小石原はるかの“食事放談”EATING OUT 各国の味が集結!新大久保で堪能したい世界のグルメ4軒 FOOD 2024.06.05

東京の中で近年圧倒的人気を誇る街といえば、新大久保。韓国カルチャーに目が行きがちだが、実は東南アジアをはじめとした各国の料理が集まる場所でもある。となれば善は急げ、食の世界旅行にいざ参らん。

東京を中心に食の取材に奔走しながら、自身の食事も妥協なく選び抜くライターの小石原はるかさん。同じ情熱を持つ対談相手に、今回は〝世界メシ愛好家〟のじょいっこさんを迎えた。

小石原はるか(以下、小) すっかり若者に人気の新大久保ですが、ここはじょいっこさんの本拠地。聞けば、韓国料理ばかりではないとか?

じょいっこ(以下、じ) はい、今はネパール料理店が増えてきています。それに付随してハラールショップもにぎわってきて、スパイスを買いに来るついでにごはんを食べて帰る、という人も多くなりました。周りに日本語学校がたくさんあることも影響していると思います。

 スパイスを使う国の料理なら出店しやすそうですね。

 今、都内でも人が集まる街ですから、そういった意味でも新大久保は経営者に人気です。

 それだけ競争も激しいですよね。数年前取材したお店を調べてみると閉店の表示が(涙)。

 新大久保は5年ほどウォッチしていますが、入れ替わりは本当に激しいですね。もちろん、ご長寿のお店もありますよ。

 じょいっこさんの肩書きは〝世界メシ愛好家〟ですが、各国の食文化にはもともと詳しかったんですか?

 全然。学生時代の歴史の成績は2だったくらい(笑)。でも食べることは大好きで、最初はカレーから入り、いろいろ食べるようになって今に至ります。余談ですが、以前は〝異国メシ〟と呼んでいました。それだと壁を感じる気がして、〝世界〟に変えたんですよ。

 素敵ですね。新大久保には週何回くらいの頻度でいらっしゃるんですか?

 一番多い時は週7回ですね。

 すごい! やはり、そのくらいパトロールしないと追いつかないのでしょうか。

 それもありますが、推しのお店のメニュー表を書くお手伝いをしていまして……(笑)。

 それは〈サルシーナハラルフーズ〉ですね。ここが推しなのはなぜ?

 ここはハラールショップ併設のレストランなのですが、まだショップだけの時代に冷凍で売っていたビリヤニがおいしくて、「ぜひレストランを開いて!」と私がお願いしたのがきっかけでオープンしたんですよ。

 背中を押したんですね。そこまではできないにしても、お店の方とのコミュニケーションは言葉が通じづらい〝世界メシ〟では特に難しいと思ってしまいます。どんなふうにするとスムーズでしょうか?

 ネパールのお店なら「ナマステ」と挨拶、バングラデシュのお店でおいしいときは「モジャ」と言ったりしています。

 いくつか現地の言葉を覚えておくのはいいですね! 心を開いてもらえそう。

 お店の人と話すようになって、その国の文化や歴史背景にも目が向くようになり、それまで遠かった移民の問題も身近になりました。視野が広がるのはいいですね。

〈サルシーナハラルフーズ〉バングラデシュ料理

おかずの旨みが染み出す、“水浸し”の米。

寒いといわれる時期でも最高気温20度を超えるというバングラデシュ。お米を水に浸し、おかずをのせた「パンタバート」はサラサラと食べやすく、朝食やランチの定番だ。「旬の食材で作るバジ(炒め物)とボルタ(マッシュ料理)は日本人も好きな味」(じょいっこさん)

 世界情勢とも密接ですよね。さて話を戻して、私、ネパール料理が大好きなんです。自分でも何軒か行ったことがありますが、じょいっこさんのおすすめを教えてください!

 比較的新しめのお店では〈窯焼き料理 Rato Mato〉でしょうか。ネパール伝統の素焼きの器を使っているのが特徴です。

〈窯焼き料理RatoMato〉ネパール料理

ネパール料理激戦区となりつつある街の筆頭。

ラトマト(ネパールの赤土という意味)で作る素焼きの器は、現地の人にとって郷愁を誘う伝統の品。「割れやすいので日本で使う店は少ないですが、食文化全体を体験してほしいので本国から苦労して輸入しています」とスタッフ。素朴な器には豪華なダルバートを。

 これはまた美しい。ネパール料理店増加のほかに最近の新大久保の傾向って何でしょうか。

 本場さながらの雰囲気でストリートフードがいただけるのも楽しいですね。

 〈ルンルアンお菓子処〉がそうですね。どれもおいしそう。

“旅の準備のように、言葉の勉強も心得のうち”(小石原はるか)

〈ルンルアンお菓⼦処〉タイ料理

毎朝3時から仕込む手作りの地元おやつ。

 もっと現地感を味わいたいなら、〈シディークナショナルマート〉へ! 店のあたりはイスラム横丁といわれていて、まさに旅ですね。そして、今日はアジアを中心に紹介しましたが、ハンガリー発祥の「煙突パン」を提供する〈トルドロ〉、ペルー料理店〈ワンチャコ〉など、本当に各国の味がそろっています。

 そして今後も進化が続きそうですね。

“新大久保で世界への扉が開けました”(じょいっこ)

〈シディークナショナルマート新⼤久保店〉パキスタン料理

良い食材を知り尽くした店のストリートフード。

次号のゲストは小寺慶子さんで、「駅近の名店」がテーマです。

photo_Kaori Ouchi illustration_Chihiro Yoshii text_Kahoko Nishimura

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