【イベント報告】 〈フィッシュアンドチップス〉とともに考える魚の未来。 ニッスイ×Hanakoのトークイベントをレポート。 FOOD 2024.02.29PR

【ニッスイ × Hanako PRESENTS Fish&Chips Special Day】 フィッシュアンドチップス&オリジナルビールの集いが、1月27日に中野のLOUの3階で開催されました。登壇したのは、〈英國酒場〉の小高未来さん、〈HOBO BREWING〉の川村洋平さん、〈ニッスイ〉の庄島陽子さん、Hanako編集長の杉江宣洋。フィッシュアンドチップスの作り方を小高さんから、ロンドンのフィッシュアンドチップス事情と今回のイベントのために生まれたオリジナルビールのレシピは川村さん、そしてニッスイの庄島さんには、ふだんなにげなく食べている魚の未来と、その魚を守るための取り組みについてお聞きしました。(PR/ニッスイ)

INDEX
ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス
ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス ビール

フィッシュアンドチップスがイギリスで愛される理由。

イベントの第一部では、登壇者の皆さんのトークからスタート。トップバッターは、今回の企画のためにイギリスにわたり、本場のフィッシュアンドチップス事情をリサーチした川村洋平さんです。

「ビールに合うパブフードの代表格であるフィッシュアンドチップスは、日本でもよく食べているのですが、本場・イギリスでのポピュラーさは想像以上でした。ストリートの1ブロックごとにフィッシュアンドチップスを扱う店を見かけるほどで、パブはもちろんのこと、テイクアウト専門店もある。また、魚の種類を選べたり、ソースのバリエーションがあるお店も。時代を超えて愛されているローカルフードの、層の厚さを感じました」(川村さん)

それだけイギリスの食文化に根ざしたのには、歴史的背景も。カトリックの多いイギリスでは、金曜日は「フィッシュ・オン・フライデー」=魚を食べる日とされています。これは、イエスが十字架にかけられた金曜日はお肉を食べることを控え、魚を食べる日とされていたことに由来しているそう。また、1958年から76年にかけて、アイルランドとイギリスの間で起きた漁業専管水域問題をめぐる紛争「cod war(タラ戦争)」が。この頃を知る人にとっては、フィッシュアンドチップスが身近な国民食になっていることは平和の象徴でもあるようです。

フィッシュアンドチップスとビールに舌鼓を打ちつつ、地元の人からそうした背景も聞くことで理解をより深めたという川村さんによる「フィッシュアンドチップスに最適化されたビール」の紹介は後半で。

フィッシュアンドチップス紀行の第一回の記事はこちらに

ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス 中野LOU

会場は、中野の〈LOU〉の三階に作られたスペシャルルーム。このビルは、代表の松島大介さんが生まれ育った家をリノベしたもの。「祖父の代は〈松島時計店〉、両親の代では〈ジュネマツシマ〉という宝飾店を営んでいました。80周年の節目を迎えて、店を閉めたので、それなら僕らが始めようと、朝から夜までお酒も飲めるカフェを始めたんです」。

LOU

東京都中野区中野5丁目53−4
Instagram:@lou_nakano

プロ直伝、フィッシュアンドチップスをおいしくするためのコツは?

ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス

続いては、川村さんのオリジナルビールに合わせて自慢のフィシュアンドチップスを作ってくれる小高未来さんが、おいしいフィッシュアンドチップスを作るためのポイントを解説。まず、主役の白身魚については「イギリスではいろいろな白身魚をフィッシュアンドチップスにしているそうなのですが、私のおすすめはやはり定番の真ダラ! お店でも、真ダラを使っています」。そして、味の決め手については「レシピ自体はとてもシンプルなので、ひとつひとつのプロセスを丁寧にすることですね」(小高さん)

タラは前の日からソミュール液に漬けておく。衣に使う小麦粉はよく冷やしたビールで溶き、グルテンが出ないようにさっくりと混ぜる。揚げる油は匂いの少ない米油を使い、温度計を使って190度をキープする。タルタルソースの材料はあらかじめ準備しておき、できるだけ食べる直前に混ぜ合わせるetc.。特別な調味料やキッチンツールを使うのではなく、要所要所を確実に押さえることこそがおいしさのコツ、と教えてくれました。

ひと通りお話いただいたあとは、参加者の皆さんのためのフィッシュアンドチップスを作るため、小高さんはキッチンへ。試食するのが待ち遠しい!

