晩酌をもっとおいしく!娘と父で学ぶ『お酒の学校』 ワイナリーだからこそ楽しめるテイスティングで、長野ワインを飲み比べ!〜『お酒の学校』ワイン編その2〜

FOOD 2023.07.11

唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”シリーズが、さらに拡大!いつもと違ったお酒の楽しみ方やいままで知らなかったお酒の知識などを、お酒のエキスパートの方々に教えていただきます。今回は進化し続ける日本ワイン編。広大なブドウ畑に佇む、長野県上田市にある〈シャトー・メルシャン 椀子(まりこ)ワイナリー〉を訪問しました。後編では椀子産のワインを中心に長野ワイン6本をテイスティング!

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ワイナリー見学のあとには、いよいよお楽しみのテイスティング!

椀子ワイナリー長であり、チーフ・ワインメーカーでもある田村隆幸さんにワインについていろいろ質問しながらワインのテイスティング。今回は6本のワインをご用意いただきました!
椀子ワイナリー長であり、チーフ・ワインメーカーでもある田村隆幸さんにワインについていろいろ質問しながらワインのテイスティング。今回は6本のワインをご用意いただきました!

〈シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー〉では、ワイナリーツアーを実施しています(要予約・有料)。畑(ヴィンヤード)をまわり、醸造施設、樽庫を見学したあとは、もちろんワインのテイスティングも! 今回はツアーの中でも、椀子産ワインを中心に6種類もの長野ワインが楽しめるプレミアムツアーに参加しました(※)。椀子ワイナリー長であり、チーフ・ワインメーカーでもある田村隆幸さんに、ワイン造りの背景をたっぷりとお聞きしながらのテイスティングはなんとも贅沢な時間!ブドウの品種や栽培方法、またワインの熟成方法などによっても、さまざまに味わいが異なるワインを飲み比べられるのもワイナリーならでは。伊藤家父娘も、自分好みの1本を見つけられるでしょうか?

※7月1日以降は「椀子ディスカバリーツアー」として、スパークリングを含む5種のテイスティングに変更となります。

この椀子ワイナリーで育てられた白ワインからいただきます!
この椀子ワイナリーで育てられた白ワインからいただきます!

まず1本目は、この椀子ワイナリーで育てられた①「椀子ソーヴィニヨン・ブラン 2022」から。(ワイナリー販売価格4,800円)、フルーティな香りが印象的でさわやかな1本。

田村隆幸ワイナリー長(以下、田村ワイナリー長)「このワインは、ハーブみたいな感じや南国系のパッションフルーツを感じていただけるかなと」
娘・ひいな(以下、ひいな)「わ、いい香り!あの、いま田村さんがやっているみたいにワインってグラスをくるくる回したりしますよね?したほうがいいんですか?」
田村ワイナリー長「ガラスの内壁に薄い膜を作ってあげることで蒸発させやすくして香りを取りやすくするんです。場合によっては少し酸素を与えることで、閉じこもっている香りを出してあげるという意味もあります」
父・テツヤ(以下、テツヤ)「(グラスがうまく回せず)う〜ん難しいですね」
田村ワイナリー長「(テーブルにグラスの底をつけながら)指でグラスの脚を挟んでくるくると回すとワインをこぼしにくいですよ」
テツヤ「なるほど!かっこいいなぁ(笑)」

続いて2本目は②「椀子シャルドネ 2021」(ワイナリー販売価格4,000円)を。こちらはオーク樽にて発酵・熟成をしたもので、華やかでフルーティな香りがありつつも深みが感じられてまろやかな味わい。

〜ワイン編その2〜ワイナリーだからこそ楽しめるテイスティングで、長野ワインを飲み比べ!

テツヤ「うわぁ、さわやか!」
ひいな「おいしい〜」
テツヤ「このシャルドネは樽ですか?」
田村ワイナリー長「はい。発酵と育成に樽を使っています。“樽熟成”といわれることが多いですが、採れたてのブドウを飲み頃まで育ててあげるということで“樽育成”と呼んでいます。フランス語でも”育てる”という意味を持つ“élevage”といいます。“熟成”はできあがったワインを瓶内で寝かせることを指すように、シャトー・メルシャンでは使い分けています」
ひいな「樽に入れることで、味って大きく変わるんですか?」
田村ワイナリー長「ブドウの品種の特徴に合わせてタンクや樽を変えます。1本目のソーヴィニヨン・ブランはパッションフルーツのようなフルーティな香りを出すために、木の香りやココナッツのような香りは邪魔になるので、樽ではなくステンレスタンクで仕上げています」
テツヤ「実は樽香が苦手だったんですけど、これはおいしいな」
ひいな「すごくやわらかいです」

〜ワイン編その2〜ワイナリーだからこそ楽しめるテイスティングで、長野ワインを飲み比べ!

3本目は③「北信シャルドネ アンウッデッド 2018」(ワイナリー販売価格4,000円)。長野県北信地区で採れたシャルドネを使用。こちらはステンレスタンクで発酵&熟成したもの。

田村ワイナリー長「3本目の『北信シャルドネ アンウッデッド』は、2本目の樽を使ったシャルドネと比べてもらえるよいかと思います。色が違いますが、それは2021年と2018年で瓶内の熟成の違いが表れていると思います。樽で発酵して樽育成したワインと、ステンレスタンクで発酵したあとに樽に入れて育成した場合だと、後者のほうが樽の香りのほうが強くなるんですよ」
ひいな「へぇ!発酵時のほうが樽香が強そうなイメージでした」
田村ワイナリー長「樽に液体が入ると香りの成分が染み出してきて香りがつくんですが、アルコール発酵している場合は酵母がその香り成分を食べちゃうんです。それによって樽の香りが過剰にならずにうまく溶け込んでくれる。だから、僕たちは樽から発酵させることが多いですね」

ペアリングや、おいしく飲める温度帯など、ワインの基礎知識もおさらい。

②「椀子シャルド」には、クリーム系のものをペアリングすると良いとのこと!
②「椀子シャルド」には、クリーム系のものをペアリングすると良いとのこと!

