神田愛花さん×銀座、ドライブ旅行など新連載まとめ12選|ひとりで見るべき映画、子連れカフェほか
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名喫茶で人生一のナポリタンを。横浜・黄金町〈TAKEYA〉の片岡孝夫さん|星子莉奈のMeet the Chef

FOOD 2023.09.19

レストランのプロデューサーやディレクション、PR、ライターとして活躍する星子莉奈さんが、気になる店のシェフをクローズアップする短期連載。第10回は、横浜・黄金町にある喫茶店〈TAKEYA〉の片岡孝夫さんの登場です。

〈TAKEYA〉の片岡孝夫さんにインタビュー

みなさんこんにちは。季節の変わり目のせいなのか(?)、甘いもの中毒気味な私です。インプットと称してあちらこちらのパティスリーで買い込んできた焼き菓子やチョコレートを愛でる日々が続いています。
先日も〈東京都現代美術館〉で開催されていた「デイヴィッド・ホックニー展」へ向かう道中で〈Artichoke chocolate(アーティチョーク チョコレート)〉のラベンダーチョコレートを頬張り、帰りは足を伸ばして蔵前の〈patisserie FOBS(パティスリー フォブス)〉でゴーフルをお買い上げしました。
チョコレートによってラベンダー畑へと脳内トリップした後、ただただ幸福に包まれるホックニータイムを満喫し、自宅に帰って砂糖とバターのじゃりじゃりに沸くというハッピーな休日を過ごしました。

さてさて今回は、黄金町という知る人ぞ知る横浜のディープスポットで長きにわたり愛され続けてきた名喫茶〈TAKEYA〉の片岡孝夫さんに登場いただきました。

片岡孝夫さん。愛猫との2ショットがプリントされたお気に入りのマグカップを片手ににっこり。
片岡孝夫さん。愛猫との2ショットがプリントされたお気に入りのマグカップを片手ににっこり。

マスターの片岡さんは、生まれも育ちも黄金町という生粋のハマっ子。元々、この土地で昭和20年から〈竹家〉という旅館をご両親が営んでいたそうですが、時代の移り変わりと共に旅館業を続けるのが困難になり、改装を経て昭和58年から喫茶店として営業をスタートしたそう。

〈TAKEYA〉という屋号は「竹家」から継承。
〈TAKEYA〉という屋号は「竹家」から継承。

若い頃から喫茶店を巡るのが好きでした。それで居心地のいい喫茶店に通い続けていたら、そこで過ごす時間がかけがえのないものとなっていたんです。第2の我が家みたいな感じでしょうか。それで改めて喫茶店というものの大きさを実感して、いつか自分もそんなお店を持ちたいと思うようになりました」。

実体験から思い描いてきた“喫茶店のあるべき姿“を、しっかり再現されている片岡さん。訪れるお客さんの大半はひとり客。とりわけ常連さんが多く、片岡さんとの対話を何よりも楽しみに足を運んでいることが見て取れます。
まずはカウンターに座ってもらって、僕や常連さんとの会話を楽しんでもらえたらうれしいですね。ひとりでのんびり過ごしてもらうのもいいけど、喫茶店の醍醐味は会話だと思うので」と、コーヒーカップ片手にほんのりはにかみながら語ってくれました。

店内の壁一面に貼り付けられた色褪せた渋いポスター。
店内の壁一面に貼り付けられた色褪せた渋いポスター。

〈TAKEYA〉といえば、店内に流れるソウルミュージックも名物のひとつ。元々、柔道一筋のスポーツマンだった片岡さんですが、怪我によりその道を断念。ぽっかりと穴が空いてしまった片岡さんを救ってくれたのがソウルミュージックだったと言います。
「アメリカ兵が起点となってソウルミュージックが日本に浸透し始めた頃でした。柔道をやめてから気持ちが晴れない日々が続いていましたが、ソウルミュージックに出会い、パワフルな歌声と、心に刺さる大衆音楽ならではの生っぽさにたちまち魅了されました」。

ジュークボックスから流れるメロディーに合わせ、軽快にステップを踏む姿を披露してくれました。
ジュークボックスから流れるメロディーに合わせ、軽快にステップを踏む姿を披露してくれました。

夜な夜なクラブに繰り出していた頃に習得したというソウルダンスの腕前はプロ並みで、お店でも時たまレッスンを行っているそう。
「簡単なダンスで老若男女問わずみんなで楽しめるのがいいですね。うちのお店でもソウルダンスを通じてお客さん同士仲良くなって、みんな和気あいあいとしてますよ」と微笑ましそうな表情を浮かべながら教えてくれました。

〈TAKEYA〉の看板メニューはマスター力作の自家製ナポリタン。喫茶店でナポリタンはあまりに有名ですが、ケチャップの存在感強めの骨太な味わいといい、外側を焦げるほどにパリッと焼き上げた独特な食感といい、想像を上回る唯一無二の逸品に仕上がっています。
横浜はナポリタン発祥の地。やらない訳にはいかないな、と思って作りはじめましたが、はじめのうちは納得いくような味わいにはなりませんでした。毎日続けることでようやく今の味に辿り着いたという感じです」。
トマトと野菜の香ばしい香りを運ぶ湯気を鼻からめいっぱい吸い込み、ナポリタン気分が最高潮に達したところで、デルケチャ(〈デルモンテ〉のケチャップ)を吸い込みまくった麺をくるくるとフォークに巻き付け、口に運びます。初めて食した日はあまりのおいしさにビックリして、鳥肌が立ったほど。一度食べたら忘れられないなんて常套句っぽいですが、お店と共に成長してきたナポリタンはそれだけの感動を生む名作なのです。

背景が絵になりすぎているお気に入りの一枚。
背景が絵になりすぎているお気に入りの一枚。

喫茶店と一言で括れど、その有り様はさまざま。どこか安心感を覚えるマスターの空気感や、この店のノスタルジックな雰囲気は作為的に生み出されたものではないからこそ、とっても愛おしい
近年、古いは新しいといった価値観が蔓延し、ノスタルジックなものに憧れを抱く人々が増えたと思いますが、〈TAKEYA〉はその上澄みだけを味わうお店ではありません。マスターと会って、カウンターに座って、ナポリタンを食べればきっとその真価がわかるはず。ぜひ足を運んでみてくださいね。

photo:Aki Onishi

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