昼過ぎには完売することも!虎ノ門のパン屋さん〈埜屋〉の絶品サンドイッチ
長野・上田市で卸と定期便専門の工房〈木村製パン〉を営む木村昌之さんは、全国にファンをもつ大人気のパン職人。そんな木村さんが虎ノ門に〈埜屋〉を出店。オフィス街で働く人たちの頼りになるおいしさの秘密に迫ります。
信州産小麦が香る大地のサンドイッチ
2024年2月、虎ノ門のオフィス街にそっとオープンした小さなベーカリー〈埜屋〉。長野・上田市で卸しと定期便専門の工房〈木村製パン〉を営み、全国のパンラヴァーに愛されるパン職人、木村昌之さんが手がける店だ。〈虎ノ門ヒルズビジネスタワー〉の地下にある、グルメなスーパー〈福島屋〉内というニッチな場所にある。以前から〈福島屋〉にパンを卸していた縁が〝インストアベーカリー〞出店のきっかけになった。
スーパーの驚くほど小さな厨房でも、作業は上田の工房と同じ。地元の〈なつみ農園〉が育てた信州産無農薬小麦を石臼で挽き、香り高い全粒粉のカンパーニュなど〈木村製パン〉ならではのパンを焼く。発送専門である店の焼きたてが味わえるのも魅力だが、今回木村さん初の試みとなるのがサンドイッチだ。「虎ノ門のオフィスワーカーさんに安心できる野菜と全粒粉のパンをたっぷり食べてもらいたい。それがこの店を開く一番の目的でした」と木村さん。
オープン当初の具材のレシピ監修はお弁当や保存食作りで知られる料理家、たくまたまえさんが担当。〈福島屋〉で取り扱う〈温市〉の有機野菜や平飼い卵、平塚〈ピュアファーム〉の無添加ハムなど、高い意識を持った各地の生産者さんの商品を活かせるのが東京の良さだからと、信頼する作り手のものを意識的に使う。
そうした滋味あふれる具材との相性を考え、ピタサンドのピタならサワーブレッド生地を使い、あえてオーバーナイト(低温長時間発酵)法で酸味を出してひと風味加えたりと、具材とパンのコラボ=共演が楽しめる。
「ルヴァン(酵母)も人間と一緒で、経験を積んだ方が複雑味や深みが出ると思う」と木村さん。四季の暑さ寒さも体験させて育ててきたという酵母の賜物か、この店のカンパーニュやパンドミは、ワインのように複雑な旨味のグラデーションを描く。だから野菜いっぱいの食べ応えある具材を満喫すると、やがて噛むほどに小麦の香りがあふれ出て、生地の風味の奥深さに唸うなる。これこそ「最後はパンのおいしさに気付いてもらえたら」という木村さんの目論見だ。
技術も素材も一級品。だが屋号の〈埜屋〉に込めた〝ありのまま〞という意味の通り、洗練し過ぎず、素朴な顔立ちのサンドイッチ。信州の大地が目に浮かぶようなこの味を、東京のど真ん中で食べられる有難さよ。
サンドイッチ類は既に昼過ぎに完売する人気とか。オフィス街で働く人々の心身を満たす味として、虎ノ門の街に浸透中だ。
埜屋
住所:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワーB1 福島屋 虎ノ門店内
営業時間:8:00(土日祝10:00)~20:00
定休日:無休
商品は予約不可、売り切れ次第終了。ロースカツサンド(この日は沖縄県産豚)715円、バインミー660円なども。