テツヤ「どっちのシャルドネが好きだった?」
ひいな「②『椀子シャルド』の方がやわらかさがあって好きなタイプだな」
田村ワイナリー長「パッションフルーツのような香りのソーヴィニヨン・ブランと違って、シャルドネはパイナップルとか洋梨やリンゴのような、酸味がより立ってくるかなと。③『北信シャルドネ アンウッデッド』は、②『椀子シャルドネ』のようなマロラクティック発酵(乳酸菌によるリンゴ酸を乳酸に変換する発酵)をしていないので、よりしっかりした酸味が感じられると思います」
ひいな「同じシャルドネでも造り方によって酸味が違うんですね」
テツヤ「俺は③『北信シャルドネ アンウッデッド』が好きだな」
田村ワイナリー長「酸味が得意な人は③がよくて、丸い感じが好きな方は②が好きですね」
ひいな「②『椀子シャルドネ』はだんだん温度が上がってきてもおいしいです」
テツヤ「ね!」
田村ワイナリー長「シャルドネって、提供温度が難しくて…。僕は結構ぬるめが好きなんですけど」
ひいな「白ワインってそもそも何度で飲むのがおいしい温度なんですか?」

エチケットの裏には、おいしく飲める温度が記載されている。
エチケットの裏には、おいしく飲める温度が記載されている。

田村ワイナリー長「実は最近、すべての商品のエチケットに書いてあるんですよ」
ひいな「ほんとだ!7〜9度って書いてありますね」
テツヤ「低めですね」
田村ワイナリー長「ソーヴィニヨン・ブランは低めです。シャルドネは10から11度くらいですね」

4本目の白ワインは④「北信左岸シャルドネ リヴァリス 2019」(ワイナリー販売価格7,200円)。上品な味わいでやわらか。あたたかみのある口当たりに焦がしたパイナップル風味が感じられます。

〜ワイン編その2〜ワイナリーだからこそ楽しめるテイスティングで、長野ワインを飲み比べ!

田村ワイナリー長「最後の白ワインです。 急にお値段が跳ね上がるのですが…」
ひいな「わ!」
テツヤ「本当だ!お値段見ちゃうと緊張しちゃうね」
ひいな「ワインの値段って味に顕著に出そうなイメージ…」
田村ワイナリー長「これはバランスがとってもいいワインなんです」
テツヤ 「うわぁ…これは違いますね」
ひいな「③と比べてもぜんぜん違う!」
テツヤ「うん、一番やわらかいね。水みたいな」
田村ワイナリー長「畑の場所が違うんです。これは椀子じゃなくて、 長野市の北信左岸地区で採れたブドウを使っています。ここ椀子は標高650mなんですが、北信左岸地区は標高330mでここよりも低くて暖かいエリアになるので、味わいの雰囲気も少しあったかそうな感じといいますか…」
テツヤ「あったかい味わい…それすごくわかります」

テイスティングといえど、飲み干す勢いの2人。すべておいしくいただきました。
テイスティングといえど、飲み干す勢いの2人。すべておいしくいただきました。

田村ワイナリー長「僕はよくBBQで焼いたパイナップルのような香りと言ってるんですが…」
テツヤ「④を飲んで③に戻ると、もちろん個性がそもそも違うんだけど…④がすばらしいですね」
ひいな「うん、わかる。こういうやわらかい感じのシャルドネは何をペアリングするといいんですか?」
田村ワイナリー長「このワインになると、もう何を合わせたいか?ですかね」
テツヤ「地元のものだと何がいいですか?」
田村ワイナリー長「上田だと、焼き鳥ですかね」
テツヤ「焼き鳥は万能だなぁ」
ひいな「塩の焼き鳥と白ワイン、絶対合うよね。タレには赤ワインがいいとかあるんですか?」

〜ワイン編その2〜ワイナリーだからこそ楽しめるテイスティングで、長野ワインを飲み比べ!

田村ワイナリー長「いや、上田のタレは特徴がありすぎるのでワインと合わせにくいかもしれませんね(笑)。すりおろしたりんごとにんにく、しょうゆをベースにしたタレで、お店によって味が違うんですが、そのタレで焼き鳥を食べるのが上田の人は好きなんです。とあるスーパーで、日本で一番焼き鳥を売るのは上田店だそうなんですよ。駅でも『美味(おい)だれ』という名称で売っています。あとは、シャルドネのテクスチャーの中に、リンゴのようなざらっとした感じが少しあるので、カットしたリンゴが入ったフルーツサラダもいいんじゃないかと」
テツヤ「いいですねぇ。おしゃれ!」
田村ワイナリー長「あとは、樽の感じに合わせて、クルミを加えてもきっとおいしいんじゃないでしょうか」
ひいな「ワインって香りで印象が変わるイメージあったんですけど、 こんなに口当たりが違うことにもびっくりしています!」
テツヤ「ワイナリーだから、ここまで味の違いが楽しめるんだよね。楽しい!」
ひいな「本当だね。樽のありなしによっても味わいが違うし、ブドウの品種だけじゃないんだね」
田村ワイナリー長「香りと酸のバランスが重要かなと思います」

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