パンラボ・池田さんおすすめ! 予約が5年待ち!?季節の食材をアドリブでパンにする、兵庫のベーカリー〈HIYORI BROT〉とは?
パン祭りにフェス、食パン、コッペパンなどなど、数々のブームに沸いた2018年のパンシーン。今回はパンラボ主宰、パンライター・池田浩明さんが、おすすめのベーカリー〈HIYORI BROT〉をご紹介してくれました。
季節からの贈り物をアドリブでパンにする人。
自身が出演したドキュメンタリー番組『セブンルール』放映の間も、塚本久美さんは仕事に追われて、それを見るどころではなかった。放送終了後にパソコンを開くと、約5,000件に及ぶ通販の申し込み。彼女が作れるキャパは1日14件分で、1年に1,000件送っても5年かかる。待たせていることを塚本さんは悩んでいるが、放送前と同じようにやっぱり睡眠時間を削って忙しくパンを作り続けるしかない。
地元の丹波市〈うむ農園〉の手刈り天日干し小麦を自家製粉。挽きたての小麦は香ばしさがちがう。
近くの農家さんが作ってくれた玄米粉のローストを配合。ばりっと歯切れがよく、もちもちふわふわ。
生産者から届く旬の素材を使う。
季節の食材をパンにする。兵庫県丹波市の厨房を訪れた私に食材を紹介する彼女はとてもうれしそうだ。超大粒のレーズン、渋皮栗、甘い甘いかぼちゃ。旅をして、おいしいものを作る生産者に会って、持ち前の明るさですぐ友達になって。その喜びをみんなに味わってほしくて、厨房にひとりこもって何時間も仕込みを続ける。
岡山〈domaine tetta〉の超大粒レーズンを同じワイナリーのワインに漬け、ジュ・シーに。
愛媛の渋皮栗をブランデーに漬け込んで。チョコ、フランスのお土産のスパイスミックスが相性抜群。
アドリブで作られるパンたち。かぼちゃ形のパンに挑戦!
この日、塚本さんはかぼちゃを包んだパンをかぼちゃ形にすることを思いついた。「パンがちゃんとできるのか、いつもドキドキしてます」緊張の一瞬。パンを窯から出すと「かぼちゃっぽくなった!」とまるで少女のように喜ぶ。
バターをたっぷりのせてオーブンで焼いた旬のかぼちゃを入れ、かぼちゃの形に包んだ秋のパン。
食べてみると、やわらかな生地の中から甘い甘いかぼちゃが飛び出す。季節からの贈り物。それをみんなに送り届ける純粋な喜びに塚本さんは突き動かされている。彼女のパンが5,000人もの人に待ち望まれている理由がわかった。
〈HIYORI BROT〉/兵庫
月の暦に従い、月齢0から20はパンを焼き、21から28まで旅する。丹波市に工房があり、HPかイベントで販売。通販は5年先まで予約済みのため、現在停止中。※販売はセットのみにつき、価格は参考
hiyoribrot.com
今回、紹介してくれたのはこの人!
パンラボ主宰、パンライター・池田浩明さん
パンを食べまくり、パンについて書きまくる「パンギーク」(パンおたく)。NPO法人新麦コレクション理事長。編著書に『パンの漫画2』(ガイドワークス)、『パンソロジー』(平凡社)など。
(Hanako1167号掲載/photo:Naoki Matsuda text:Hiroaki Ikeda)