? 初めて聞いた(笑)」
テツヤ「この連載で、お互いをだんだん知るっていうね」

燗酒にした途端、開花。冷酒でも、常温でも、燗でもOK な万能酒。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ひいな「いい意味でも、悪い意味でも、このお酒って“The日本酒”なところがあって。20歳ぐらいの時だと選ばなかったかもしれないけど、今は素直においしいと思えたんだよね」
テツヤ「若手杜氏なのに、クラシカルな日本酒を造ってるっていうのがいいね。原点回帰っていう感じ」
ひいな「しかもね、これ、燗がおいしいの」
テツヤ「そうなんだ! 燗にしてみようよ」
ひいな「燗つけてみよう」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

テツヤ「これ何度?」
ひいな「ぬる燗(40度)よりも下の35度。人肌燗って言うの」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

テツヤ&ひいな「じゃ、改めて。燗で乾杯!」
テツヤ「さっきとぜんぜん味が違う! 急に化けた!」 
ひいな「燗でも合うんだよ〜」
テツヤ 「これはいままでにない酒だね。キャッチャーもやれば、サードも、レフトも守れるっていう感じ。最初に飲んだ、開けたての水みたいな味から、酒っぽさが増したね」
ひいな「飲んだ瞬間に、燗でおいしいお酒ってわかるの」
テツヤ「えぇ? なんでわかるの?」
ひいな「何でなんだろう。わからない(笑)」
テツヤ 「もうね、断然燗だわ。これね、ひいなには、温度を極めて欲しい。相当いいよ。さっき水って言ったの暴言だったな。こういうお酒だったんだね。これは燗の意味があるお酒だよ」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ひいな「燗にした途端、こんなに開花するんだね」
テツヤ「ひとつのお酒が温度によって、こんなに楽しめるなんてな」
ひいな「四合瓶で買うのがもったいないかも」
テツヤ「確かに。一升瓶のほうがいいかもしれないな」
ひいな「開けてすぐ飲んでからどんどん味が変わっていくのを楽しんで、燗酒にもして」
テツヤ「旅館の窓を開けたらさ、目の前に川が流れてて、そこで4日間ぐらい缶詰しつつ、このお酒を飲みたいね」
ひいな「何そのシチュエーション(笑)」
テツヤ「毎日ちびちびやりたいんだよ。一升瓶を持ってさ、連れ添いたいねぇ」
ひいな「それただの酔っ払いだよね」
テツヤ「(笑)。つまり、長く愛したいってこと!」

(次回から第四夜!10月13日更新予定です)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

Videos

Pick Up