【神楽坂】地のものを愛でる、贅沢なひとり飲み。個性派揃いのクラフト酒&スパイス料理との巡り合い
お酒にまつわるプロデューサーやライターとして活躍。出版社、洋酒会社での広報の経験を生かし、お酒の楽しさを日々発信している。趣味は世界の蒸留所を巡ること。これまでに世界7か国国以上の蒸留所とバーを巡る。ハナコラボパートナー。2025年、お酒に特化したPR会社のTOASTを立ち上げ。Instagram:@mariccokojima
今回の街飲みは、神楽坂にやってきました。石畳の路地裏や花街の面影を残す一方で、フランス人も多く暮らしていて、国際的な雰囲気もある街です。周辺には〈赤城神社〉や〈毘沙門天 善國寺〉などの神社もあることから年末年始には訪れたい場所のひとつ。今回は、〈赤城神社〉のすぐそばにあるビアバーでひとり飲み!
〈餐事 sanZi〉での楽しいひとり飲み時間はYouTubeでも公開中!
日本のクラフト酒と食欲そそるスパイス料理のお店
田の神様には「サ」がつくといわれます。盃(サカズキ)、酒(サケ)、捧げる(ササゲル)、桜も神様が宿るクラ(台座)であるから、サクラといわれるという説も。こちらの店名に「サ」がつくのも、きっと偶然ではないはず。
そんな〈餐事〉(サンジ)が位置するのは、縁結びや恋愛成就をはじめとするご利益がある〈赤城神社〉のお膝元。女性の願い事に強いパワースポットとして知られている、有難い場所です。


入ってすぐに感じるのは、食欲がそそられるスパイスの香り。店内の棚やテーブルには所狭しと世界のスパイスが並びます。

「日本の地のものをテーマにクラフト酒を置いています。小規模な蒸留所で作ったお酒は、味の主張や造っている方のメッセージが強いんです。その個性に負けないようにスパイスを料理に組み合わせることにしました」(濵﨑翔さん)

実は、店名とロゴにもその想いが詰められています。餐事とは中国語で“みんなでご飯を食べる”という意味。そこにsanZiと「Zi」を当てたのは、地のものを扱うというメッセージ。そして「Zi」の文字が3点を繋ぐことから、生産者、造り手、食べ手の3か所を繋ぐ存在でありたいという意味も込めています。

オーナーは、なんとエンジニア、イベント会社出身、現役医師という異業種トリオ。唯一の共通点は、“食べることが好きなこと”。美味しいものを食べに全国各地へ遠征してきたという、まさに食べるプロです。
地方で魅力的な生産者や美味しいものと出会うなかで、こんなものが身近で呑めたら、そしていろいろな人に体験してほしいという想いからお店をオープンしました。

初心者にもおすすめ!発泡どぶろくから、ひとり飲みスタート
仲良しトリオの審美眼で選ばれたお酒と小料理には期待大。本日の1杯目は、福島の醸造所にも訪れたという〈ぷくぷく醸造〉の発泡どぶろく「すすす」からスタートします。
どぶろくとは、醪(もろみ)を無濾過で作った白く濁ったお酒で、まさに甘酒のアルコール版。歴史の古いお酒ですが、最近はクラフト酒としてリバイバルしています。

合わせる料理は、台湾のスパイス・マーガオのほか、クミンなどを合わせたポテトサラダ。その上には、カレー風味の味付け玉子が乗ります。

「どぶろくは、初めてという方にも親しみやすい味わいで、食前から食中まで通しで楽しめるお酒。ホップの香りのほかに、ほのかにマスカットの香りがあるんです」と、相澤長明さん。
ポテトサラダのマーガオの爽やかな味わいを、甘味と果実味があるどぶろくが柔らかに包む、寄り添うようなペアリング。最初の一皿から心が掴まれます。


2杯目は、クラフトビールに移ります。缶でもドラフトビールでも提供する「晩餐」は、店舗オリジナルビールとして、京都〈KYOTO NUDE BREWARY〉と作り上げたもの。醸造所とのコラボは2回目とのことですが、意識しているのは「醸造所と自分たち、そして地のものを感じられる生産者と一緒に作ること」。
その地の素材は、和歌山の知り合いのミカン農園の摘果みかん。間引かれてロスになってしまう小ぶりなミカンは、皮には香りがたっぷり。その皮の渋みと爽やかさを存分に使い、〈KYOTO NUDE BREWARY〉が得意とする低アルコールの白ビールで仕上げたものです。

そこに合わせるのは、餡にターメリックなどのスパイスを練りこんだ台湾風の水餃子。最後に黒酢を好みで吹きかけて味わいます。
「スパイス料理は玄人好みのところも多いと思うのですが、うちではスパイス料理初心者の方にも来てほしいと思っています。スパイス感は適度にきかせて、いつもの餃子とちょっと違うけど、なんだろう…というところから、スパイスに親しみを持ってもらいたいと思っていますね」(相澤さん)


スパイスを知って、楽しんでもらいたいという想いを感じるのが、「ルーローハン」です。五香粉で味付けした角煮や人参、煮卵が乗った小どんぶりは、3種のスパイスもセットで提供。カイエンペッパー=辛さ、カルダモン=爽やかさ、クローブ=コク、と好みに合わせて、ゲスト側で振りかけることが可能です。
スパイスを一振りすることで、こんなに風味が変わるのかと新鮮な発見があるはず。そして自分で味を作った一皿は、なんともおいしい感じがするものです。

ルーローハンとともにいただいたのは、こちらもオリジナル商品のノンアルの発泡ほうじ茶。静岡のお茶園と協業して、香り高いほうじ茶を使用したノンアルでも飲みごたえがある一杯となっています。

神社が多く、毎週末のようにお祭りをしているという神楽坂。「街の活気と、地元の人たちのパーソナルな部分に祭りが根付いている感じが好きです」という濵﨑さんの言葉のように、年末年始も多くの参拝客できっと盛り上がるはず。

ちなみに、〈餐事〉は年末年始も営業予定。31日にはカウントダウンを行うほか、正月三が日には相澤さんの地元である北海道のカニ汁か石狩汁、そして甘酒や燗酒も準備しているそう。
初詣の前後には、ぜひ餐事詣も一緒にしてみるのはいかがでしょう?
場所:東京都新宿区神楽坂6-26 YMビル101
営業時間:18:00〜23:00(土日12:00〜14:30、18:00〜23:00)
定休日:火
TEL: 080-8911-3756
公式インスタグラム:@sanzibar.official
text_Mariko Kojima photo_Miyu Yasuda

