フィッシュアンドチップスの作り方の詳細は、第二回の記事で。フィッシュアンドチップスの原材料にもなる、スケソウダラの“なるほど”なお話も。

世界の魚が、いつまでも身近に、そしておいしく食べられる、そんな世界であってほしい。

と、実際に味わう前に、魚を取り巻く現況について、庄島陽子さんからレクチャーをしていただきました。本題に入る前に「皆さん、ニッスイがどんな会社かご存知ですか?」という問いかけからスタート。すると、スーパーマーケットでおなじみのフィッシュソーセージや冷凍食品、ちくわなどの練り製品を作っている食品会社、という声があがりました。それも正解! なのですが、ニッスイは1911年に創業された会社で、水産・食品・ファインケミカル・物流などの事業を展開しているのです。2022年12月には社名を日本水産株式会社から株式会社ニッスイに変更。現在は2022年4月から掲げている新たなミッションのもと、「GOOD FOODS for YOU!」(「人々により良い食をお届けしたい」という志)を合言葉に、事業活動を推進しています。

「日常生活の中で実感することは少ないかもしれませんが、今世界では水産資源を巡ってさまざまな問題が起きています。」と庄島さん。確かに近年“サンマや鮭が不漁”、“魚の取れる場所が昔と変わってきている”といった魚にまつわるニュースを見かけることが増えました。

ここで、庄島さんがグラフを示しながら世界における魚の消費動向を解説してくれました。近年、健康志向の高まりとともに魚の需要が世界的に右肩上がりであるのに反して、漁業の生産高は1980年代後半以降横ばいが続いており、養殖業のプラス分で、供給量をカバーしている状態なのだそう。漁獲できる水産資源は、国や地域によっては年々減少傾向に。(出典:水産庁 令和4年度 水産白書)

漁獲量減少の大きな理由とされるのが、まず「気候変動」。地球温暖化による水温の上昇などが影響し日本でも「今までその場所で取れていた魚が取れない」、あるいは「その場所にいなかったはずの魚が取れてしまう」ということが起きています。もうひとつの理由が「過剰漁獲」。「世界の水産資源の動向(2019年時点)を見てみると、生物学的に持続可能なレベルにある資源の割合は65%で、過剰に漁獲されている資源は35%、安定した状態にある資源はわずか7%です。(出典:水産庁 令和4年 水産白書) この現状に『食卓から魚が消える日が来るかもしれない』と警笛を鳴らす有識者もいます」(庄島さん)

となると、将来も安心して魚を食べ続けられるよう、持続可能な水産資源の利用が重要です。「ニッスイでは、水産資源の持続的な利用に努めています。資源アクセス機能を持つ世界各国のグループ各社が、適切に管理された漁業によって取れた魚を調達。それを独自のグローバルネットワークによって各社に届け、各国の食文化に合わせフライなどに加工し、皆さんの食卓にお届けしています」(庄島さん)

ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス スケソウダラ

イギリスで愛されているフィッシュアンドチップスの原料であり、ちくわやかにかまなどの練り製品にも使われ日本人にとっても身近な魚・スケソウダラも同様。ニッスイのグループ企業がベーリング海を中心とする北太平洋、オホーツク海、日本海から調達し、国ごとの食文化にあわせて加工を施しているそう。ちなみにこの日は、会場にスケソウダラの剥製をディスプレイ。おいしい料理になる前の姿を見られる機会は貴重なだけに、撮影をする参加者がたくさんいました。

MSC-C-51733
MSC-C-51733

もうひとつ、ニッスイが取り組んでいることが「MSC」をはじめとする認証を取得した生産者によって取られた水産物の利用を進めることです。MSC認証とは、MSC(海洋管理協議会)が運営している、水産資源や環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業に関する認証です。ニッスイは、ベーリン海で取れるスケソウダラをはじめ複数の漁場・魚種でこれを取得しているとのこと。“MSC「海のエコラベル」”が付いている商品は、持続可能な漁業で取られた天然の水産物を使用している証です。

「水産資源の持続的な利用と聞いても、どのようなことかイメージがわかないかもしれませんが、たとえば食品を買うときにこの”MSC「海のエコラベル」“が付いているものを選んだり、今日お話したことを少しでも思い出してもらえたら」(庄島さん)

世界の人々がおいしい魚を楽しめる、ひいてはこれからもフィッシュアンドチップスを食べ続けられる未来のために、世界的なネットワークを活用して水産資源の持続的な利用に努める活動は、まさに「GOOD FOODS for YOU !」という思いの現れです。

ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス ビール

フィッシュアンドチップス&オリジナルビールの集い。

イベントも佳境に。フィッシュアンドチップスを食べながら、魚の未来を考える。

3人のお話が終わり、第二部はいよいよ試食タイムです。小高さんが併設のキッチンで揚げた黄金色のフィッシュアンドチップスと、テラスに設置したクーラーで程よく冷やされた川村さんのビールが参加者の皆さんに手渡されると、たちまち和やかな雰囲気に。

カリッと軽やかに揚がった衣の中の真ダラの身はふっくら。作りたてにこだわってサーブする直前に材料を混ぜ合わせたタルタルソースや、小高さんおすすめのシェリービネガーをつけて食べると、より味わいが深まります。そして、川村さんが考案したビールもフィッシュアンドチップスと抜群の相性を見せ、あちこちで「おいしい!」という声が。また会場には、おつまみとして用意された、ニッスイの「速筋タンパク ソーセージ減塩 MSC」や「速筋タンパクおさかなバー」などを盛り付けたプレートも。庄島さんから伺ったお話を回想しつつ、こうしたお魚メニューが末永く安心して食べられるように、という思いを新たに。

ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス ビール

フィッシュアンドチップスのためのオリジナルビール、誕生秘話。

ここで、ふたたび川村さんの出番。今回〈Hobo Brewing〉として手掛けた、ニッスイとHanakoによる共同企画のビール「CHIPPER LAGER」が完成するまでのエピソードが披露されました。構想段階ではパブの伝統的なビールである「エール」タイプという選択肢もあったとのことですが「時代とともに、イギリスでもビールの嗜好が変わりつつあります。冷蔵技術の普及とともに発展した近代的なビールである「ラガー」の人気が高まっていたことを受けて、今回は「ラガー」タイプにしてみました」(川村さん)

味の方向性は「フードの持っていない要素をビールに」という、川村さんが考えるフードペアリングのセオリーに沿って、フィッシュアンドチップスがあまり持ち合わせていないハーバル、シトラス、フルーティといった香りの要素をビールに担わせたそう。「仕込み工程の前半ではヨーロッパ品種のホップを使い、ハーバルな側面を強調しています。そして後半ではCascade、Simcoeといったアメリカンホップを使い、『ドライホッピング』という製法で柑橘系の香りをプラスしました」(川村さん)。フィッシュアンドチップスをモチーフにしたポップなイラストは<Hobo Brewing>のラベルを多く手掛けているイラストレーターの前田麦さんによるもの。

揚げ物のオイリーな後味をカットし、さらに食べ進めたくなる軽快な味わいは「フィッシュアンドチップスにぴったり!」と、参加した読者の皆さんにも大好評。今回のテーマを見事にクリアしました。


楽しく、おいしく、そして真剣に魚の未来を考えました。

ニッスイ×Hanako フィッシュアンドチップス

川村さん、小高さん、庄島さんのお話と、おいしいフィッシュアンドチップス&オリジナルビールのテイスティングという充実の内容で、イベントはあっという間にエンディングを迎えました。シンプルに食べて、飲むだけでも、もちろんとっても楽しい。けれど、それぞれの歴史やレシピ、そして魚を取り巻く状況”を知ることでより理解が深まり、食欲も知識欲も大いに満たされる時間に。おいしい魚を食べ続けられる明るい未来のために、大切なことを学びました。

photo_Hikari Koki text_Haruka Koishihara

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